Q1. 「宇宙空間には酸素もないのに、どうして太陽は燃えているのですか?」(男性/20代)

A1:太陽は4個の水素の原子核が1個のヘリウム原子核に変わる核融合反応によって光輝いています。確かに通常ものが燃えるときには酸素が必要ですが、太陽は酸素と化合して燃えているわけではありません。

Q2. 「何十億年も先に太陽の寿命が尽きたら、超新星爆発を起こしますか?」(男性/40代)

A2:太陽は超新星爆発は起こしません。太陽のように自ら光を出している星(恒星[こうせい])がどのような一生を過ごすのかは星ができたときの質量によって決まっています。太陽ぐらいの質量の恒星は超新星爆発を起こしません。太陽の場合、赤色巨星(せきしょくきょせい)になったあと、白色矮星(はくしょくわいせい)へと変化し、どんどん冷えて冷たい星になっていくと予想されています。こと座にあるM57(リング星雲)は50億年後の太陽の姿だといわれています。太陽より数十倍も質量があると、超新星爆発のあとにブラックホールになります。なお、以前は太陽が膨張して地球はのみ込まれてしまうといわれていましたが、今日の研究では地球はのみ込まれずに済むようです。

Q3. 「日食を観察するのに太陽メガネがありますが、普通のサングラスや色の濃い下敷きで太陽を見てはダメなのですか?」(女性/30代)

A3:ダメです。絶対に見ないでください。サングラスや下敷きでは色素によって光が弱く見えるだけで強烈な赤外線などはそのまま通り抜けるので、目をやられます(日食網膜症)。太陽メガネを使った場合でも、少しは赤外線が漏れていますから長い時間太陽を見るのは止めましょう。また、太陽メガネをかけて望遠鏡や双眼鏡を覗いたり、望遠鏡や双眼鏡の前(対物レンズの側)に太陽メガネを付けて覗いたりするのも止めてください。望遠鏡や双眼鏡は虫眼鏡のようなもので、接眼レンズのところには強い光が集まっています。太陽に向けた望遠鏡や双眼鏡の接眼レンズの近くに太陽メガネを置けば、一瞬で溶けて燃えます。

Q4. 「南半球のニュージーランドでは、夜空の星が北半球の日本とは逆さまに見えると聞きました。ということは、ニュージーランドでは太陽も西から昇って東へ沈むのでしょうか?」(女性/30代)

A4:太陽はニュージーランドでも東から昇って西に沈みます。ただし、東から昇った太陽は南ではなく、北を通って西に沈みます。太陽が赤道の真上にあるとき、赤道よりも北の日本から見れば太陽は南に見えますが、赤道より南のニュージーランドから見れば太陽は北に見えます。星座はおっしゃるように逆さまに見えます。オリオン座のベテルギウスとおおいぬ座のシリウス、こいぬざのプロキオンを結んでできる冬の大三角も、日本ではシリウスが下にくる逆三角形ですが、ニュージーランドではシリウスが上にくる三角形に見えます。日本では地平線の近くでなかなか見られないカノープスが空の高いところで輝いていたりもします。
~図1(太陽) 北半球と南半球での太陽の動き~

Q5. 「『太陽が燃えているとか熱いとかいうのは全部ウソで本当は太陽は冷たい』という話をネットで見ました。『エベレストとか太陽に近い高い山の上には雪が積もって一年中寒いのがその証拠』というのですが、何かおかしいように思います。どこが間違っているのでしょうか?」(男性/20代)

A5:まず太陽と地球との距離はおよそ1億5000万kmです。世界一高いエベレストでも8800mほどですから、エベレストに登って太陽に近づいたといっても0.006%程度の話であり、それこそ誤差の範囲でしょう。高い山の上の気温が海抜の低いところよりも低いのは事実です。わたしたちが生活している対流圏では、標高が100m高くなるごとに気温が約0.6℃低くなるのはよく知られていますね。なぜそうなるかというと、地表で温められた空気が上昇するとき、断熱膨張によって温度が低下するためです。山に限らず、高いところは気圧が低くなるのでその分体積が増え、体積が増えることにエネルギーを使ったので寒くなるのです。ちなみに、冷蔵庫は断熱圧縮や断熱膨張の仕組みを応用して冷やしています。

Q6. 「宇宙は真空で空気がないのに、どうして太陽の熱が地球に伝わるのですか?」(男性/30代)

A6:太陽の熱は放射によって伝わっています。熱の伝わり方には、伝導、対流、放射(輻射)の3種類があります。空気も何もない真空では伝導と対流は起こりませんから、太陽の熱が伝わるのは放射によります。赤外線などの電磁波が物質に当たることで物質を構成している分子が振動し、この振動によって熱が発生します。真空が伝導や対流によって熱を伝えないことを利用した身近な例としては、魔法瓶があります。魔法瓶でも放射によるロスがあるので、それを減らすために内側を鏡にするなど工夫しています。それでも完全にロスをなくすことはできないので、魔法瓶にお湯を入れておいても長い時間経つと温度が下がってぬるま湯になったりするわけです。

Q7. 「太陽の自転は学校で習いましたが、公転はしないのですか?」(男性/10代)

A7:太陽も公転します。太陽系は銀河系(天の川銀河)に属しますが、太陽(太陽系)は直径10万光年の天の川銀河の中心からおよそ2万5000~2万8000光年離れた場所にあって、天の川銀河の中心を軸として約2億2000万年~2億5000万年の周期で銀河系を一周しています。公転の速度は秒速に直すと220kmほどです。太陽系が生まれてからおよそ46億年ですから、これまでに天の川銀河を20周ほどした計算になります。

~図2(太陽) 天の川銀河における太陽系の位置(模式図)~

Q8. 「春分や秋分のとき、太陽は真東から昇って真西に沈むのですか?」(男性/10代)

A8:試験の答案としてはそう答えてよいでしょう。しかし、厳密にいえば少しずれています。というのは、春分や秋分というのは太陽が黄道と天の赤道との交点を通る瞬間のことをいうので、春分の日や秋分の日という1日で見れば日の出や日の入はその瞬間とは時間の上でずれているからです。とはいえ、あまり細かいことにこだわらなければ、「春分や秋分のとき、太陽は真東から昇って真西に沈む」と理解しておいてもこれといって問題はないでしょう。

Q9. 「春分や秋分のとき、昼と夜の長さは同じになるのですか?」(男性/小学生)

A9:ほぼ同じです。試験の答えとしては「同じ」と答えて大丈夫です。しかし、細かいことをいえば、昼の長さの方が十数分程度長くなっています。昼の方が長いのは、日の出や日の入が太陽の上の辺が地平線(水平線)に接する瞬間となっていることや大気によって光の屈折現象が起き、実際よりも太陽が浮き上がって見えることによります。昼の長さと夜の長さとの差が最も少なくなるのは、春分の4日ぐらい前と秋分の4日ぐらい後になります。

Q10. 「どうして夏は暑いのですか? 地球が太陽に近づくからですか?」(男性/20代)

A10:地球の公転面に対して地球の自転軸が約23.5度傾いているからです。真夏の影のでき方を思い出してください。影は足元の辺りにしかできませんね? つまり、真夏には太陽は頭の真上から照らしています。一方、冬には影が長く伸びています。つまり、太陽は斜めから照らしています。こうした違いが起きるのは、地軸が地球の公転面に対して傾いているからです。真上から照らされる真夏には太陽の光をたくさん受けるので地面が暖められて暑くなります。一方、太陽が斜めから当たる冬には太陽の光を十分に受けられないので、地面はあまり暖まらずに寒くなります。太陽との距離は関係ありません。実際、北半球が冬のとき、地球は公転軌道上で太陽により近いところにありますし、北半球が夏のとき、地球は公転軌道上で太陽からより遠いところにあります(近日点と遠日点との距離の差は約500万km)。

Q11. 「太陽の黒点というのは何ですか?」(男性/60代)

A11:太陽の表面を観察したとき、黒い点のように見える部分を太陽黒点といいます。太陽の磁場によって発生すると考えられています。太陽の表面温度は約6000℃ですが、黒点の温度はそれより低く約4000℃です(自作の望遠鏡で太陽を初めて観察したガリレオ・ガリレイは太陽黒点は太陽の温度の低いところだろうと予想していましたが、その予想は正しかったわけです)。黒点はおよそ10年の周期で増えたり減ったりしており、太陽黒点の数と太陽の活動の活発さとの間には密接な関係があることがわかっています(黒点の多いときには太陽の活動が活発)。

Q12. 「太陽は燃えていますが、いつ頃燃え尽きますか? そのあと、どうなりますか?」(男性/小学生)

A12:太陽系が誕生してから約46億年ですが、太陽が燃え尽きるのはいまから50億年後だといわれています。太陽がいまの形を保っていられるのは、小さく潰れてしまおうとする力と大きく膨らんでいこうとする力とがちょうど釣り合っているからです。現在、太陽は水素を燃料としてヘリウムを作り出す核融合を行っていますが、やがて水素はなくなります。すると、今度はヘリウムを燃料として核融合反応が進みます。ヘリウムの核融合が始まると、その高温によって膨らもうとする力が潰れようとする力を上回って太陽はどんどん膨張し始めて赤色巨星(せきしょくきょせい)と呼ばれる赤くて大きな星になります。それにともなって太陽風も非常に強くなり、地球などはいまの軌道よりも外側に吹き飛ばされてしまいます。そして、とうとう太陽自身のガスも吹き飛ばしてしまい、中心には白色矮星(はくしょくわいせい)という燃えカスのような星が残ります。白色矮星では核融合反応は起きていませんが、余熱と強い重力による圧力で100億年ぐらいは輝きますが、やがて冷えて暗くなっていき、最後は電磁波による観測もできない黒色矮星(こくしょくわいせい)になると予想されます。ちなみに、こと座にあるリング星雲(M57)は「太陽の50億年後の姿」ともいわれています。

Q13. 「太陽風(たいようふう)ってありますよね? 宇宙は真空で空気とかないはずなのに風が吹くのっておかしくないですか?」(女性/10代)

A13:太陽風は「風」とついていますが、風ではありません。太陽風の正体はプラズマ(非常に高温で電離した粒子)です。もう少し簡単にいい換えれば、磁気と電気を帯びたガスの流れを太陽風と呼んでいます。太陽風はコロナと呼ばれる太陽の上層大気が宇宙空間に吹き出したものです。太陽風は希薄ですが非常に高速で、わずか4日ほどで地球に到達します。太陽風の存在が予想されたのは、彗星の尾のでき方の観察を通じてでした。彗星の尾は進行方向と反対にできるのではなく、太陽と反対の方向にできます。彗星の尾はダストの尾とイオンの尾と2種類ありますが、このうちイオンの尾を詳しく調べるうちに、「太陽から風のような何かが出ているのではないか」とドイツのビヤマンという天文学者が1951年に発表しました。1958年になってアメリカのパーカーという研究者が太陽から出ている「何か」の正体は電気を帯びたガスだと理論的に予想しました。1962年に金星探査機マリナー2号の観測によってパーカーの予想が正しいことが証明されました。なお、「太陽風」と命名したのはパーカーです。

Q14. 「オーロラって、何か太陽と関係があるみたいな話を聞いたんですけど、そうなんですか?」(男性/20代)

A14:はい、オーロラは太陽と関係があります。太陽から放出された強力な磁気や電気を帯びたガスの流れである太陽風が地球に到達すると、磁気嵐やオーロラをもたらします。オーロラは「太陽からの贈り物」ともいわれ幻想的で美しい現象ですが、太陽風そのものは現代文明にとって実はとても危険なのです。NASA(アメリカ航空宇宙局)が2014年7月に発表したレポート(”Near Miss:The Solar Superstorm of July 2012”)によると、2012年7月23日に観測された太陽風は過去150年間で最も強力なものでした。もし、地球を直撃していたら電力網や通信設備は壊滅的なダメージを受け、テレビやラジオをはじめ、パソコン、携帯電話、スマートフォン、GPSなどの電子機器も瞬時に破壊されて現代のわたしたちの生活が18世紀のレベルに引き戻されてしまうほどの被害をもたらしたといわれています。

Q15. 「太陽まで歩いて10分ぐらいで着きますか?」(男性/10代)

A15:無理です。地球から太陽までの距離はおよそ1億5000万kmあります。時速300kmの新幹線でも57年かかります。歩く速さを時速4kmとすると、新幹線の速さの75分の1ですから、75×57=4275(年)ほどかかります。ちなみに、いまから4000年前、つまり、紀元前2000年頃といえば日本はまだ縄文時代でした。その頃、出発してようやく到着するわけですね。

Q16. 「ガリレオは自分で作った望遠鏡で太陽の黒点を観察したそうですが、望遠鏡で太陽を見るのは危険なんじゃないですか?」(男性/20代)

A16:はい、大変危険です。日中の太陽を望遠鏡で見れば、間違いなく一瞬で網膜が焼けて失明します。絶対に止めましょう。いい伝えでは、ガリレオは日差しが弱まっている明け方や夕方の地平線に近い太陽を観察したようです(これでも十分に危険です!)。さすがに目に悪いと思ったのか、後には投影板を使って観察しています。ガリレオは73歳頃に両目が見えなくなりましたが、20年以上前に望遠鏡で太陽を見つめたことが影響しているのではといわれています。一方で、「それは一種の都市伝説(urban legend)でガリレオが望遠鏡で太陽を観察したことと失明とは無関係」とする説もあります。

Q17. 「先日望遠鏡を買いました。『太陽を見てはいけません』と書いてありますが、昼間の太陽を見るとダメなのは知ってますけど、夜はどうなんですか? 夜の太陽なら見てもいいんですか? 夜もダメなんですか?」(男性/20代)

A17:夜には太陽は地平線の下に沈んでいますから、望遠鏡で見ることはできません。

Q18. 「春分の日には昼と夜の長さのバランスがいいので卵が立つそうですが、本当なのですか?」(男性/20代)

A18:卵は春分の日とは無関係にいつでも立ちます。昼と夜の長さ云々はもっともらしく理屈をつけただけで天文学的な根拠はありません。この話の元は中国で伝統的に立春(2月の節分の日の翌日)の頃に卵を立てる遊びをしたことのようです。それが1945年に中国の重慶(中華民国の国民党政府の首都)にいた米国人の記者アナリー・ジャコビーさんによって『ライフ』誌を通じて米国に伝えられて、「立春」が「春分」と間違えられた(そもそも、米国には「立春」はありません)上で広まったようです。今では本家の中国でも米国からの逆輸入なのか立春ではなく春分に卵を立てたりするようですね。1947年2月6日の朝刊で朝日新聞や毎日新聞などが大々的に報じたことで「立春(春分)の卵」の話は日本でも知られるようになりました。雪の結晶の研究で知られる物理学者の中谷宇吉郎さんの書かれた『立春の卵』というエッセイがあってその中でも指摘されていますが、卵は元々立つ構造なのに人々の多くは「卵は立たない」と思い込んでいたようです(著作権保護期間が過ぎたので、『立春の卵』はいまは青空文庫で無料で読めます)。ちなみに、上手に立てるコツは表面がざらついていない新鮮な卵(生卵)を使うことだそうです。

Q19. 「太陽の南中時刻について質問です。太陽が真南に来るのは12時だと思っていましたが、どうやら日によって12時より早かったり遅かったりするようです。確か、太陽が真南にあるときから次に真南に来るときを1日と定義していたように思うのですが、もし太陽が真南に来る時刻が変わるとすると、1日の長さが違ってきますよね?」(男性/30代)

A19:はい、ご指摘のように太陽の南中時刻は日によって違います。非常に大雑把な言い方をすれば、冬には12時よりも遅くなり、夏には12時よりも早くなります。最大で前後15分ぐらい違ってきます。これは2つの要因があります。1つは、地球の地軸が公転面に対して約23度傾いていることです。もう1つは、地球の軌道が太陽を中心としたきれいな円ではなく楕円になっており、冬は太陽に近く夏は遠いことによります。太陽に近いときは公転の速度が速くなり、遠いときには遅くなります。この関係はケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)と呼ばれます(フィギュアスケートの選手が広げていた両手を縮めると回転の速度が増しますが、あれも同じ理屈です)。そのため、地球から見ると太陽の南中時刻が季節によって日によって変わってしまい、1日の長さが違ってくるという不都合が起きます。そこで、いつでも一定の速さで回る仮想的な太陽(平均太陽)というものを考えて、南中した平均太陽が次に南中するまでの時間を24時間(1日)と決めています。平均太陽の速度は地球から見たときの実際の太陽(視太陽と呼びます)の速度の平均で求めています。視太陽と平均太陽との南中時刻の差を均時差といいますが、均時差が最大になるのは2月中旬(「建国記念の日」の頃)と11月上旬(「文化の日」の頃)です。ちなみに、均時差が0になり12時に太陽が真南に来る日は年のうち4回(4月16日頃、6月15日頃、9月2日頃、12月24日頃)だけです。この4回のうち6月は夏至、12月は冬至の頃です。

Q20. 「昨日は春分の日でした。春分の日には太陽が真西から昇って真東に沈むのですよね? で、秋分の日も太陽は同じように昇って沈むということですが、じゃあ、春分の日から秋分の日まで太陽の昇る方角や沈む方角は真東や真西より北に寄るのですか? それとも南によるのですか? わかりにくくてすみませんが教えてください」(女性/30代)

A20:北に寄ります。春分(3月下旬)から夏至(6月下旬)までの間、太陽は真東より北寄りのところから昇って真西より北寄りのところに沈みます。太陽はだんだん北寄りになっていき、夏至のときに最も北寄りになります。夏至(6月下旬)から秋分(9月下旬)までの間、太陽は真東より北寄りから昇って真西より北寄りに沈みます。太陽はだんだん南寄りになっていき、秋分に真東から昇って真西に沈みます。秋分から冬至(12月下旬)までの間、太陽は真東よりも南寄りのところから昇って真西より南寄りのところに沈みます。冬至のときに太陽は最も南寄りになります。

Q21. 「太陽は核分裂反応で燃えてるんですよね? つまり、原子炉と原理は同じ。ということは、太陽でも核のゴミが出るんじゃないですか? 核のゴミはどこへいくのですか?」(男性/20代)

A21:太陽は核分裂ではなく核融合反応で熱と光を出しています。核分裂反応でエネルギーを取り出す原子炉とは原理が違います。核融合というのは軽い原子核同士がくっついてより重い原子核に変わることです。太陽では水素がヘリウムになる核融合反応が高温高圧となる太陽の中心部で起こっています。ご存じのように、ヘリウムは風船などにも用いられており、いわゆる核のゴミ(放射性廃棄物)ではありません。

Q22. 「『地球温暖化は太陽黒点が増えたからで、二酸化炭素とか関係ない』という話をネットで見かけました。そうなんですか?」(男性/10代)

A22:20世紀に関していえば、太陽黒点の数は周期的な増減はあるもののトレンドとしてはあまり変化していません。一方、地球の平均気温は上昇傾向を示しています。そこだけ見れば、太陽黒点と地球の平均気温との間には関係がなさそうだといえます。近年では、太陽黒点の数ではなく、地球に降り注ぐ宇宙線の量に注目した議論があります。太陽の活動が活発になると、太陽磁場が強まり地球に降り注ぐ宇宙線が減り、雲が減ることで太陽光線の反射率(アルベド)が下がって気温が上昇するという仮説です(スベンスマルク効果)。ただ、仮にそうしたメカニズムが本当にあったとしても、定量的にどの程度の大きさなのかが問題です。今日までの各種の研究を踏まえると、効果があるかどうかもはっきりしませんし、あったとしても非常に小さなものだろうとされています。

Q23. 「春分や秋分は祝日なのに夏至や冬至は祝日ではありません。どうしてですか?」(男性/10代)

A23:日本でいえば、春分・秋分が祝日とされているのは先祖の霊を祭るお彼岸と関係があります。もう少し詳しくいえば、戦前にあった春季皇霊祭・秋季皇霊祭という歴代天皇・皇后・皇親の霊を祭る儀式の行われる日を戦後春分の日・秋分の日と呼び換えたものです。大雑把にいえば、春分・秋分のときは太陽が真東から昇って真西に沈みますし、夏至・冬至のときは日の出の位置が最も北や南に来ますから、その意味で昔の人たちにとって特別な日だったのです。例えば、今日でもヨーロッパでは夏至のお祭りは大きなイベントですし、キリスト教が広まってからはイエスの生誕の日として祝われるクリスマスも元々は冬至を祝うお祭りでした。古代の人々は冬至の頃は昼間の時間が1年で最も短くそれを境に太陽が昇っている時間が伸びていくことに「死と再生」を感じていたようです。多少時期がずれますが、実は日本にも夏至のお祭りに当るものがないわけではありません。神道では、6月30日に夏越の大祓(なごしのおおはらい)の神事を行い人形代(ひとかたしろ)を川に流したり茅の輪をくぐったりして(「胎内くぐり」と呼びます)正月から半年間の穢れを祓い無病息災を祈ります。

Q24. 「火に水をかけたら消えますよね? だったら、太陽に水をかけたら消えますか? 少しじゃなくて、例えば、太陽の10倍ぐらいの水を集めてきてドバッとかけたらどうですか?」(男性/10代)

A24:結論からいえば、消えません。火に水をかけたら消えるのは酸素の供給が絶たれるからです。太陽は水素をヘリウムに変える核融合反応で光り輝いているのであり、酸素を使って燃焼しているわけではありませんから、水をかけても消えることはありません。もっとも、炎のように見える太陽のプロミネンスの温度は1万度ほどで100万度以上あるコロナと比べれば非常に低温であり、炎というよりむしろ氷のようなものです。なお、太陽の質量の10倍もの水を1か所に集めたら、臨界を突破して核融合が始まりその水の塊そのものが太陽と同じように自ら光り輝く恒星となります。質量が太陽の10倍ある恒星を太陽にぶつけたら、2つが合体して太陽の質量がいまの11倍になるだけでしょう。

Q25. 「東京在住です。今年は2005年ですが、職場の同僚の女性が『数年前に東京23区内で皆既日食を見た』と言い張ります。私や他の人たちの記憶では東京で皆既日食が最近見えたことはなかったと思うのですが、どうなんでしょう?」

A25:最近日本で観察できた皆既日食は2009年7月22日のものです。奄美大島の北部や鹿児島県のトカラ列島などごく一部の地域では皆既日食が見られるはずでしたが、その他の地域では部分日食でした。2009年より前に日本で皆既日食が観察されたのは1963年7月21日ですが、このときは北海道東部で見られました。「数年前」で「東京23区内」ということなら、その女性が2009年の部分日食を皆既日食と勘違いされている可能性が一番高いかなと思われます。ただ、確か当日は日本のほとんどの地域で梅雨前線の影響で雨や曇りの天気で、快晴だったのは硫黄島の付近ぐらいだったと記憶します。気象庁のWebサイトで2009年7月22日の1時間ごとの天気を調べた範囲では、東京の都心部も曇りや雨で全く見えなかったようです。そうなると、その方が一体何をご覧になったのかわかりません(まさか「皆既月食と勘違い」ということではないでしょうし……)。ちなみに、次の皆既日食は2035年の9月2日で、そのときは北陸や北関東で見えます。

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Q1. 「太陽は東から昇って西に沈みますが、月はどっちから昇ってどっちに沈むのですか? 西から昇って東に沈むのですか?」(女性/20代)

A1:月も太陽と同じように東から昇って西に沈みます。与謝蕪村は『菜の花や月は東に日は西に』と詠んでいますが、あの句は『月が東の空にあるとき、太陽が西の空にある』といっているだけで、どちらから昇るという話ではありません。ちなみに、太陽と反対方向にあるときの月は満月ですから、蕪村の句にある月は満月です。

Q2. 「七夕のお話で『織姫が月の舟に乗って天の川を渡って彦星に会いに行く』というのを聞きました。織姫の星はこと座のベガで、彦星はわし座のアルタイルだそうですが、調べてみると、ベガは天の川の西にあってアルタイルは天の川の東にあります。そうすると、月が西から東に動いたことになってしまいます。どこがおかしいのでしょうか?」(女性/20代)

A2:1日の月の動きは確かに東から昇って西に沈むのですが、新月から満月へ向かう過程で毎日同じ時間に月の位置を確認していると、西から東へ移動しているように見えます。七夕の物語に登場する『天の川の西の岸から東の岸へ渡る月の舟』はこの現象を指しているようです。昔の人は夜空をよく観察していたのですね。

Q3. 「太陽や月が地平線に近いときはとても大きく見えますが、どうしてですか? ネットで『大気が凸レンズの役目を果たして大きく見える』という説明を読んだのですが、そういうことですか?」(男性/30代)

A3:目の錯覚です。山や建物など対比するものがあるので大きく見えるともいわれますが、まだどういう仕組みの錯覚なのかはよくわかっていません。実際に測ってみると、空の高いところにあるときと大きさは全く変わりありませんから、「大気が凸レンズ」云々の説明は否定されます。自然現象ではなく心理的ないし認知的な現象だということは、カメラで大きく見える月の写真を撮ると、全然大きく写らないことでもわかります。よく知られている話ですが、5円玉を手に持って腕を一杯伸ばしたときの5円玉の穴の大きさが月の大きさとほぼ同じです。これは夕方や明け方の低い空にある月でも冬場の頭の真上に近いところに見える月でも同じです。

Q4. 「月までの距離は38万kmだそうですが、どうやって測ったのですか? 自分で確かめることはできますか?」(男性/小学生)

A4:アポロ11号は月面に再帰反射鏡(リトロリフレクター)という特殊な鏡(原理は自転車などに取り付けてある反射器と同じです)を置いてきました(月の上空から「投下した」のではなく、実際に宇宙飛行士が月面に降り立って設置作業を行いました)。地上からその鏡に向けてレーザー光線を発射して戻ってくるまでの時間を測定し、光の速さの秒速30万kmと掛け算して大気中の屈折率で補正してやることで月と地球との距離を非常に正確に求めることができます(レーザー測距といいます)。同様の鏡はアポロ14号や15号も設置しました。とはいえ、わたしたちはそんな大がかりな方法は使えませんので、もっと手軽なやり方を考えましょう。よく知られているように、5円玉を手に持って腕を一杯伸ばしたときの5円玉の穴の大きさは月の見た目の大きさとほぼ同じです。このとき、『腕の長さと五円玉の大きさ』と『月までの距離と月の大きさ』とは数学(幾何学)でいうところの相似の関係にあります(拡大コピーしたようなものです)。5円玉の穴の大きさを5mm、腕の長さを600mm(=60cm)とすると、両者の比率は5:600=1:120、つまり、5円玉の穴の大きさの120倍が腕の長さなので、月までの距離も月の大きさの120倍だとわかります。月の大きさは地球の大きさ(直径)約1万2700kmのおよそ4分の1なので、地球から月までの距離は120÷4で地球の大きさの30倍です。1万2700kmの30倍は38万1000kmとなり、これが地球と月との距離です。

月までの距離の測り方


~図1(月) 月までの距離の測り方~

Q5. 「皆既日食のときには太陽が月に隠されて真っ暗になりますが、皆既月食のときには月が赤く見えるだけで真っ暗にはなりません。なぜですか?」(女性/10代)

A5:夕焼けが赤いのと同じ理屈です。太陽光線が地球の大気を通り抜ける過程で波長の長い赤い光だけが月まで届くためです。影なのに赤い光が月面に届くのは、地球の大気がレンズのような役目を果たして太陽の光が屈折するからです。日食のとき真っ暗になるのは、月には大気がほとんどなく地球の夕焼けや朝焼けのような仕組みが働かないからです。

Q6. 「上弦の月とか下弦の月といいますが、要するに半月ですよね? どういう違いがあるのですか?」(男性/20代)

A6:新月から満月になる過程で見られる半月(月齢7前後)を上弦の月、満月から新月になる過程の半月(月齢23前後)を下弦の月と呼んでいます。『弦が上にあるから上弦の月、下にあれば下弦の月』という話を聞くことがありますが、弦がどの方向を向くかは時間帯によって違ってきますから関係ありません。

Q7. 「日本では夕方西の空に見える三日月は右下が光っていて左上が欠けて見えますが、南半球では逆になるのですか? ブログでそういう話が出ていましたし、画像検索でも出てきますが?」(女性/30代)

A7:はい、逆になります。南半球、例えば、オーストラリアやニュージーランドでは月は東から昇って北の空を通って西に沈みます。北を向いて空を見れば、右手の側から月が昇ってきて左手の側に沈んでいくわけです。三日月は日没直後に西の空に見えて、太陽を向いている方が光るので北を向いている人からすれば、左下が光って右上が欠けて見えます。

Q8. 「月の満ち欠けは地球の影が月に映っているからですか?」(女性/50代)

A8:いいえ。三日月や半月などで欠けているのは月の夜の部分です。月に太陽の光が当たった方が昼で明るく光り、反対側が夜で陰(かげ)になります。地球の影が月に映って起こるのは月食です。地球は太陽の周りを回り、月は地球の周りを回っていますが、地球の公転軌道に対して月の軌道は約5度傾いているので、地球の影が月に映る月食は比較的珍しいことなのです。一方、月の満ち欠けは毎日起きています。

Q9. 「月の模様(?)はいつ見ても同じですが、月は自転していないのですか?」(男性/30代)

A9:いいえ、月も自転しています。自転の周期と公転の周期とが同期(シンクロ)しているので、地球に対して常に同じ面を向けているのです。わかりにくければ図を描いて確かめてみましょう。漢字の十のような×を描いて、2本の線が交わっているところを中心として同心円を描いてください。内側の円を地球とし、外側の円を月の軌道とします。×印と月の軌道が交わったところ(上下左右)に小さい○を描いてみましょう。この○が月です。月を線で二等分して地球を向いている側を白く、反対側を黒く塗ってみてください。月は常に地球の側に白い面を向けていますが、4つの月を見ていくと、白い面は月が地球の上にあるときは下向き、月が地球の左にあるときは右向き、月が地球の下にあるときは上向き、月が地球の右にあるときは左向きですよね? つまり、月の白い側は下→右→上→左と向きを変えています。これが月の自転です。ちなみに、月の自転の周期は約27日です。

~図3(月) 月の自転~


Q10. 「月に裏側はどうなっているのですか? 宇宙人の基地があるとか何かで読んだのですが、地球は大丈夫ですか?」(男性/20代)

A10:わたしたちが地上から目にする月の表側には、『海』と呼ばれる黒い模様に見える地形がありますが、月の裏側には海はなく、クレーターばかりです。なぜ、月の表と裏とでこうした違いがあるのかについては様々な説があります。月の裏側は1959年10月にソ連(現在のロシア)がバイコヌール宇宙基地から打ち上げた無人月探査機ルナ3号が撮影しました。それ以降、何度も月の裏側の写真は撮られていますが、今のところ宇宙人の基地といった人工的な施設が見つかったという話は聞いたことがありません。

Q11. 「月の自転周期と公転周期とが同期しているのはなぜですか? 偶然ですか?」(男性/30代)

A11:潮汐力が作用しているからです。潮汐力というのは物体に働く重力の差によって物体を引き伸ばす力のことです。その典型が潮の満ち引きなので『潮汐力』と呼ばれていますが、月のように液体の水の海がなくても働く力です。誕生直後の月は今よりも地球に近い軌道を回っており、その分回転の速度も速かったと考えられますが、潮汐力がブレーキとなって月の自転は次第に遅くなり、今のように自転周期と公転周期が一致するところで安定したわけです。ちなみに、木星のガリレオ衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)なども自転周期と公転周期とが一致しています。

Q12. 「月はどうやってできたのですか?」(男性/小学生)

A12:大衝突によってできたという説が有力です。月のでき方については大きくわけて3つの説があります。1つは、地球の一部が遠心力でちぎれて月になったという説(分裂説)。もう1つは、宇宙をさまよっていた月を地球の引力が捕えたという説(捕獲説)。そして、もう1つが地球に他の天体が衝突してその天体と飛び散った地球の破片とが合わさって月ができたという説。最後の説はジャイアント・インパクト説(大衝突説)と呼ばれ、今のところ月のでき方についての最も有力な仮説です。なお、最初の遠心力でちぎれたという説は、月がちぎれるほどの遠心力が働くなら地球は猛烈な速度で自転していたことになり、それは無理があること、地球からちぎれたのなら月の軌道は地球の赤道面にあるはずだが、実際にはずれており、そうなった理由をうまく説明できないなどの問題点がありました。2番目の捕獲説については、海王星の衛星のトリトンや火星の衛星のフォボス、ダイモスについては成り立つと考えられますが、月ほど大きな天体を地球が捕まえるにはよほど大きな潮汐力が働くなどしないと難しいことや仮に地球の重力圏に捕えたとしてもそのままでは地球に激突してしまうこと、アポロが持ち帰った月の石から得られた酸素同位体比をみると、月と地球との組成は似通っており、月が地球と無関係なところでできた天体だとは考えにくいなどの問題がありました。

Q13. 「新月のときは、地球から見て太陽と月が同じ方向にあって、地球からは見えない月の裏側が太陽に照らされ、地球を向いている月の表側は太陽の光が当たらないから真っ暗になって見えないと学校で習いました。そうだとすると、新月のときは日食になるのではありませんか?」(男性/10代)

A13:日食のときには必ず新月ですが、新月のときに日食が起きるとは限りません。なぜかというと、地球の公転軌道と月の公転軌道とは傾きが5.1°違うからです。もし、地球の公転軌道と月の公転軌道とがぴったり一致していれば、新月のたびに日食が起こりますが、実際には5.1°傾いているので月が地球の公転軌道面を横切る年2回が日食のチャンスとなります。なお、地球の公転軌道と月の公転軌道との交点は月の公転の向きと逆向きに少しずつずれているので、世界中で見れば、日食は1年におよそ2~4回程度起きています。

Q14. 「アポロが月に着陸した跡は望遠鏡で見えますか? 普通の望遠鏡では無理でもハッブル宇宙望遠鏡なら高性能だから見えそうですが?」(男性/20代)

A14:残念ながら普通に市販されている望遠鏡はもちろんハッブル宇宙望遠鏡でも見えません。月は地球から38万km離れており、それと比べてアポロが月面に残してきた着陸船などは小さすぎるからです。ハッブル宇宙望遠鏡を月面に向けた場合、分解能は90mなのでそれより小さいものは識別不可能です。とはいえ、2008年5月に月周回衛星『かぐや』の地形カメラ(動画撮影用)でアポロ15号の噴射跡を確認しました。かぐやに搭載された地形カメラの分解能は1ピクセル当り8m程度といわれますので、それより小さい物体は識別できません。詳しくは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のWebページをご確認ください。また、2009年7月にはNASAの月周回衛星LRO(ルナー・リコネサンス・オービター)が静止画撮影用の分解能50cmの高解像度カメラでアポロ11号・15号・16号・17号の着陸地点を撮影し、着陸船や宇宙飛行士の足跡も確認しています(15号の着陸地点付近の写真はここを参照)。

Q15. 「ブルームーンとかスーパームーンというのは何ですか?」(女性/20代)

A15:ブルームーンというのは通常1か月に1回しかない満月が2回あることをいい、そこから転じて2回目の満月のことをブルームーンと呼びます。実際に月が青く見えるわけではありません。スーパームーンというのは普段よりも大きく見える満月のことですが、きちんとした定義がある天文学の用語ではありません。月が地球の周りを回る軌道は地球を中心とした完全な円ではなく楕円なので、月が地球に最も接近したときの距離は約36万km、最も遠ざかったときの距離は約41万kmとなり、その分月の大きさもいつもより1割ほど違って見えます。最も近づいたとき、たまたま満月だと、スーパームーンというわけです。

Q16. 「月のクレーターはどうやってできたのですか? 火山の噴火ですか?」(男性/小学生)

A16:火山の噴火でできたものもありますが、ほとんどのクレーターについては彗星や隕石が衝突してできたというのが最も有力な説です。月の表側で目立つのはティコというクレーターとコペルニクスというクレーターです。どちらも四方八方に伸びる明るい光条(こうじょう)が目立ちます。ティコはデンマークの天文学者ティコ・ブラーエにちなんで名づけられました。ティコはいまから1億800万年前にできたと考えられている比較的新しいクレーターです。コペルニクスはポーランドの天文学者ニコラウス・コペルニクスにちなんで名付けられました。コペルニクスはいまから8億年前にできたと考えられています。

Q17. 「宇宙は無重力で、月も宇宙にあるから月は無重力ですよね?」(男性/20代)

A17:いいえ、月にも重力はあります。月の重力は地球の重力の6分の1です。重力が地球より小さいので、アポロで月面に降り立った宇宙飛行士たちも重量80kgを超えるような重たい宇宙服(船外服)を着て月面でぽんぽん飛び跳ねるように移動できたわけです。なお、無重量の状態は地球でも作り出せます。塔から物体を自由落下させたり、飛行機で放物線飛行をすれば短時間(数秒~数十秒)ですが、無重量(微小重力)の状態を作り出せます。そもそも、地球も宇宙空間に浮かんでいるわけですから、「宇宙=無重量」とはいえません。

Q18. 「太陽が海に沈んでジュッと冷やされて昇ってくるのが月だから、太陽と月は同じ天体ですよね?」(女性/20代)

A18:いいえ、月と太陽とは別々の天体です。月は地球の周りを回っている衛星で、大きさは地球の4分の1程です。一方、太陽は地球の大きさの109倍あり、地球が太陽の周りを回っています。太陽と月とが別々の天体であることは、太陽と月とが同時に空に見えることで明らかです。「月は夜しか見えない」と思っていらっしゃる方もおられますが、青空に白く月が浮かんでいるのを目にする機会もあるでしょう。また、日食のように、太陽を月が覆い隠してしまう天体現象は月と太陽とが別々の天体だから起きるのであり、月と太陽とが同一の天体だったらあり得ません。なお、太陽は地球から1億5000万km離れていますし、月は地球から38万km離れています。太陽も月も地球の大気の外にあるので、太陽が海の水の中に沈んだり月が海の水の中から出てきたりはしません。

Q19. 「月の満ち欠けと大潮や小潮とは関係がありますか?」(女性/70代)

A19:はい、あります。新月や満月のときには、太陽、月、地球が一直線に並ぶので月の引力と太陽の引力の影響が相乗し、大潮になります。一方、上弦の月や下弦の月(半月)のときは、地球を挟んで太陽と月とが直角になるので引力の影響が打ち消しあって、小潮となります。

Q20. 「先日、夜東の空から昇ってくる月を見たら、オレンジ色でした。『月食のときの月は赤い』そうですが、確かあの日は別に月食とかではなかったと思います。どうして、普通の日なのに月が赤っぽく見えるのですか?」(女性/20代)

A20:地平線の近くにある月が赤っぽく見えるのは、朝日や夕日が赤く見えるのと理屈は同じです。私達が見ている光(可視光線)は、様々な色(様々な波長)の光を含んでいますが、青い光は赤い光よりも散乱されやすい性質を持っています。そのため、月が地平線に近いところにある場合、真上にあるときと比べて地球の大気の中をより長い距離進まなければならないので、青い光は途中で散乱されてしまい赤い光だけが目に届くのです。

Q21. 「旧暦の8月15日の『中秋の名月』のときに皆既月食が見られますか?」(男性/10代)

A21:見られますが、ずいぶん先です。ちなみに、前回の1997年9月16日は台風の影響でほとんどの地域で月が見えなかったようです。皆既月食は満月のときに起きますが、中秋の名月は満月とは限りません。天文シミュレーションソフトを使って調べてみると、中秋の名月が満月なのは東京オリンピックの翌年の2021年9月21日ですが、そのときは皆既月食ではありません。中秋の名月の当日にこだわると、次回は2192年9月21日です。中秋の名月の翌日まで含めれば、2033年の10月8日が皆既月食です。天気さえよければ、東の空から昇ったばかりの月がどんどん欠けていく様子が楽しめるでしょう。

Q22. 「月の黒く見える模様の部分は「海」というそうですが、海ということは月にも水があるのですか?」(女性/20代)

A22:いいえ、月には水はありません。月の黒く見える模様の部分は確かに「海」と呼ばれていますが、地球の海のように海水で満たされているわけではありません。400年ほど前に自作の望遠鏡で初めて月を観察したガリレオ・ガリレイやヨハネス・ケプラーらは月の海に本当に水があると予想していましたが、月の海は濃い色をした玄武岩によって覆われた平原です。月の火山活動によって溶解した玄武岩が地表に噴出し、クレーターを埋めたと考えられています。ちなみに、海が目立つのは月の表側(地球を向いている面)だけであり、月の裏側には海はほとんどありません。月の表と裏とでこのように地形が大きく異なる理由についてはさまざまな説があります。

Q23. 「日食は見える場所によって始まりや終わりの時刻が違いますが、月食の場合はどこでも同じです。なぜですか?」(男性/10代)

A23:月食は地球の影の中に月(満月)が入って起こる現象ですから、月(満月)が見えているところであれば同時に見えます。一方、日食の場合、月は地球の4分の1ほどの大きさで影も小さいので、場所によって見え方も変わりますし、見える時刻も異なります。

Q24. 「月には台風みたいなものがありますか?」(男性/小学生)

A24:ありません。なぜ、ないかというと、月には液体の形で水がなく、地球のような海や雲がないからです。台風のような大気現象が見られるのは、木星です。木星の大赤斑(だいせきはん)という巨大な赤い目玉のように見える模様は、木星の大気が渦を巻いているものです。地球の台風は平均で5日程度で熱帯低気圧に変わってしまいますが、木星の大赤斑は数百年物間消えずに残っています。ただし、台風の目に当るものが見当たらないので、台風ではなく高気圧性のものだと考えられています。

Q25. 「月の表面温度はどれぐらいですか?」(男性/小学生)

A25:赤道付近では最低気温は-170℃、最高気温は110℃とされています。月には地球のような大気がほとんどなくほぼ真空なので、太陽の光を受けている昼間と影になる夜との温度差が非常に大きくなっています。

Q26. 「月にある山の高さはどれぐらいですか?」(男性/小学生)

A26:名前のついている山の中で最も高いのは、アペニン山脈にあるホイヘンス山で、高さは4,700m~5,500mほどだそうです。名前のついていない山の中にはもっと高いものもあり、10,000mほどです。ちなみに、太陽系で最も高い山は火星にあるオリンポス山で約2万7000mほどあります(エベレストの約3倍)。

Q27. 「月には1年間に何個ぐらい隕石が落ちますか?」(男性/小学生)

A27:年間で250個ぐらいです。月には、アポロの宇宙飛行士が設置した地震計があり、月の地震のうち全体の15%ぐらいが隕石の衝突によると考えられています。その数は7年間で1,743個なので、1,743÷7で約250個が1年間に落ちた隕石の数になります。

Q28. 「上弦の月と下弦の月とでは明るさに違いがありますか?」(男性/小学生)

A28:あります。下弦の月の方が暗く見えます。その理由は、下弦の月の方が黒っぽく見える海の占める割合が高いからです。

Q29. 「月が地球の周りを回る速度はどれぐらいですか?」(男性/小学生)

A29:秒速1kmほどです。時速に直すと、約3,600kmになります。単純な計算のやり方は、月が地球から約38万km離れているので、半径38万kmの円を月がどれぐらいの日数で1周するかと考えるものです。円周は、2×円周率(3.14)×半径で求められますから、その距離を月の公転周期の27.3日で割ってやれば、1日に月がどれだけの距離移動しているかがわかります。それをさらに1日=24時間で割れば、月の時速がわかります。さらに1時間=60分で割れば、分速がわかります。そして、それをさらに1分=60秒で割れば、秒速が求められます。実際には、月の公転軌道面は地球の公転軌道面に対して約5度傾いていますし、地球も太陽の周りを回っていますからもっと面倒な計算が必要です。

Q30. 「潮(しお)の満ち引きは月の引力のせいだそうですが、どういう仕組みなのですか? 月が真上に来て引っ張られた側に海水が集まるのは何となくわかるのですが、月と反対側の海面も高くなっている理由が全然わかりません。月と反対側は海面が低くなるんじゃありませんか? あと、緯度は潮の満ち引きの大きさに影響していますか? 潮の満ち引きの仕組みを説明した図を見ると、緯度の低い赤道の方が潮の満ち引きが大きく描いてありますが、本当にそうなのですか?」(男性/20代)

A30:潮の満ち引きは海面の高さ(潮位[ちょうい])が1日2回規則的に高くなったり低くなったりする現象です。潮の満ち引きが起こるのはおっしゃる通り月や太陽の引力によります(太陽の引力の影響は月の半分程度)。月は地球の周りを24時間50分ほどで回っているので、その半分の約12時間25分の周期で満潮(満ち潮)から満潮へ(干潮[引き潮]から干潮へ)と変化します。海面が高くなる満ち潮は月に面した海で起きます。では反対側の海は引き潮になるかといえばそうではなく満ち潮になります。これは地球の自転による慣性の力(いわゆる遠心力)の方が月の引力よりも大きくなっているからです。

万有引力の法則で示されているように、重力の大きさは距離の2乗に反比例するので、月に面している海面(月に最も近い海面)とその反対側の海面(月から最も遠い海面)とでは働いている月の引力の大きさが異なります。月と反対側の海面に働く月の引力は月に面している海面に働く月の引力よりも小さくなるのです。地球の自転による遠心力はどこでも同じ大きさですが、地球上のある地点に働く月の引力は月との距離によって違ってきます。月に面している側では、地球の自転による遠心力と月の引力とが同じ方向に働くので、海面が月の側に引っ張られて高くなります。一方、月と反対側では、地球の自転による遠心力と月の引力とが逆方向に働きますが、地球の自転による遠心力の方が月の引力よりも大きいので海面が高くなります。下の図4は、以上の仕組みを地球の自転軸の真上から見たところです。

~図4(月) 潮の満ち引きの仕組み~

※地球と月とが共通の重心を回転することによる遠心力は地球の自転による遠心力と比べて非常に小さいので無視して考えます(共通の重心は地球の中心よりも月の側にありますから、遠心力は月と反対側の方が距離が遠くなる分だけ大きくなります)。また、地球が太陽の周りを回っている(公転している)ことの影響はさらに小さいのでこれも無視して考えます。

緯度の影響ですが、赤道付近の潮の満ち引きの差が大きいという事実はありません。潮の満ち引きの仕組みを説明する図では赤道の辺りの海水が月の引力に引っ張られているように描かれているものが多い印象を受けますが、月は地球の公転面から約5度傾いて地球の周りを回っていますし、地球の自転軸は地球の公転面に対して23.4度傾いているので、実際にあの絵のようになっているわけではありません。あくまでも仕組みを簡単に説明するための図です。ちなみに、最も満ち引きの差が大きいのはカナダ東部(大西洋岸)のファンディ湾で15mも違いがあります。ファンディ湾の緯度は北海道とほぼ同じです。日本について言えば潮の満ち引きが最も大きいのは有明海で最大6mと言われますが、平均すると太平洋岸は1.5m、日本海側は0.5m、瀬戸内海は3mとなっています。潮の満ち引きの大きい小さいはその場所の地形(水深や海岸線の形など)による影響が大きいようです。その他に、海流や気圧の影響も受けます。単純に緯度が高いとか低いとかでは決まりません。

Q31. 「満月のときに大きな地震が起きるのですか?」(男性/10代)

A31:関係はないと思われます。「満月のときには、月と地球と太陽とが一直線に並ぶような形になるので、月と太陽の引力が作用して地震が起きるのではないか」とする話がありますが、太陽と月と地球とが一直線のように並ぶのでしたら新月のときもそうですし、満月のときに特に大きな引力が作用するわけではありません。「働く力が大きくなる」ということと「地震を引き起こすほどの大きな力になる」というのは違います。日本で起きた大地震についていえば、1995年1月17日の阪神・淡路大震災(マグニチュード7.3)のときは満月(月齢15.7)でしたが、1923年9月1日の関東大震災(マグニチュード7.9)のときは月齢19.7でしたし、2011年3月11日の東日本大震災(マグニチュード9.0)のときも月齢6.3でいずれも満月ではありません。

Q32. 「『月は地球の周りを回っていない。そんな迷信を信じているのは世界中で日本人だけだ』という話をネットで見かけました。本当にそうなのですか?」(男性/20代)

A32:地球から見れば月は地球の周りを楕円軌道を描いて回っています。月が地球の周りを回っているという話は別に迷信ではありませんし、世界中のどこの天文台でお尋ねになっても迷信だと笑われることはないでしょう。ただ、地球も太陽の周りを楕円軌道を描いて回っていますので、地球が太陽の周りを一周したときの月の軌道を見ると、楕円軌道にはなりません。地球の姿を消して月だけを見ると、月は蛇行しながら、太陽の周りを回っているということもできます(面倒なのでそんないい方をわざわざしませんが)。


~図5(月) 月の軌道~

Q33. 「月には磁場がありますか?」(男性/50代)

A33:地球のような強くて全体に及ぶような磁場はありませんが、場所によって磁場の強いところ(残留磁場)はみられます。かつては月にも磁場がありましたが、何らかの理由でなくなってしまったと考えられます。

Q34. 「月は地球から毎年4cmずつ離れているそうですが、このままいけばいつか月がどこか遠くにいってしまうのではありませんか?」(男性/小学生)

A34:その心配はいりません。月が地球から毎年3.8cmほど離れて行っているのは事実です。アポロ11号・14号・15号で月に到達した宇宙飛行士が月面に設置したレーザー反射鏡(再帰反射器)によって地球と月との距離は正確に測定されています。月は地球に他の天体が衝突してできたと考えられていますが、できてすぐの頃の月は今よりも地球にずっと近い軌道を回っていました。それが今のように38万kmも離れたのは地球と月との間に潮汐力が働いているからです。月ができたばかりの頃は地球の自転も今よりもずっと速くて5,6時間ほどで1回転していたようです(サンゴの化石に見られる成長縞などを調べると、今から4億年程前の1年は400日位で1日は22時間だったようです)。それが今のように23時間56分で1回自転するようになったのは潮汐力によってブレーキがかかって自転の速度が遅くなったからです。地球の自転の速度が遅くなると、それとバランスをとるために月の公転は速くなり地球から離れていきます。現在、月の自転周期と公転周期とは同期していますが、あと50億年ぐらい経つと、地球の自転速度が月の公転速度と同期して安定します。そのとき、地球と月の距離は約53万kmぐらいになると計算されています。もっとも、その頃には太陽の寿命が尽きかけているでしょうから、地球の公転軌道の近くにまで膨張した太陽のせいで地球の海は干上がって生き物が住める環境ではないでしょうね。

Q35. 「わたしは昔望遠鏡で月を見ていたときUFOを見ました。だから、月の裏側には宇宙人の基地があると思います」(女性/50代)

A35:UFOというのは「未確認飛行物体」のことです。言い換えると、正体不明の空を飛んでいるものを指してUFOと呼ぶのです。もし、それが宇宙人の乗り物だとわかってしまえば、それをUFOとは言いません。月を望遠鏡でご覧になっているときにあなたが何かを目撃されたのは事実だとして、その正体が宇宙人の乗り物だと断定するにはそれなりの根拠が必要でしょう。また、仮にあなたのご覧になったUFOが宇宙人の乗り物だったとして、それだけで「月の裏側に宇宙人の基地がある」と言えるわけでもありません。たまたま月の前を横切っただけかも知れません。以上、全体としてお話が論理的にどう繋がるのか全く分かりません。

Q36. 「新月を見たいのですが、夜の何時ぐらいに見えますか?」(男性/20代)

A36:新月は夜見えません。昼間太陽の近くに出ていますが、月の裏側が太陽の光を受けていて地球を向いている月の表側は陰になっていて見えません。ちなみに、新月が太陽と地球を結んだ一直線上に並ぶと日食が起きます。

Q37. 「三日月は月齢(げつれい)3ですよね?」(男性/20代)

A37:いいえ、三日月は月齢2です。月の満ち欠けに基づいた昔の暦(旧暦)では、月齢0の日をその月の1日とし、月齢1の日を2日、月齢2の日を3日としました。3日目に見える月だから三日月と呼んだわけです。半月よりも欠けている月を全部まとめて「三日月」と呼んでしまう方もごくごく稀におられますが、正しい呼び方とはいえません。

Q38. 「中3です。授業で『月の動きは西から東』と教わったのですが、この間見た三日月は西に沈んでいきました。友だちも一緒だったから間違いありません。学校ではウソを教えているんですか?」(男性/10代)

A38:いいえ、「月の動きは西から東」という説明も間違いではありません。毎日同じ時刻の月の動きを記録していくと、月は西から東へ動いて見えます。また、あなたがご覧になったようにある日の月の動きを見れば、月は東から西へと動いていきます。どちらも間違いではありません。1日の単位で見たときに月が東から西へと移動していくのは地球が西から東へと自転しているからです。一方、毎日同じ時刻に観察した月が西から東へ移動していくのは月が地球の周りを回っている(公転している)からです。

Q39. 「月が地球に落っこちたりしませんか?」(女性/小学生)

A39:心配しなくても大丈夫です。月が地球に落ちてくることはありません。むしろ、月は毎年少しずつ地球から遠ざかっています。もっとも、1年間に3cm~4cmですから、100年経っても3、4mぐらい遠くなるだけなので月を見てもい今より小さくなったとわかることはないでしょう。

Q40. 「月って地球の近くにあるんですか?」(女性/20代)

A40:はい、月は地球に最も近い天体です。月は地球から平均して約38万km離れたところを回っています。38万kmというのは地球30個分ぐらいですが、宇宙の大きさで考えれば非常に近いといえます。例えば、月と地球との距離は太陽と地球との距離のおよそ400分の1ですが、イメージしやすいように太陽と地球との距離を100mに置き換えると、月と地球との距離は25cm程になります。

Q41. 「月は夜出てるんですよね? 『昼間でも月が見える』というヤツがいたので『アホかっ!』と言いましたけど、オレ間違ってないですよね?」(男性/10代)

A41:いいえ、昼間でも月は見えます。明け方や夕方でなくても月は見えます。月が昇ってくる時刻は平均すると1日に約50分遅れます。満月のときには日没とほぼ同じ頃に月が昇ってきますから、満月の2,3日前だと日没の2,3時間ほど前に東の空に満月の少し前の欠けた月が昇っています。天気がよければ、青空に白い月が浮かんでいるのがわかるでしょう。双眼鏡などで見ると、月のクレーターの様子もわかりますよ。上弦の月(新月から満月へ向かう途中の半月)なら昼過ぎに東の空から昇ってきます。探してみてください。

Q42. 「参考書を読んでもよくわからなかったのですが、月の出が毎日50分ずつ遅れる理由を教えてください」(男性/小学生)

A42:上弦の月(新月から満月へ向かう途中の半月)が午前0時に西の地平線に沈んでいき、下弦の月(満月から新月へ向かう途中の半月)が午前0時に東の地平線から昇ってくるとすると、上弦の月から下弦の月までの15日間で月は西から東へと180度移動したことになります。15日で180度ということは、1日当りでは180÷15=12(度/日)月は移動します。地球が約24時間で1回自転しているので15度が1時間になりますから(360÷24=15[度/時])、1度は4分(60÷15=4[分/度])、12度は12×4=48(分)となって、およそ50分ずつ遅れる計算になります。中学受験ならここまで答えれば十分なのかも知れませんが、実際にはもう少し面倒な話になります。月の公転周期は27.3日なので月は1日に360÷27.3で約13.2度移動します。地球は1年(365日)で太陽の周りを回っていますから、1日では360÷365で約0.98度移動します。そのため、太陽と月の角度は毎日13.2-0.98=12.22(度)ずれていきます。月の公転周期の27.3日では27.3×12.22でおよそ333.6(度)となりますが、1周分の360度には360-333.6=26.4(度)ほど足りません。新月から新月へはあと、26.4÷12.22で2.2日程必要です。従って、月の満ち欠けの周期は月の公転周期の27.3日に不足分の2.2日を足した29.5日となります。この29.5日に太陽は29.5回昇ってきますが、太陽に追いつかれる月は1回少ない28.5回しか昇りませんので、29.5÷28.5で約1.035日経たないと月は翌日元のところに戻りません。差の0.035日は0.035×24で0.84時間になりますが、これを分に直せば、0.84×60=50.4(分)となります。

Q43. 「月齢を計算で出すことはできますか?」(男性/10代)

A43:はい、できます。計算のやり方はいくつかありますが、西暦2000年以降で使える一番簡単そうなものをご紹介します。例えば、2015年7月2日の月齢を求めるには、(2015-2000)×11+7+2-8と計算します。答えは166になりますが、30より小さな数字になるまでここから30を引き続けます。すると16となりますが、これが月齢です。実際には2015年7月2日は満月ですから、まあまあの結果でしょうか? 日付を変えて、2015年7月31日で計算してみます。実はこの日も満月です(1か月に2回満月があるのは比較的珍しく、2回目の満月はブルームーンと呼ばれ「見ると幸せになる」ともいわれます)。(2015-2000)×11+7+31-8=173で30をどんどん引いていくと、最終的には15となります。一般化して書けば、西暦Y年M月D日の月齢は、

(Y-2000)×11+M+D-8

で求められます。計算結果が30より大きな数字になるときは、30より小さな数字になるまで計算結果から30を引き続けてください。誤差は1程度で、西暦2035年頃までは使えるはずです。月齢が分かると、月の出や月の南中、月の入りの時刻も大まかに分かりますから、覚えておいて損はないでしょう。

Q44. 「満月は午後6時に昇って午前6時に沈むと言われますが、実際にはズレてますよね?」(男性/20代)

A44:はい、ズレています。天文シミュレーション・ソフト「ステラナビゲーター10」を使って2015年7月から2016年7月までの14回の満月について調べてみました。


~表1(月) 満月の月の出と月の入~

月の出については、最小1分、最大85分のズレがあります。また、月の入については、最小で2分、最大61分のズレがあります。月の出のズレが最も小さいのは2016年1月24日ですが、ズレが最も少ない月の入は2015年9月28日で、どこかの時期にほぼ18時に昇ってほぼ6時に沈むわけでもないようです。ただ、もう少し細かく見ていくと、月の出、月の入の両方でズレが小さいのは、2015年9月28日(月の出のズレは15分で、月の入のズレは2分)と2016年3月23日(月の出のズレは19分で、月の入のズレは7分)の2回です。上記の期間についていえば、昼と夜の長さがほぼ同じ春分と秋分の頃のズレが小さいようです。興味のある方は他の期間についても調べてみられてはいかがでしょうか?なお、1年の長さ(365.2422日)と月の満ち欠けの周期(29.530589日)の関係で、19年ごとに春分の日に満月となります(19太陽年が235朔望月とほぼ同じになります)。

Q45. 「先日、南半球に旅行に行きました。日本で上弦の月だったのに、向こう(南半球)では下弦の月でした。どうしてですか? 南半球では月の裏側を見てるんですか?」(女性/70代)

A45:日本で上弦の月で、その足で南半球に行かれたのなら南半球で見えているのもやはり上弦の月です。北半球に住んでいるわたしたちにとっては、月は東から昇って南を通って西に沈みますが、南半球では月は東から昇って北を通って西に沈みます。南を向いて立てば、左手の側が東で右手の側が西ですね。では、北を向いて立ったらどうなるでしょうか? 右手の側が東で左手の側が西になるはずです。北半球に住んでいるわたしたちは「月は南を通る」と思い込んでいるので、月が北の空を通る南半球でも無意識のうちに左手側が東で右手側が西だと考えてしまうのです。上弦の月というのは、新月から満月へ向かう途中の半月のことです。夕方、北半球の南の空で見ると、太陽が沈んだ右側(西側)が光って左側(東側)が欠けて見えます。しかし、「上弦の月は右側が光る」のではありません。光っているのは太陽が沈んだ側(西側)です。そのことに注意すれば、南半球でご覧になったのが下弦の月ではなく上弦の月だったことがわかるはずです。「月に関するご質問」のA7や下の図も参考になさってください。


~図6(月)上弦の月の見え方(北半球と南半球)~

なお、月は地球を1回回る間に1回自転するので、地球からは常に同じ側しか見えませんので、南半球からでも月の裏側は見えません。月の同じ側を見ています。ただし、北半球で見るのと、上下は逆になっているので月の模様はひっくり返って見えます。北半球と上下が逆に見えるのは星座でも同じです。

Q46. 「日本で満月だったら、同じ日に世界中で満月ですか? アメリカとかヨーロッパとかアフリカとかでも満月ですか? どこかで三日月とか半月とかそういうことはないんですか?」(女性/30代)

A46:はい、どこでもほぼ満月です。満月は日没頃昇ってきて日の出の頃に沈みますから、日本で満月が見えている時間帯(夜)に昼間の国や地域では月は同時には当然見えません。しかし、日本で昼間になれば、それらの国や地域は夜になりますから、日本で見たのとほぼ同じ形の月が見えます。ただし、「月に関するご質問」のA7やA45でも述べたように、南半球だと、月は日本とは逆さまに見えます。満月だと気付きにくいかも知れませんが、模様をよく見れば逆になっているのがわかるでしょう。

Q47. 「地球が自転してるのにその日のうちに月の形が変わんないのはどうしてですか? 地球がぐるぐる回ったら、月の形もどんどん変わってって、たとえば、夕方は三日月だったけど真夜中には満月になるとかそういうことが起きないのってどうしてですか?」(女性/10代)

A47:1日のうちでもわずかに形は変わっていますが、気が付かないだけです。1日経てば形が変わったと分かりますが、満月でも半日程度しか見えていませんし、実際に月を観察するときはせいぜい数時間ぐらいでしょうから、形が変わっても分かりません。

Q48. 「NASAはどうして月の裏側の写真を公開しないのですか!?」(男性/10代)

A48:以前から公開しています。例えば、ここやここやここなどをご参照ください。

Q49. 「中学受験の理科で気になった問題があったので教えてください。夕方、南の空に見えていた上弦の月は真夜中に西の地平線に沈みます。沈むときに上弦の月の弦のところが上を向くのはわかりますが、真上を向くわけではなく季節によって傾きが違うみたいです。どういう仕組みでどんな風に違ってくるのですか?」(女性/小学生)

A49:はい、確かに沈むときの上弦の月の傾きは季節によって変わります。上弦の月の南中高度が最も高くなるのは春分の頃の3月、最も低くなるのは秋分の頃の9月だというのはご存じですね? 弦の傾きは、12月に最も水平に近くなり、6月に最も垂直に近くなります。12月は冬至、6月は夏至の頃ですね。このとき、上弦の月の南中高度は春分の頃の3月と秋分の頃の9月のちょうど中間ぐらいになり、ほぼ真西に沈みます。下の図7(「ステラナビゲーター10」で作成)は熊本県八代市(北緯32度30分)での見え方の違いです。参考にしてください。


~図7(月)季節による沈むときの上弦の月の見え方~

ご存じのように、月の光っている部分は太陽の光が当たっている月の昼間のところで、欠けて見える部分は太陽の光が当たっていない月の夜のところに当ります。太陽の光が月の真横(右側)から当たれば月の右半分が光って左半分が陰になりますから、弦は垂直となります。また、太陽の光が月の真下から当たれば月の下半分が光って上半分は陰になりますから、弦は水平になります。これを踏まえると、弦の傾きが季節によって違ってくるのは月が沈むときに太陽の光がどのように当っているかによるということがわかるでしょう。太陽の光が真横(右側)に近い向きから当たれば、弦は垂直に近くなるはずです。これが夏至の頃ですね。太陽の光が真下に近い向きから当たれば、弦は水平に近くなるはずです。これが冬至の頃ですね。夏至のときには太陽の南中高度が最も高くなり、最も北寄りに沈みます。逆に、冬至のときには太陽の南中高度は最も低くなり、最も南寄りに沈みます。

下の図8を見てください。黒い丸は天球を表しています。


~図8(月)沈むときの上弦の月の見え方が違う理由~

太陽と月の位置関係で沈んでいく上弦の月に光が当たる向きが違っているのがお分かりでしょうか? 太陽の南中高度が最も低く日の入の地点が最も南寄りになる12月(冬至の頃)には図でいうと月のほぼ真下から光が当たりますが、太陽の南中高度が最も高く日の入の地点が最も北寄りになる6月(冬至の頃)には光が右下から当たっていますね。図7と見比べてください。

Q50. 「三日月や半月は、地球の影が暗くなってそのように見えると習いました。地球は丸いのに、半月で影が弦になるのはどうしてなのでしょうか?」(女性/30代)

A50:月の満ち欠けは地球の影が月に落ちて起こるのではありません。地球の影で起こるのは月食です。「地球の影で暗くなって三日月や半月になる」という説明は正しくないので学校でも学習塾でもしていないはずなのですが……。月の明るい部分は太陽の光が当たっている月の昼間の部分で、月の暗い部分(欠けて見える部分)は太陽の光が当たっていない月の夜の部分です。半月は太陽の光が横から当たっているのを見ているから、昼間と夜の境目が弦になります。ボールを手に持って顔の前に持ってきて、右側や左側から光をボールに当ててみてください。半月と同じように陰ができますよ。ここのQ8も参考にしてください。

Q51. 「新月って、三日月の細いやつですよね? それと、新月の『つきれい』は1ですよね?」(女性/50代)

A51:どちらも違います。まず、新月は、地球からは見えない月の裏側に太陽の光が当たっている状態(月の裏側が昼間の状態)ですので、月の表側は月の夜になり真っ暗で地球からは何も見えません。新月のときは、月は太陽の近くにあって太陽と一緒に東の地平線(水平線)から昇ってきて太陽とともに西の地平線(水平線)に沈みます。三日月の細いような見え方をしている月は月齢(げつれい)1ぐらいの月です。次に、新月の月齢は1ではなく0です。旧暦の月の始めは必ず新月でしたから、1日目は月齢0、2日目は月齢1、3日目は月齢2です。3日目の月だから三日月と呼ばれます。なお、「つきれい」という呼び方は聞いたこともありませんし、そういう呼び方は一切しません。「げつれい」です。ここのA36やA37も参考にしてください。

Q52. 「月の光って大昔に月から出た光を見てるんですよね? だから、本当はもう月は宇宙から消えてるってこともあるんですよね?」(女性/40代)

A52:月は地球のすぐ近くにありますから、私達が見ている月は1秒弱位前の姿です。少し前に「超新星爆発を起こすのでは?」と騒がれたオリオン座のベテルギウスなら、640光年ほど離れていますから、今この瞬間に超新星爆発を起こしても、地球に住む人類がそのことに気づくのは今から640年後になります。

Q53. 「月齢13の月は昼間でも見えますか?」(男性/10代)

A53:太陽が地平線より上にある時間帯を「昼間」と呼べば、月齢13の月は昼間でも見えます。世間一般の言葉の使い方でいえば、月齢13の月は夕方(日没2時間ぐらい前)には東の地平線から昇ってきます。青空に満月より少し欠けた白っぽい月が見えますよ。(1)満月のとき、日没の頃昇って明け方に沈むことと、(2)月の出は大体1日50分ずつ遅くなることとを理解していれば、月齢から大体いつ頃昇ってくるかはわかります。

Q54. 「月にハートの模様ができたんですか? 望遠鏡で見えますか?」(女性/10代)

A54:それは月ではなく冥王星のことではないでしょうか? NASAのニューホライズンズという探査機が2015年7月に冥王星に最接近しました。ニューホライズンズが撮影した冥王星の写真の中にハート型の模様があったので、それのことだと思います。冥王星は光の速さで地球から片道4時間半もかかるところにあるので、地上にあるどんな大型望遠鏡を使っても表面の模様を見ることはできません。星と同じように、ただの点に見えます。

Q55. 「月って朝沈むんですよね?」(女性/20代)

A55:満月は日没の頃昇って日の出の頃に沈みますが、満月以外のときは朝より早く沈んだり遅く沈んだりします。月が昇ってくる時刻(沈んでいく時刻)は毎日およそ50分ずつ遅れます。新月のときは月が太陽のすぐ近くにあるので見えませんが、朝昇って夕方沈みます。上弦の月(新月から満月へ向かう途中の半月)の場合、昼頃昇って夜中に沈みます(南中する[真南に来る]のは夕方)。下弦の月(満月から新月へ向かう途中の半月)は夜中に昇って昼頃沈みます(南中するのは明け方)。

Q56. 「スーパームーンって月が3倍ぐらい大きく見えるんですよね?」(女性/50代)

A56:1割ぐらいです。3倍も大きくは見えません。

Q57. 「明日満月ですけど、今日ブルームーンは見えますか?」(男性/20代)

A57:見えません。月の満ち欠けの周期は29.5日ほどなので、満月は通常1か月に1回しか見られませんが、満月が1日か2日にあると同じ月の31日にもう一度満月になります。この2回目の満月をブルームーンと呼んでします。従いまして、満月の日以外にブルームーンをご覧いただくことはできません。なお、お判りかとは存じますが、ブルームーンだからと言って月が青く見えるわけではありません。

Q58. 「小説を書いているのですが、月は毎年同じ日には同じように満ち欠けしてみえるんですか?」(男性/70代)

A58:いいえ。同じ日でも年によって月の見え方(月齢)は異なります。これは月の満ち欠けの周期が29.5日だからです。29.5×12=354(日)が月の満ち欠けに基づく1年ですが、いまの暦は太陽の動きに基づく太陽暦で1年は365日(うるう年は366日)なので、1年で同じ形の月はその差の365-354=11(日)分ずれてきます(早くなります)。

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Q1 「『地球は自転している』と言われますが、地球が動いている実感が全くありません。本当に地球が動いているのなら、地球の動いている方を向いて垂直にジャンプしたらずっと後ろに着地するはずですが、そんなことはありません。どうしてですか?」(男性/20代)

A1 :慣性(かんせい)が働いているからです。移動している電車の中で手に持っていたハンカチを落としてしまったとしても、ハンカチははるか後方に落ちたりはしません。真っ直ぐ下に落ちるだけです。慣性の法則はいまから400年ほど前に、ガリレオ・ガリレイが発見しました。実感が湧かないのなら、電車が急ブレーキを掛けたときのことを想像してください。乗客は電車の進行方向につんのめってしまいますね。あれも慣性が働いているからです。電車が一定の速度で走っている限り、慣性の力を乗客が実感することはありません。力を感じるのは加速や減速するときだけです。もし、地球が突然自転を止めたら、地上のあらゆるものは地球が回っていた方へものすごい力で投げ出され大災害が起きるでしょう。

Q2 「月には沢山クレーターがありますが、地球にはありません。どうしてですか?」(男性/20代)

A2 :地球にもクレーターは100個以上あります。月と違って地球には大気があるので、小さな隕石は途中で燃え尽きてしまいます。また、燃え尽きずに地表に激突した隕石によってクレーターが出来ても、長い間に雨や風の力でだんだん崩されてしまい目立たなくなっています(浸食[しんしょく]作用といいます)。アメリカ合衆国のアリゾナ州にあるバリンジャー隕石孔(いんせきこう)は有名ですね。メキシコのユカタン半島に埋もれているチクシュルーブ・クレーターを作った隕石の衝突は地球規模での気候変動をもたらし恐竜を絶滅に追いやったともいわれています。

Q3 「『もうすぐ地球の磁場が反転するので、地球の磁場が今どんどん少なくなっている。磁場がゼロになって大変なことが起こってしまう』という話をネットで見かけました。本当にそうなのですか?」(男性/20代)

A3 :ここ100年ほどで地磁気が弱くなっているのは事実ですが、今のペースで減少し続けたとしても地磁気がゼロになるのは単純計算で1000年程先になりそうですし、減少がこの先もずっと続くかどうかもはっきりしません。いずれにせよ、数日とか数週間、数か月でどうこうという話ではありません。その証拠に方位磁石(百円均一の店でも買えます)はきちんと北を指し示します。おっしゃっている「大変なこと」が具体的にどういう内容なのかわかりかねますが、地球規模での生物の大量絶滅のようなことでしょうか? 生物の大量絶滅は過去の地球で何度も起きていますが、その原因として推定されているのは火山噴火や彗星・小惑星の衝突によって大量のちりやほこりが巻き上げられ太陽の光が長期間遮断されたことであり、地磁気の逆転ではありません。地球の46億年の歴史の中で地磁気の南北が数百回も入れ替わっていることは海底の古い岩石などを調べることでわかっていますが、そうした磁極の反転が大量絶滅をもたらしたという明確な根拠はありません。

Q4 「地球は本当に丸いのですか? 『実は平ら』とかそういう事はないのですか?」(男性/20代)

A4 :はい、地球は球体です。今日では、実際に宇宙から丸い地球を見ることができますが、ロケットも何もない古代ギリシアの哲学者たちも地球が丸いと考えていました。例えば、アリストテレスは「旅をしていくと見えている星座がどんどん姿を変えていくこと」「月食のときに月に映る地球の影が丸いこと」などいくつか理由を挙げて、地球が丸いと唱えました。ピタゴラスが月食の際に月に映る地球の影を見て地球が丸いと考えたという話も伝わっています。その後、エラトステネスはいくつかの仮定を置いて地球の大きさを計算し、ほぼ正確な値を求めています。ローマ時代のストラボンは、船乗りが港へ帰ってくるとき、最初は高い山が見えて、港に近づくにつれてふもとの街が見えてくることなどを挙げて、地球は丸いと主張しました。「昔の人たちは地球が平らだと信じていた」としばしばいわれますが、必ずしも事実ではありません。アリストテレスの学説は非常に強い影響力を持っており、一般の庶民はともかくとして、中世ヨーロッパの学者たちも地球が丸いことを認めていました。今日のわたしたちは時差があることを知っています。時差も地球が丸いことの証拠です。ワールドカップのテレビ中継が早朝や深夜に行われるのは、試合が行われているところと日本とで時差があるからです。地球が平らだったら、日本では夜で他の国では昼間という現象は説明できないでしょう(「世界中のテレビ局がぐるになってウソをついている」というのなら別ですが)。「地球が丸い」と実感する比較的簡単で確実な方法は旅行してみることです。南半球に行けば、太陽が東の空から昇って北の空を通って西の空に沈むのを見ることができますし、オリオン座などの星座が北半球の日本とは上下逆に見えるのも体験できます。また、国内旅行でも、北極星の高度はその土地の緯度なので、緯度の高い北海道と緯度の低い九州とでは北極星の高度が違います。九州では見えている星座が地平線の下に隠れて北海道では見えないこともわかります。ご自分の目で確かめてみてください。

Q5 「地球は爆発しますか?」(男性/小学生)

A5 :しません。地球は、その上に住んでいるわたしたち人間が戦争や環境破壊によって滅んでしまっても、惑星としては宇宙に存在し続けるでしょう。地球の歴史は46億年ですが、あと50億年ほど経って太陽が寿命を迎えて大きく膨らんでいく中で地球も太陽に飲み込まれてしまうと昔はいわれていました。しかし、いまではぎりぎりのところで地球は飲み込まれずに済むだろうといわれています。とはいえ、太陽の熱で地球上の海は干上がってしまい、恐らく生き物の住める星ではなくなっていることでしょう。火山の噴火などはわたしたち人間にとっては大変な出来事ですが、地球の大きさで見れば火山の噴火で地球が吹き飛んだりはしません。

Q6 「ヴァン・アレン帯の外側は強烈な死の放射能に満ちているのですか?」(男性/10代)

A6 :いいえ、ヴァン・アレン帯が放射線の強いところであり、そこより外側は放射線のレベルは低下します。時々ヴァン・アレン帯を「地球を放射線から守っているバリア」のように誤解している方がおられますが、「バリアのような働きをしている」と一般にいわれるのはオゾン層(成層圏下部のオゾンの濃度が高いところ)ですし、防いでいるのは放射線ではなく生物にとって有害な波長の紫外線です。

Q7 「白夜(びゃくや)って1日中太陽が沈まないんですよね? どうしてそんなことが起きるのですか?」(女性/30代)

A7 :地球の地軸(自転の軸)が傾いているからです。地軸の傾きは約23.4度ですが、仮に90度傾いていたとしたら、太陽の方を向いている地球の半分はずっと昼間で、反対側の地域はずっと夜になるのはおわかりですね?(天王星はほぼそうした状態です)

~図1(地球) 白夜の仕組み~

上の図を見てください。地軸が23.4度傾いているので、図でピンク色に塗った緯度が66.6度(90-23.4=66.6)度よりも高い北極(や南極)に近い地域では太陽が沈まない白夜や太陽が昇らない極夜(きょくや)が起こります。図からわかるように、北極圏で白夜のときには南極圏では極夜になりますし、南極圏で白夜のときには北極圏では極夜になります。南極点では1年のうち半分が白夜で残り半分が極夜です。白夜のときの太陽は東から西へ地平線の上を転がるように動きます。アイスランドの首都レイキャビクは北緯64度ほどなので完全な白夜は起こりませんが、沈んだ太陽がすぐに昇ってくる不思議な情景を見ることができます。

Q8 「理科の問題です。地球を北極の真上から見た図 があって、左側から太陽の光が当っています。このとき地球の下側が明け方、上側が夕方になってると説明されているのですが全く分かりません。どういう事なのでしょうか?」(男性/10代)

A8:ご覧になっているのは下の図で間違いないでしょうか?


~図2(地球) 明け方と夕方~

北極の真上から見ると、地球は北極点を中心として時計の針と反対向き(左向き)に自転しています。このとき、図の上側のA地点では夜から昼へ変わるので明け方だと分かります。逆に、図の下側のB地点では昼から夜へ変わるので夕方だと分かります。「下側」とか「上側」というのはあくまでも図の中での話であって、赤道を挟んで北半球とか南半球という意味ではありません。そこで混乱されているのではありませんか?

Q9 「ニュースでやってましたけど、昼と夜の長さって季節によって違うんですか? 昼と夜は1日のうち一定の割合だとずっと思っていたので驚いて友達にその話をしたら『そんなの常識だろ!』と呆れられました。どうして昼と夜の長さが変わってくるのですか?」(男性/20代)

A9:はい、昼と夜の長さは季節によって違います。なぜ、違いが起きるかというと地軸が地球の公転面に対して傾いているからです。もし、下の図のAのように地軸が地球の公転面に対して垂直(90度)であれば、季節によらず昼と夜の長さは一定となります。しかし、実際には下の図のBのように地軸が傾いていることで夏至のときに昼間が最も長くなり、冬至のときに夜が最も長くなるのです。春分や秋分には地軸の傾きが公転方向と同じになって傾きの影響を受けなくなるので、ちょうど図のAの状態となり昼と夜の長さが同じになります。


~図3(地球) 昼と夜の長さが違ってくる理由~

Q10. 「地球の公転の向きは左回りなのに、どうして自転の向きは右回りなのですか?」(男性/20代)

A10 :北極側から見たとき、地球は公転の向きも自転の向きも左回りですが? 太陽が東から昇って西に沈むように見えるのも、北極上空から見て地球が左回り、すなわち、西から東へ自転しているからです。「地球の自転の向きは右回り」という話はどこから出て来たのでしょうか?

Q11 「地球が太陽系から離れていっているというのは本当ですか?ツイッターで話題になっています」(男性/10代)

A11 :本当ではありません。太陽から地球が離れているのなら、地球から見た太陽の大きさが小さくなっているはずですが、そんな事実はありません。また夜空の星の見え方も変わりますが、星座早見盤を使えばすぐ分かるように夜空の星の見え方にも変化はありません。

Q12 「地球は空洞で中心に太陽があって地底人が住んでいるそうです。北極と南極には大きな穴があって、オーロラは地球内部の太陽の光が漏れて起こるという話です」(男性/20代)

A12 :地球が空洞だという説は何度か唱えられたことがありますが、現在では否定されています。まず地底人についてですが、仮に地球がボールのような天体だとしても、私達の立っている地面の裏側に地底人と呼ばれるような存在が立つのは無理です。2階の床に人は立てても、その裏側の1階の天井に立てないのと同じです。「遠心力が働くから立てる」という意見もあるようですが、地球の自転による遠心力は地球の重力と比べれば遥かに小さいので遠心力によって地面の裏側に立つことは出来ません。もし自転による遠心力で立てるのなら、1階の天井にも立てないと理屈が合いません。次に空洞の地球の中にある太陽という話ですが、直径で言うと私たちの太陽は地球の1倍の大きさがあります。木星はしばしば「太陽になり損ねた惑星」と言われますが、木星は地球の10倍程の大きさです。地球の10倍程度では中心部で核融合反応が起きないので太陽(恒星)にはなれないという事です。地球の中にある以上、地球より小さいのは確実ですから、その太陽なるものは核融合反応を起こして光ることは出来ません。自ら光を発しない以上、それを太陽と呼ぶのは不合理でしょう。さらに、地震波の観測によって地球の内部が空洞でないことは分かっています。オーロラは太陽(地球の外にある太陽です)から噴き出している太陽風というプラズマの流れが地球の磁気圏に入り込み、大気中の粒子と衝突する事で起こる現象です(発光の原理そのものはネオンサインと同じです)。

Q13 「北回帰線とか南回帰線って、聞いたことはありますけど、要するに何なのですか?」(男性/30代)

A13 :地球の自転軸は、公転面に立てた垂線に対して約23.5度傾いています。その為、太陽の光が地表に対して垂直に当たるところは地球の公転にともなって1年の周期で変化します。夏至の日に太陽が頭の真上(太陽の南中高度が90度)になるところを北回帰線といい、冬至の日に太陽が頭の真上(太陽の南中高度が90度)になるところを南回帰線といいます。北回帰線の上にあるところでは夏至の日に、南回帰線の上にあるところでは冬至の日に影が真下にできるので見えなくなります。北回帰線や南回帰線より赤道に近い地帯が熱帯地方とされます。日本の近くだと、台湾(中華民国)の東部にある嘉儀市と西部にある静浦村とを結ぶ線がちょうど北回帰線になっています。つまり、台湾のこの線より南の地域は熱帯で北の地域は亜熱帯ということです。

Q14 「コペルニクスが地球が太陽の周りを回っていると発見したのはどうしてですか? 地球が動いている実感なんかないのにどうして分かったのか不思議です」(男性/60代)

A14 :科学史家のトマス・クーンは、カトリックの司祭でもあったコペルニクスが太陽中心説を唱えたのは当時流行していたネオプラトン主義の影響ではないかと述べています。「コペルニクスは地動説を唱えた」とされますが、彼の場合、地球が動いているかどうかではなく、宇宙の中心が地球ではなく太陽だというところにポイントがありました。コペルニクスの死後に発表された『天球の回転について』では、「万物の中心には間違いなく太陽が静止している。というのも、誰が、この最高に美しい寺院[宇宙]において、このランプ[太陽]を、そこからすべてを同時に照らし出すことができる場所[宇宙の中心]以外のより良い場所に置くことができようか。実際、太陽は、「宇宙のランプ」、「宇宙の心」、「宇宙の支配者」と呼ばれるが、そうした呼称は不適切ではない。ヘルメス・トリスメギストスは太陽を「目に見える神」と呼び、ソポクレスの『エレクトラ』は「すべてを見渡す者」と呼んでいる。かくして太陽は、実に王座に座るかのごとく、その周りを回転する惑星の家族を支配するのである」などと述べており、観察事実がどうこうではなく、太陽が宇宙の中心にあるべきだという宗教的ともいえる信念に基づいた主張だといえます。天動説と地動説については、「天動説では惑星の逆行などの現象をたくさんの周転円を組み合わせて説明しなければならなかったが、地動説ではそうした現象が簡単に説明できた」などと言われることがしばしばありますが、それ程単純な話ではありません。コペルニクスは惑星の軌道は円軌道だと信じており、観測結果と合うようにするにはコペルニクスのモデルでもやはり周転円が必要でした(多少は周転円の数を減らせたようですが)。惑星の軌道が円軌道ではなく楕円軌道だと発見したのは、ティコ・ブラーエの残した膨大な観測データに基づいて10年以上かけて計算したヨハネス・ケプラーでした。また、自作の望遠鏡で初めて天体観測を行ったガリレオ・ガリレイは金星の満ち欠けや見た目の大きさの変化を発見し、コペルニクスの地動説(太陽中心説)への確信を深めたといいます。

Q15 「今度、うるう秒というのがあるそうですけど、どういうものなんですか? うるう年と関係あるんですか?」(男性/20代)

A15 :まず、うるう秒はうるう年とは関係ありません。うるう年は地球の公転周期が365日丁度ではなく、1年につき約4分の1日分だけ余るので、この余りの分を4年に1度1年を366日とすることで解消しようとするものです。一方、うるう秒は1日の長さが一定ではないことから起きる問題への対処法の1つです。1日は24時間、1時間は60分、1分は60秒と定められていますから、1日は24×60×60=86400(秒)のはずです。つまり、1日の86400分の1が1秒となるべきなのですが、1日の長さというのはいろいろな原因によって長くなったり短くなったりするのです。非常に長い時間で考えれば、地球の自転は月の潮汐力の影響を受けて月の公転速度と一致するところまで遅くなっていくと考えられていますが、ごく短い期間で見ていくと速くなることもあります。1967年に国際度量衡総会において定義されたいまの1秒というのはセシウム原子時計(誤差は3000万年で1秒)で定められており、地球の自転とは実は何の関係もありません。当時、地球の自転に基づく1日の長さとして1820年頃の数値を使っており、それとつじつまが合うように1秒を定義したのですが、自転の速度が一定ではないため、ズレがどんどん溜まってきたのです。もし、今のペースで溜まっていくズレをそのままにしておくと、計算では11万8000年ほど先には夜と昼が逆転してしまいます。そこで、ズレを解消するためにこれまで何度かうるう秒が挿入されてきたのですが、コンピュータのプログラムなどでは余分な1秒が入ることで誤動作するといった事態も起きており、「この際、うるう秒を廃止した方がいいのではないか?」との議論もあります。

Q16 「地球が自転しているのは知っていますが、証拠は何ですか? 友だちに訊いたら『夜空の星がぐるぐる回ってるから』といわれましたけど、それって地球が止まっていて星の方が回っていてもそう見えますよね?」(男性/10代)

A16 :仰る通り、夜空の星が回って見える(日周運動)だけでは地球の自転の証明にはなりません。地球の自転を証明する簡単な方法は、フーコーの振り子を使うものです。十分長いひもに重石をつけて振り子にします。振り子には慣性が作用するので、外から力を加えない限り、そのままの振り子運動を続けるはずです。しかし、実際には振り子の振動面はどんどん動いていきます。変わらないはずの振動面が動くのは、何か力が働いているからだと考えられます。この力がコリオリの力であり、地球の自転による見かけ上の転向力です。19世紀のフランスの物理学研究者レオン・フーコーはコリオリの力を利用して地球の自転を誰にもはっきりわかる形で証明しました。ちなみに、赤道でこの実験を行うと、振り子の振動面は動きません。また、北半球では右回り、南半球では左回りに振動面は動いていきます。これは地球が北極上空から見たとき、時計と反対方向に回転(左回り)しているからです。

※反射望遠鏡に用いる反射鏡の表面形状を精密に検査する方法を「フーコー・テスト」といいますが、あの検査法はパリ天文台の技師であったフーコーが考案したものです。また、フーコーは光速度を精密に測定しています。その他、フーコーの作った反射望遠鏡の主鏡はマルセイユ天文台の望遠鏡に使われて、ステファンの5つ子(ペガスス座の方角に見える近接した5つの銀河)の発見に貢献しました。

Q17 「地震って地球にしかないんですよね?」(男性/20代)

A17 :いいえ、月にも地震があります。月震(ムーンクェイク)とも呼ばれます。太陽系の惑星の衛星にも地震が起きているかも知れませんが、地震計が設置されているのは今のところアポロが着陸した月だけです。最初のアポロ11号が設置した地震計は保温カバーがなかったので1か月ほどで動作しなくなりました。12号・14号・15号・16号はその反省を踏まえて保温カバーをつけた地震計を設置しました(最後のアポロ17号は地震計ではなく重力測定装置を設置しました)。これらの地震計は1977年まで8年10か月に渡って月の地震を観測し、データを地球に送りました。その間、1万2500回ほどの地震が観測されています。そのうち、4分の1に当る約3000回の地震については月の公転周期や秤動周期などと相関が見られるので、地球や太陽の潮汐が原因ではないかと考えられています。

Q18 「スノーボールアースって何ですか?」(男性/10代)

A18 :スノーボールは雪玉、アースは地球のことですね。全球凍結などとも呼ばれますが、地球全体が今の南極大陸のように雪と氷で覆われていたという説を「スノーボールアース」仮説といいます。かつては「地球全体が凍り付いたことはない」とされていました。なぜなら、いったん地球全体が凍り付いてしまうと、真っ白な雪と氷が太陽の光の大半を反射してしまいますます気温が下がっていくので、再び融けることがないと考えられたからです。つまり、過去に地球全体が凍っていたとしたら今でも凍っているはずなので、「いま凍っていない以上、過去に凍ったことはない」という理屈です。しかし、地質学的な調査によって赤道付近も含めて地球全体が凍り付いていたという証拠が見つかりました。そこで、どのような仕組みで凍った地球が再び暖かくなったのかを考えて、火山活動によって大気中の二酸化炭素などの濃度が増えて温室効果が強まったことで地球の平均気温が上がり氷が融けたのだろうとされました。温暖な状態の地球では、火山活動で大気中に放出された二酸化炭素などは海水に溶け込んで炭酸塩の形で蓄えられるので大気中にそのまま残るのはごく一部なのですが、地球全体が凍り付いていれば海水に溶け込むことができないので、火山から放出された二酸化炭素はそのまま大気中に留まり強力な温室効果をもたらしたと考えられます。その後、地質学的な調査によってそうした仕組みが働いた証拠が次々と見つかったことで、今日ではスノーボールアースからどうやって温暖な地球に戻ったかについての有力な仮説となっています。

Q19 「白夜のときは太陽が1日中沈まないんですよね?太陽の動きはどうなるのですか?また日本だと朝東から昇った太陽が夕方西に沈んでいきますけど、昇ったり沈んだりしないって事ですよね?」(女性/30代)

A19 :南極や北極は半年が白夜(太陽が1日中出たまま)で半年が極夜(太陽が1日中出て来ない)です。白夜のときは仰るように太陽が昇る事も沈む事もありません。具体的には、地平線の上を水平に転がるように動いていきます。別の言い方をすれば、北極点や南極点ではどの方向を見ても南や北なのですが、地平線に沿って360度ぐるっと太陽が動いていくわけです。なお、北極と南極では太陽が動いていく向きが逆になります(北極では「左から右」で南極では「右から左」)。


~図4(地球) 北極での白夜のときの太陽の動き~

Q20 「なぜ白夜のとき太陽は止まって見えるのですか? 地球の自転が鈍くなるからですか?」(男性/10代)

A20 :白夜のときにも太陽は止まっては見えません。動いています。北極圏や南極圏で見られる白夜というのは、1日中太陽が地平線の下に沈まずに地平線より上に見える、つまり、1日中昼間だということであり、太陽が空のどこかで止まって見えるわけではありません。地平線の上を転がるように移動して東西南北をぐるっと1周します。地球の自転は23時間54分程で1回です。これは北極圏や南極圏でも赤道でも地球上であればどこでも同じです。

Q21 「地球がどうして動いているのか分かりません。地球って自転も公転も何をきっかけに回り出したんですか?」(女性/20代)

A21 :地球が今の姿で出来上がった後に、止まっていた地球に何かの力が働いて動き出したのではありません。大きな渦巻をイメージしてください。宇宙を漂っていたガスが集まって円盤のような大きな渦巻が出来ました。その渦巻の中心に太陽が出来、周りに小さな惑星が出来ました。それらの小さな惑星がお互いに衝突を繰り返して大きく成長し、水星や金星や地球や火星などの惑星が出来たのです。地球は現在の姿になる前のでき始めたときから、言い換えれば、そもそもの最初から動いていたのです。

Q22 「地球の自転は時計回りですが、これが突然反時計回りになったらどうなりますか?」(男性/20代)

A22 :北極上空から見れば地球の自転は西から東へと回る反時計回り(左回り)です。時計回り(右回り)ではありません。地球の自転が逆転する可能性があるのは巨大な隕石が衝突した場合などですが、そうした状況では自転の向きに関わりなく、大災害が起きていますから人間も含めて地球上の生物はほぼ絶滅するでしょう。ここのA10も参考にしてください。なお、「磁場が反転して自転の向きが逆になる」という話もネット上では流布されているようですが、地球の歴史の中で磁場の反転は何度も繰り返されてきましたが、自転の向きが逆になったことは一度もありません。

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Q1. 「木星は地球からどれぐらいの距離離れていますか? 50光年ぐらいですか?」(男性/20代)

A1:最短で光の速さで35分ぐらい離れています。木星は太陽から光の速さで約43分の距離にあります。一方、地球は太陽から約8分(8分17秒~19秒)の距離(これを1天文単位といいます)にありますから、木星と地球が太陽から見て同じ方向にあるときは最短で43-8=35(分)の距離になります。なお、仮に光速に近い速度が出せる宇宙船があったとしても、加速や減速の過程があるので、地球から35分で木星に行くのは難しいでしょう。

Q2. 「星座の描いてある紙を見ても、火星とか木星は載っていないのはどうしてですか?」(女性/70代)

A2:火星や木星などは地球と同じく太陽の周りを回っている惑星です。惑星の『惑』というのは『戸惑う』とか『うろうろする』という意味がありますが、火星や木星などの惑星は星座の間をあちこち動き回って見えるので、星座早見盤などには載っていません。例えば、2015年でしたら、木星はかに座のところに来ていますが、去年はふたご座に、その前はおうし座にありました。月や太陽もやはり星座の間を動き回って見えるので載っていないのです。

Q3. 「赤い星ほど温度が低いといわれますが、そうだとすると火星はものすごく寒いのですか?」(男性/20代)

A3:火星は確かに地球より寒い惑星ですが、『赤い星ほど温度が低い』という話は太陽のように自ら光を放っている星、すなわち恒星についての話ですので、地球や火星のように太陽の光を受けて光っている惑星には当てはまりません。恒星の場合、おおいぬ座のシリウスやおとめ座のスピカのように青白い星ほど高温でオリオン座のベテルギウスやさそり座のアンタレスのように赤っぽい星ほど低温です。火星が赤いのは大地が赤さびに覆われているからです。

Q4. 「木星は木でできているわけでもないのに、なぜ木星というのですか?」(男性/20代)

A4:ヨーロッパでは木星のことは『ジュピター』と呼んでいて、これは古代ローマの神ユピテル(古代ギリシアの神ゼウス)にちなんだもので、『木』という意味は全くありません。水星、金星、火星、木星、土星の『水金火木土』は、『万物は木火土金水という五つの要素により成り立つ』とする古代中国の陰陽五行説に基づくものです。

Q5. 「土星は英語ではサタンというそうですが、サタンって悪魔のことですよね? 土星は悪魔の星なんですか?」(男性/20代)

A5:土星は悪魔の星ではありません。土星は英語ではサターン(Saturn)ですが、元々はローマ神話の農耕の神サトゥルヌス(Saturnus)から来た言葉です。悪魔という意味のサタン(Satan)とは何の関係もありません。NASAが開発したサターンロケットというロケットももちろん悪魔とは関係ありません(先代のロケットがジュピター[木星]だったので、「木星の次は土星だろう」と命名しただけとのことです)。

Q6. 「木星や土星はガスの惑星だそうですが、マッチで火をつけたら燃えますか?」(男性/20代)

A6:燃えません。ものが燃えるには酸素が必要ですが、木星や土星の大気はほとんどが水素とヘリウムで酸素がないからです。仮に、マッチではなく水素爆弾を爆発させたとしても、連鎖的に核融合反応が起きて木星や土星が太陽のように光り輝くことはありません。木星はしばしば『太陽になり損ねた惑星』と言われますが、今より100倍ぐらい質量があったら第二の太陽になり得たという話です。なお、ヘリウムは不活性元素ですので酸素がある地球上でも通常燃えません。

Q7. 「明けの明星(明け方見える金星)は西の空に見えますか?」(男性/50代)

A7:見えません。明けの明星が見えるのは東の空です。西の空に見えるのは宵(よい)の明星です。明けの明星は太陽より先に昇ってきますが、太陽が昇ってくると光にかき消されてしまい見えなくなります。宵の明星は太陽が沈んだ後に沈んで見えなくなります。月もそうですが、金星も太陽に照らされている側が光るので、明けの明星は左下が光り、宵の明星は右下が光ります。

Q8. 「太陽を挟んで地球と点対称の位置に地球とそっくりな惑星(反地球)があるという話を聞きました。反地球は本当にあるのですか?」(男性/20代)

A8:反地球(対地球)というアイディア自体は古代ギリシアの時代からあり、SF作品などでもしばしば取り上げられますが、現代の天文学では存在を否定されています。太陽を挟んで地球と反対側にあれば確かに目で見ることはできないでしょうが、地球とそっくり同じ大きさの惑星があれば、当然その引力の影響が他の惑星や彗星の軌道などに出ますから、『反対側に何かある』ということは計算でわかります。また、軌道修正のできない自然にできた天体の場合、長期に渡って太陽を挟んで地球と点対称の位置に留まることは無理でやがては位置がずれてしまい地球から見えます。

Q9. 「火星の人面岩はどこにあるのですか? 望遠鏡で見えますか?」(男性/20代)

A9:いわゆる人面岩(人の顔のように見える岩)は火星のシドニア地区と呼ばれるところにあります。1976年にバイキング1号が撮影した写真の中から「人の顔のように見える面白い岩」としてNASAが紹介した人面岩は長さ3km、幅1.5kmありますが、地球と火星との距離は最も近づいたときでも5600万km位であり、38万km離れている月と比べてもはるかに遠くにあるので、大型の望遠鏡を使ってもさすがに見るのは無理です。そもそも、人面岩は岩に当った太陽光線が作った影で人の顔のように見えたのであり、仮に望遠鏡で岩が見えたとしても影がバイキング1号で撮影したときと同じようにできているという保証はありません。

Q10. 「冥王星が惑星ではなくなったそうですが、どうしてですか?」(男性/10代)

A10:これまで曖昧だった惑星の定義がはっきり定められ、その定義に冥王星が当てはまらなかったからです。冥王星は発見された当時は地球と同じか、少し小さいぐらいの大きさだと考えられていましたが、その後研究が進むと、月よりも小さいことが分かってきました。実際2003年に発見されたエリスという天体は冥王星より外側の軌道を回っていましたが大きさは冥王星より大きかったので、「冥王星が惑星だったらエリスだって10番目の惑星になってもいいはずだ」という声が高まりました。しかし、エリスのような天体は今後も見つかる可能性があることなどから、「そもそも惑星とは何か?」という議論が天文学者の間で起き、2006年8月の国際天文学連合の総会で冥王星もエリスも「準惑星(ドワーフ・プラネット)」と位置付けられました。

Q11. 「土星の環(わ)は何でできているのですか?」(男性/40代)

A11:土星の環の正体は氷の粒です。数cmから数mの大きさの氷の粒が秒速10km以上の速度で回転しています。

Q12. 「土星の環はどうやってできたのですか?」(男性/30代)

A12:有力なのは、土星の衛星が壊れてその破片が環になったという説です。大昔に彗星などが土星の衛星に衝突し、そのショックで衛星が土星に近づきすぎて(ロッシュの限界を超えて)形を保てなくなり、粉々に砕けて飛び散り環になったと考えられています。

Q13. 「土星の環の中に衛星があるという話を聞きましたが、望遠鏡で見えますか?」(男性/50代)

A13:残念ながら見えません。土星の環の中には確かに小さな衛星がありますが、大きさはせいぜい百m程度なのでさすがに地球から望遠鏡で確認するのは無理です。土星の衛星は現在までに60個以上見つかっていますが、望遠鏡で見ることができるのはタイタンやレアなど環よりも外側の大きな衛星です。

Q14. 「土星の環は誰が発見したのですか?」(男性/小学生)

A14:土星の環を環だと初めて認識したのはオランダのクリスティアーン・ホイヘンスだというのが最も有力な説です。土星を望遠鏡で初めて観察したのはイタリアのガリレオ・ガリレイです。1610年のことでした。しかし、ガリレオが自作した望遠鏡は倍率が20倍程度だったので、見えているものが環だとわからずに「土星は3つの星がぴったり一直線に並んでいて、真ん中の星は両脇の星の3倍の大きさだ」と述べています。「土星には耳がある」ともいっています。ガリレオが土星を観察している間に、土星の環が地球から見てちょうど真横の向きになって見えなくなるという現象が起きました(土星の環は平均すると100m以下の厚みしかありません)。さらに観察を続けていると、また環が見えるようになったのでガリレオは大いに悩んだようです。ガリレオから45年後の1655年にホイヘンスが倍率50倍の自作の望遠鏡で土星を観察し、「土星には環がある」と述べました。さらに、1675年にイタリア出身のジョバンニ・カッシーニは環に隙間(すきま)があることを発見しました。

Q15. 「土星の環(わ)が消えることがあるそうですが、本当ですか? また、どうしてなくなるのですか?」(男性/30代)

A15:はい、土星の環は見えなくなります。土星は太陽の周りをおよそ30年程かけて1周していますが、地球との位置関係で約15年に一度は環が真横に見えます。土星の環は平均すると100m以下の厚みしかないので、真横からだとほとんど見えなくなります。これを環の消失といいます。最近環が真横に来て見えなくなったのは、2009年でした。次回は2025年となります。

Q16. 「土星以外の惑星には環はないのですか?」(男性/小学生)

A16:いいえ、海王星や天王星、木星にも環はあります。ただし、望遠鏡ではっきりわかるような環を持っている太陽系の惑星は土星だけです。

Q17. 「惑星の見える時期と場所を教えてください」(女性/60代)

A17:惑星の見える時期や場所(方角)は同じ日の同じ時間でも毎年違います。

Q18. 「木星はガスの星だから掃除機でガーッと吸ったらなくなりますか?」(男性/20代)

A18:無理です。掃除機の基本的な仕組みは送風機によって負圧を作り出してゴミを吸い取るというものです。こうした仕組みの掃除機は真空掃除機と呼ばれます。宇宙空間は真空ですから、真空掃除機で木星の大気を吸い出せるぐらいなら、とっくの昔に宇宙空間に吸い出されているはずです。しかし、実際には木星は存在するのですから、真空を利用して木星の大気を吸い出すことは出来ないと分かります。

Q19. 「中3です。理科で金星について勉強したのですが、金星が夕方見えるのに真夜中には見えないのはなぜですか?」(男性/10代)

A19:簡単にいえば、太陽の後を追って沈んでしまい地球の裏側で見えているからです。金星や水星は地球よりも太陽に近い軌道を回る内惑星です。明け方や夕方に金星は太陽の近くに見えますね。金星が太陽の近くにあるのは、明け方でも夕方でも真夜中でも変わりません。では、日本で真夜中のとき太陽はどこにいるのでしょうか? 地球の裏側、日本と反対に昼間になっている地域を照らしています。そのとき金星も近くにあるのですが、太陽が眩しすぎて分からないのです。
※望遠鏡を使えば昼間の金星もわかりますが、探しているときに太陽を誤って見てしまうかも知れないので探すのは止めましょう。何の対策もしない望遠鏡で太陽を見てしまえば、一瞬で目のタンパク質が高熱で変性して失明します。

Q20. 「夜半(よわ)の明星って何ですか? 明けの明星や宵の明星なら知ってますけど?」(女性/50代)

A20:木星のことです。明けの明星や宵の明星は金星のことですが、金星は太陽より先の昇ってきたり太陽の後を追って沈んだりするので夜中には見えません。夜中に見える明るい星ということで、木星が「夜半の明星」と呼ばれるのです。

Q21. 「惑星直列で地球に影響がありますか?」(男性/20代)

A21:ありません。まず、「惑星直列」という言葉は天文学の専門用語ではありませんし、明確な定義もありません。オカルト雑誌やSF映画の用語です。日食や月食のときのように、太陽系のすべての惑星が一直線上に並ぶというのを惑星直列と呼ぶのなら確率的にはほぼあり得ない現象です。太陽から見てある範囲に太陽系の惑星が集まることを惑星直列というのであれば、1982年の3月10日に起きましたが、地球には何の影響もありませんでした。そのときは水星から海王星までの惑星が太陽を中心とした中心角96度の範囲内に集まりました。次回は2161年の5月1日から34日間起きます。こうした惑星直列による重力の変化は地球と月の間の潮汐力と比べて数十万分の1程度なので、無視できるものです。なお、調べてみると2014年の12月に「2015年1月5日に惑星直列が起こって地球が5分間無重力状態になるとNASAが発表した」とTwitter上で話題になっていたようですが、何も起きなかったのはご存じの通りです。そもそも次回の惑星直列なるものは2161年ですし、NASAがそのような発表をしたという事実もありません。

Q22. 「火星には昔水があったそうですから、古代文明があったと思います」(女性/50代)

A22:火星にかつて水があって生き物が存在できたかも知れないということと、その生物が文明を築くような知的生命体であったということとはイコールではありません。火星の砂岩の分析から火星の地表にかつて存在した水は非常に塩分濃度が高く地球の生き物であれば到底生存できないレベルだったことがわかっています。むろん、そういった高濃度の塩水でも暮らせるような生物が火星にいた可能性は否定できませんが、そういった生物が文明を持てたかどうかは別の話です。火星には地球のような磁気圏がないことが証明されたので、火星の非常に希薄な大気には太陽風が直接吹き付けていたことがわかっています。そのため、仮に火星に生き物がいたとしたら、宇宙線によってDNAが損傷してしまう地表ではなく地下だったと考えられています。それを受けて、NASAでは火星のボーリング調査を行う予定です。なお、火星ではいまのところ生物の痕跡そのものは見つかっていません。

Q23. 「金星も月みたいに満ち欠けするそうですが、どうしてですか? 地球の影が映っているのですか?」(女性/50代)

A23:違います。金星は地球より太陽に近い軌道を回っている惑星(内惑星)ですので、金星に地球の影が映るということはありません。金星が満ち欠けするのは、月の満ち欠けと同じく太陽の光が当っている昼間の部分が光り、光が当たらない夜の部分が欠けて見えるからです。下の図を参考にしてください。

~図1(惑星) 金星の満ち欠け~

実際には地球も太陽の周りを回っていますが、面倒なので地球は停まった状態で図を描いています。金星が地球よりも左側にあるとき、地球からは金星の右側が光って見えます。金星の右側に太陽があるからです。これが宵の明星(よいのみょうじょう)で、夕方に見えます。逆に、金星が地球よりも右側にあるとき、地球からは金星の左側が光って見えます。金星の左側に太陽があるからです。これが明けの明星(あけのみょうじょう)で、明け方に見えます。金星が地球の真正面にあるときは見えません。地球から見て金星の裏側に太陽の光が当たっていて、地球を向いている側には太陽の光が当たらず夜になっているからです。金星が太陽を挟んで地球と反対側にあるとき、金星は満月のように見えます(太陽に隠されてしまわないのは公転軌道が傾いているからです)。なお地球に近づいたとき金星は大きく見え、遠ざかると小さく見えます。

Q24. 「いつ頃木星に住めますか?」(男性/20代)

A24:申し訳ありませんが、わかりかねます。近年、米国や中国・インドなどで有人火星探査について論じられることがありますが、木星は火星よりも遠く太陽から5天文単位(地球と太陽との距離の5倍)離れています。人間の身体は地球の重力を前提としていますから、木星に行くために宇宙船の中で長期間生活するのはかなり危険だといえます。例えば、骨の中のカルシウムが血液中に溶け出す恐れがあります。血中のカルシウム濃度が高まると、最悪の場合心臓が止まって死んでしまいます。無人探査機と違って、人間が行くとなるとそういった対策も当然必要ですからいろいろ大変です。仮に木星(の衛星)に有人探査で向かうとしたら、そうした対策がきちんと取れるようになってからでしょう。なお、木星は地球のような岩石でできた惑星ではなく水素とヘリウムを主成分とするガスの惑星です。したがって、木星に住むとしたら宇宙船で木星の大気中に浮かぶ(?)ことになります。木星のジェット気流は秒速100m(時速360km)ですし、磁場も平均で地球の14倍と強いので電子機器への影響も無視出来ません。ぷかぷか浮いているのんびりしたイメージとはほど遠いものです。そんな過酷な環境の木星にわざわざ住むメリットがあるかどうかは疑問です。

Q25. 「火星に移住できますか?」(男性/小学生)

A25:火星に人間(地球人)が行くことはできるかも知れませんが、ずっとそこに住めるかどうかは疑問です。火星の大気の98%は二酸化炭素ですからそのままでは呼吸できませんし、気圧も非常に低いので船外服(宇宙服)無しで暮らすのは無理です。仮に火星に基地を作って地球と同じ成分の空気を作り水や食料をどうにかすれば住めなくはないでしょう。しかし、火星の重力は地球の4割程度しかないので、火星で長い間生活したときに人間の身体にどういう影響が出るのかまだよくわかりません。地球の重力の下で進化してきた人間の身体が火星の小さな重力にきちんと順応できるかどうかで、人間が火星へ移住できるかどうかが決まるといえそうです。

Q26. 「金星は地軸がひっくり返っていて公転の向きと自転の向きが逆だと聞きました。ということは、金星で太陽を見ると西から昇って東へ沈むのですか?」(男性/40代)

A26:はい、そうなります。もっとも、金星は分厚い雲に覆われているので金星の大地に降り立っても実際には太陽が見えることはないでしょう。金星は90気圧で地表面の温度も400℃を超え、米ソが送り込んだ無人探査機もすぐに壊れてしまったほど過酷な環境ですから有人探査が行われる可能性は低いと思われます。なお、地球でもオーストラリアなど南半球に行くと、東から昇った太陽が北を通って西に沈むので北を向いて立つと、右手の側から昇って左手の側に沈む太陽を見ることができます。北半球では南を向いて立つと、左手側から太陽が昇って右手側に沈みますから、ちょうど逆ですね。向いている方向が北か南かという点を無視すれば、金星の「西から昇って東へ沈む」太陽の雰囲気ぐらいは味わえるかも知れません。とはいえ、金星は自転が非常に遅い惑星で、公転周期は地球の1日=24時間でいえば225日なのですが、自転周期は243日となっています。つまり、金星では1年よりも1日の方が長いのです。何だか想像出来ませんね。ちなみに、金星より内側の軌道を回る水星では一旦昇った太陽が逆戻りして沈んでから再び昇るという奇妙な現象も起きます。

Q27. 「木星の赤い目玉みたいなのは何なのですか?」(男性/20代)

A27:赤い目玉のように見えるのは「大赤斑(だいせきはん)」です。1665年にジョバンニ・カッシーニ(土星の環のすき間の発見で有名)が発見しました。巨大な嵐の一種ですが、台風の目に当るものが見当たらないので高気圧性の渦だと考えられています。1714年~1830年は観測されなかったので、この間は消失していた可能性があります。実際、19世紀後半には大きさが4万kmもありましたが、2014年のハッブル宇宙望遠鏡の観測では1万6,500kmにまで縮小しており、「そう遠くない将来消滅してしまうだろう」との見方も出ています。大きさだけではなく、大赤斑の形そのものも変化していて、以前は楕円形でしたが、最近では円に近くなっています。

Q28. 「大赤斑の真下には巨大な火山があるのですか?」(男性/20代)

A28:木星はガス惑星ですから地面もなく火山などはありません。大赤斑そのものが木星の自転とは別に東西方向へ移動しますから、真下に火山があるとなると火山そのものが移動することになりおかしな話になるでしょう。地球のプレートと同じようなメカニズムで大赤斑の動きを説明するのは速度の面から見て無理です。また、火山の噴煙が風に流されているとしたら、「真下に火山がある」という最初のお話と矛盾してくるでしょう。

Q29. 「金星は木星の火山から生まれたのですか?」(男性/20代)

A29:いいえ。Q28でも述べたように木星に火山はありません。火山が存在しない以上、そこから金星が誕生することはあり得ません。金星云々以前にまず木星に火山があることを誰もが納得せざるを得ない形できちんと証明すべきでしょう。また、木星の重力から考えて金星程の質量の天体を宇宙空間に吹き飛ばすには太陽が1年間に放出するのと同じぐらいのエネルギーが必要です。これは私たちが知っている最大級の太陽フレアの1億倍もの膨大なエネルギーです。そんなエネルギーを持つ火山噴火はありません。仮に、それだけのエネルギーで金星を宇宙に放り出したとしたら、金星は高熱のために溶けて蒸発してしまうでしょうし、溶けずに残ったとしても今度は太陽系の外に飛び出してしまうでしょう。お話は恐らくイマヌエル・ヴェリコフスキーの『衝突する宇宙』(1950年)を踏まえたものだと思いますが、既に十分反論がなされているものです。例えば、アイザック・アシモフ『わが惑星、そは汝のもの』(ハヤカワ文庫NF,1979年)、マーチン・ガードナー『奇妙な論理 だまされやすさの研究』(現代教養文庫,1989年)、テレンス・ハインズ『ハインズ博士「超科学」をきる』(化学同人,1995年)、カール・セーガン『サイエンス・アドベンチャー』(新潮選書,1986年)などをご参照ください。

Q30. 「木星はガス惑星だから火山はないと言いますが、木星が空洞惑星だったら体積の割に軽いことの説明がつくと思います」(男性/20代)

A30:木星が空洞惑星だったら火山活動は起きないのではありませんか? ちなみに、木星は太陽輻射で受けるよりも多くの熱を放出していますから、熱源は木星の中にあります。中が空っぽの惑星だとすると熱源は何なのでしょうか?

Q31. 「会合周期の計算のやり方を教えてください。例えば、木星と土星だったらどうなりますか?」(男性/10代)

A31:せっかくですから、計算のやり方だけではなく、どうしてそういう式になるのかも見ておきましょう。まず、会合周期というのは惑星が合や衝のときから次に合や衝となるときまでの期間をいいます。図2は太陽・地球・惑星を公転軌道の真上から見たイメージです。最初に地球より外側の軌道を回る外惑星(火星・木星・土星・天王星・海王星)を考えますが、太陽と地球を通るように引いた直線の上に外惑星が来るところが2つあるのはおわかりですね。外惑星-太陽-地球と並ぶときが合、太陽-地球-外惑星と並ぶときが衝です。地球より内側の軌道を回る内惑星(水星・金星)の場合、当然ながら衝はありません。その代り、太陽-内惑星-地球と並ぶときを内合、内惑星-太陽-地球と並ぶときを外合と呼びます。

~図2(惑星) 合と衝~

以上を踏まえてお話しますが、例として学校をグラウンドを思い浮かべてください。1周300m程の円形のトラックをA君とB君の2人が走ります。A君は1周するのに2分かかり、B君は1周するのに3分掛かるとしましょう。ヨーイドンでスタートラインから同時に2人が走り出したとき、A君の方が走るのが速いので後ろを走るB君をどこかの時点で追い抜くことは想像出来ますか? ではいつ追い抜くのでしょうか? A君の走る速さは毎分150m(300mを2分で割ります)、B君の走る速さは毎分100m(300mを3分で割ります)ですから、1分につきA君はB君よりも50m(150-100=50)余分に走ることになりますね。A君がB君を追い抜くということは、A君がB君よりもトラックを1周余分に走るということですから、1周300mのトラックだと、300÷50=6(分)かかります。つまり、スタートしてから6分後にA君はB君を追い抜くわけです。以後、2人が走り続けたとすれば、A君は6分毎にB君を追い抜きます(以上は中学受験に登場する旅人算の一種です)。随分遠回りになりましたが、木星は太陽系を1周するのに12年掛かり、土星は30年掛かります。土星の方が木星よりも外側の軌道を回っていますから、同じ距離のトラックを走ったときとは少し違いますが、地球から同じ位置に見えればよいので同じように考えても問題ありません。1年で見ると木星の速さは1/12、土星の速さは1/30ですから、速さの差は(1/12)-(1/30)で求められます。分母を揃えて計算すると、1/20となります。これが会合周期の逆数になるので、20年が地球から見たときの木星と土星の会合周期です。「木星と土星の会合周期が20年」ということは、ある年のあるときに、木星と土星が寄り添うように非常に近くに見えたら、その20年後にまた同じように見えるということです。

Q32. 「金星が西の空に見えていたのにいつの間にか見えなくなって、次はいつ見えるんだろうと毎日観察していましたがなかなか見えなくて最近(2015年春)ようやく見えるようになりました。どれくらい経ったらまた西の空で見えるようになるんですか?」(女性/60代)

A32:答えから先に申し上げると、1年7か月後です。ご存じのように、金星は地球より内側の軌道通って太陽の周りを回っています。そのため、地球から見たとき太陽から大きく外れたところに金星が来ることはありません。肉眼でも見えるのは、夕方の西の空や明け方の東の空となります。望遠鏡を使えば昼間でも金星は見えますが、最大光度の頃は青空の中でも見えます。地球も金星も太陽の周りを回っていますが、1周するのに掛かる時間は違います。地球は約365日ですが、金星は約225日ですので、580日ほどで同じ位置関係になります。これを会合周期と呼んでいます。会合周期の考え方や具体的な計算方法については「太陽系の惑星についてのご質問」のA31もご参照ください。

Q33. 「木星のガスを吸ったらどうなりますか? 死にますか?」(男性/小学生)

A33:木星の大気の主な成分は水素が88%、ヘリウムが11%です。その他、ごくわずかにメタンやアンモニア、硫化水素なども含みます。水素とヘリウムについてはどちらも毒性はないので、吸ったからといって中毒を起こす心配はないでしょう。しかし、胸一杯に吸い込めば酸素が全く含まれていないので肺の組織が破裂して倒れてしまう恐れがあります。風船用のヘリウムを吸引して救急車で搬送されるという事故がときどきあります。パーティ用のジョークグッズ(吸引すると声が変わる)として販売されている濃度の低いヘリウムの代わりに風船用の高濃度のヘリウムを吸って事故を起こすのですが、あれはヘリウムの吸引によって酸欠(酸素欠乏症)になったからです。酸欠は場合によっては死亡、助かっても脳に重い後遺症が残ることもありますから大変危険です。

Q34. 「金星は水星よりも太陽から遠いのに気温は金星の方が高いそうですね。どうしてですか?」(女性/30代)

A34:金星には大気があるからです。惑星の表面温度というのは単純に太陽からの距離で決まるわけではありません。近いから暑くて、遠いから寒いというわけではないのです。水星は地球よりずっと小さく大気を太陽風で吹き飛ばされてしまったので、太陽の光が当たっている部分は非常に高温になりますが、陰の部分は逆に非常に低温となっています。一方、金星には分厚い大気があります。金星の大気はほとんどが二酸化炭素です。ご存じのように二酸化炭素は温室効果を持っています。温室効果が強力に働いているから、金星の表面温度は水星よりも高温になっているのです。なお、火星の大気の成分も金星とほぼ同じですが、火星の大気は非常に薄いので温室効果はほとんど働かず地球よりも寒くなっています。

Q35. 「星座早見盤に惑星が載っていないのは知っています。だったら、惑星が載っている『惑星早見盤』みたいなのはないんですか? ほうぼう探しているのに見つかりません」(男性/60代)

A35:星座早見盤と似たようなものとしては月齢早見盤というのがあるぐらいですね。月齢早見盤もある日の月齢を調べるだけです(月齢がわかれば、おおよその月の出や月の入の時刻もわかりますが)。惑星早見盤というのは聞いたことがありませんし、惑星の動きを考えても紙の円盤の上に惑星を描いて日時を合わせて回すことで惑星の位置がわかるようにするのは無理だと思います。パソコンが使える環境でしたら、天文シミュレーション・ソフトを利用されるのが惑星の位置を調べるには最も簡単な方法です。いくつか機能の制限がありますが、無料のものもあります。あるいは、ちょっと専門的になりますが、『天文年鑑』(誠文堂新光社)を調べるという方法もあります。木星のガリレオ衛星の位置などもわかります。藤井旭(ふじい・あきら)さんの『藤井旭の天文年鑑』(誠文堂新光社)はとても読みやすく惑星の位置以外にもさまざまな天文現象を扱っているのでおススメです。

Q36. 「以前、ある人から『宵の明星は金星だけど、明けの明星は火星だ』と説明されました。そのときは『へーっ』って思ったんですけど、よく考えたらどっちも金星のはずですよね?」(男性/30代)

A36:はい。宵の明星も明けの明星も金星です。金星は地球より太陽に近い軌道を回っているので、夕方や明け方の空の太陽に近いところで明るく輝きます。一方、火星は地球より太陽から遠い軌道を通っているので、火星が明るく見えるのは火星と太陽とを結ぶ線上に地球があるとき(この状態を「衝(しょう)」といいます)です。地球から見て、太陽と反対側にあるわけですから、衝のときの火星は満月と同じように日没の頃昇ってきて真夜中に南中し明け方に沈みます。なお、「夜半(よわ)の明星」は金星ではなく木星のことです。太陽に近い軌道を回る金星は夜中には見えません。

Q37. 「冥王星は太陽系の惑星ではなくなったそうですけど、どこに行ったのですか? 爆発でもして消えたのですか?」(女性/20代)

A37:冥王星が惑星ではなくなったというのは、それまで曖昧なままだった惑星の定義がきちんと決められて、その定義に冥王星が当てはまらなかったので、準惑星(ドワーフ・プラネット)に降格されたということです。冥王星そのものが軌道を外れて太陽系からどこかへ移動したとか、まして爆発などを起こして消滅したという話ではありません。

Q38. 「冥王星にはハート型の模様があるそうですね。肉眼では無理でしょうけど、3万円ぐらいの望遠鏡を買ったら見えますか?」(男性/20代)

A38:無理だと思います。冥王星は14等級と非常に暗いので、口径が30cm位ある望遠鏡でなければ見えません。それぐらいの望遠鏡でも、冥王星はただの点にしか観えず、ハート型の模様などは確認出来ません。3万円台の望遠鏡だと、口径はせいぜい8cmぐらいでしょうか? 口径8cm(80mm)だと、分解能は1.45秒、極限等級は11.3等なので、せいぜい木星の2本の縞模様の濃淡や大赤斑が分かる程度です。地球の11倍の大きさがあり、地球から光の速さで35分位の木星でもこれ位しか見えませんから、地球の4分の1の月よりも小さく光の速さで4時間半もかかる場所にある冥王星のハート型の模様が見えるということはあり得ません。

Q39. 「冥王星の衛星カロンは冥王星の直径の半分ぐらいあるそうですね。それぐらい大きいと、二重惑星っていうんですか? そう呼んだ方がいいんじゃないかと思うんですけど?」(男性/30代)

A39:二重惑星の定義がはっきりしていないので、何ともいえません。ご指摘のように、冥王星の衛星カロンの直径は冥王星の約半分です。しかし、質量でみると、7:1です。「衛星か二重惑星(惑星の連星系)か」をわける基準として唱えられているものはいくつかありますが、どれも決め手を欠いているというのが正直なところです。例えば、「大きさが似通っていたら二重惑星」とか「質量が似通っていたら二重惑星」といった基準もあるわけですが、具体的にどれぐらいなら「似通っている」といえるのか定量的にはっきりしません。また、「2つの星の共有重心がどちらかの星の中にあれば衛星で外に(宇宙空間に)あれば二重惑星」という基準もあります。これだと、「似ている似ていない」という曖昧さはなくなりますが、質量は同じでも密度が高くて直径が小さい星だと、共有重心がその星の中におさまらずに宇宙空間に出てしまうといった事態も起き得ます。月は地球から毎年3~4cmずつ遠ざかっていますが、このままだと現在地球の中におさまっている共有重心がある時点で宇宙空間に出てしまうかも知れません。そうなったとき、それまで地球の衛星だった月が二重惑星の1つになるわけですが、これも奇妙なものです。なお、冥王星の場合、衛星はカロンだけではなく、他にもヒドラ、ニュクス、ケルベロス、ステュクス(名前はいずれも、ギリシア神話で冥府に関係する神々や怪物にちなんだものです)が見つかっていますから、「2重」(準)惑星ではなく、「多重」(準)惑星になるでしょうから、さらに面倒な話になりそうです。

Q40. 「火星には月(衛星)が2つあるそうですが、火星に降り立って夜空を見上げたらどんな風に見えるんですか?」(男性/10代)

A40:はい、火星にはフォボスとデイモス(ダイモス)という衛星があります。名前はギリシア神話に登場する軍神アレス(火星)の息子たちから取られています。命名したのは、発見者である米国の天文学者アサフ・ホールです。火星と何の関係もない小惑星がたまたま火星の引力圏に捕まえられて衛星となったと考えられています。大きさは地球の月(直径3476km)よりずっと小さくて、ジャガイモのような形をしています。直径の平均は、内側の軌道(火星の地表から約6,200km)を回るフォボスで22km程、外側の軌道(火星の地表から約2万km)を回るデイモスで13km程です。フォボスにはクレーターが沢山ありますが、デイモスはつるんとした外観です。フォボスの軌道は静止軌道よりも内側なので徐々に火星に落下しつつあります。1億年以内には火星の表面に激突するか潮汐力によって空中でバラバラに砕け散るだろうと予想されています。火星の1日は24時間40分ほどですが、フォボスの公転周期は7時間40分なので、フォボスは1日2回西から昇って空の低いところを通って東へ沈みます。一方、デイモスの公転周期は30時間17分程ですから、火星で1日経過してもまだ沈みません。デイモスは地球の月と同じように、東から昇って西に沈みます。フォボスは月よりずっと小さいのですが、月が地球から38万kmも離れているのに対してフォボスは火星から約6,200kmと非常に近くにあるので、地上からの見た目では最大で月の3分の2位に見える計算です。デイモスの方はかなり小さく見えます。フォボスは火星に近い軌道を回っているので、頻繁に太陽の前を横切ります。地球の場合、月が太陽の前を横切れば日食ですが、月以外の天体の場合は太陽面通過(日面通過)と呼びます。フォボスの太陽面通過は30秒程で終わります。

Q41. 「水星と金星が同時に見えるときは、必ず同じ方角にありますか?」(男性/20代)

A41:同時に見えるときならそうなります。水星も金星も、地球より太陽に近い内側の軌道を回る内惑星です。内惑星は地球から見たとき、太陽の周囲に見えますから、両方が同時に見えているなら、必ず太陽のある方角となります。金星が西の空に輝いていて、同じ時刻に水星が東の空で輝いているといったことはあり得ないわけです。ただ、例えば、西の空を見たとき、水星が太陽の西側(右下)に、金星が東側(左上)にあるような場合、水星は太陽が沈む前に沈んでしまい、日没後、暗くなってからだと金星しか見えないといったことは起こります。位置としては、水星が太陽の近くにあることに違いないのですが、水星が地平線より上にある時刻には太陽がまだ沈んでおらずまぶしくて見えないのです。そういった位置関係にあれば、日の出前には東の空に水星が見えているが、金星は見えていないといったことも起こります。その場合でも、位置を確認した上で望遠鏡を使えば日没前の水星や日の出後の金星を見ることはできますが、肉眼だと「金星は夕方西の空に見えて、水星は明け方東の空に見える」といったこともあり得るわけです。

~図3(惑星) 金星と水星の見え方~

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Q1「星座に詳しくなりたいのですが、たくさんあってなかなか覚えられません。何かいい方法はありますか?」(男性/10歳台)

A1:現在、星座は88あります。そのうち日本で全体が見えるのは50ぐらいですが、全部を一度に覚えようとしても大変でしょう。まずは、北極星の周囲の星座、それから春・夏・秋・冬の代表的な星座などを覚えていったらどうでしょうか? 『春おとめ、夏にはさそり、秋天馬、冬はオリオン、季節の星座』などと唱えて覚えてもいいでしょうが、星座の名前だけではなく、自分で描いてみたりして形も一緒に覚えるといいでしょう。その際は、おとめ座とかふたご座といった星座ごとに1つ1つ別々に覚えるのではなく、例えば、『5月下旬の南の空に見える星座』のようにまとまった集まりとして捉えた方がよいでしょう。それを踏まえて、実際に夜空を見上げて星座を探せば効果的だと思います。

Q2「星座の形はずっと変わらないのですか?」(男性/20歳台)

A2:百年にも満たないわたしたちの一生のうちに星座が形を変えることはないでしょう。しかし、数万年といった長い時間で考えれば、星座を形づくっている星々もそれぞれ動きます(固有運動)から、星座の形は変わります。例えば、オレンジ色をしたうしかい座のアルクトゥールスと純白に輝くおとめ座のスピカは「夫婦星(めおとぼし)」といわれますが、アルクトゥールスはスピカの方に猛烈なスピードで近づきつつあります。いまから5万年ほど経つと2つの星はすぐ隣に寄り添うように見えます。

Q3「オリオン座やふたご座といった冬の星座は冬にしか見えませんか?」(女性/30歳台)

A3:冬以外でも見えます。冬の星座というのは、『冬の空で見えやすい星座』というだけです。冬に見えないのは夏の星座です。冬には夏の星座は昼間出ているので太陽の光に邪魔されて見えません。一方、秋や春の星座は冬でも見えます。星座は北極星の辺りにある天の北極を中心に1時間に15度ずつ時計と反対向きに回転していますから、夕方から明け方まで空を眺めていれば、3つの季節の星座は見ることができます」

Q4「星座の本を何冊か読んでみましたが、星と星とを結んでいる線が本によって違います。どれが正しいのですか?」(女性/20歳台)

A4:どれも正しいといえます。国際天文学連合が1928年に『星座の科学的区画法』を発表して現在の88の星座が決められました。どこからどこまでが何座なのかという境界線は決まっているのですが、星座の星の結び方については『こう結びなさい』といった決まりはありません。星座の絵についても同様です。古星図の中にはかに座のかにの絵がどうみてもザリガニのように見えるものもありますが、あれも間違いとはいえないのです。

Q5:「いまは『みずがめ座の時代』なのですか?」(女性/30歳台)

A5:春分点がみずがめ座にあることを「みずがめ座の時代」と呼ぶのでしたら、違います。現在、春分点はうお座にあります。春分点がみずがめ座に来るのは500年ほど先のことです。
※春分点とは、黄道(天球における太陽の通り道)と天の赤道との2つの交点のうち黄道が南から北へ交わる点をいいます。この点を太陽が通る瞬間が春分です。春分点は黄道座標や天の赤道座標の原点となっています。なお、春分点は地球の歳差運動(コマのように首を振る運動)によって約2万6000年の周期で移動していきます。

Q6「以前、テレビ番組か何かで『エジプトのピラミッドに北極星が見える穴が開けてある』という話をやっていたような気がします。確か、『昔の北極星はいまとは別の星だった』みたいなこともいっていたと思うのですが、そうなのですか?」(男性/30歳台)

A6:はい、天の北極の近くに見える北極星は時代とともに変わっていきます。エジプトのギザにあるクフ王のピラミッド(通称「大ピラミッド」)の北側に作られた通路は驚くほど精巧に作られており、発掘当初から「北極星を指し示しているのではないか」といわれていました。英国の軍人ハワード・ヴァイスは1837年にピラミッドの大規模な発掘調査を行い、「通路の方向は当時見えていた北極星によって決められたのではないか?」という仮説を立てました。ヴァイスはその仮説について天文学者のジョン・ハーシェルに意見を求め、ハーシェルはヴァイスから提供された入口通路の勾配の数値に基づいて計算し、「ピラミッドが建てられた4000年ほど前にはりゅう座のアルファ星ツバーンが見えていたはずだ」と結論づけました。ピラミッドの入口通路が北極星を観察するための一種の望遠鏡のような役目を本当に果たしていたかどうかはわかりませんが、いまから5000年ほど前に天の北極に当るところにりゅう座のツバーンが輝いていたのは確かです。現在、北極星はこぐま座のポラリスですが、1万2000年後にはこと座のベガになり、2万6000年後には再びこぐま座のポラリスが北極星になると予測されています。北極星が交代するのは、コマが首を振りながら回転するのと同じように、地球の自転軸が2万6000年の周期で回転しているからです(この首振り運動を「歳差(さいさ)運動」といいます)。

Q7「一等星はいくつありますか?」(男性/小学生)

A7:21個あります。そのうち、4番目に明るいリギル・ケンタウルス(ケンタウルス座のα星)、10番目に明るいアケルナー(エリダヌス座のα星)、11番目に明るいハダル(ケンタウルス座のβ星)は日本では石垣島など南の方に行かないと見えません。ちなみに、最も明るいのはシリウス(おおいぬ座のα星)です。シリウスが明るいのは、地球から非常に近い(距離は8.6光年)ためであり、宇宙全体でみればシリウスが特別に明るい星というわけではありません。

Q8「2番目に明るい一等星は何という星ですか?」(男性/小学生)

A8:2番目に明るい一等星はカノープス(りゅうこつ座のα星)です。カノープスは南極老人星とも呼ばれ、見ると寿命が延びるともいわれる縁起のよい星ですが、日本では東北地方より南でないと地平線の上に姿を見せませんし、見えたとしてもかなり低いところにあるので街明かりなどに邪魔される可能性が高いといえます。

Q9「夏の大三角は直角三角形ですか? 二等辺三角形ですか? わたしが読んだ本には直角三角形と書いてありました。ネットで夏の大三角の写真を見ても直角三角形にしか見えないのですが、友だちは『二等辺三角形だ! 絶対そう見える!』といい張ります。どちらが正しいのですか?」(女性/10歳台)

A9:数学的に厳密にいえば、どちらも正しくありません。直角三角形という表現をする場合、ベガを頂点とする角を直角(90度)だとみているようですが、何枚かの写真で測って平均してみると90度より少し小さく85度前後です。一方、二等辺三角形という場合、両方の底角が等しいはずですが、ベガを頂点とする角は85度前後、デネブを頂点とする角は60度より少し小さいぐらい(58度前後)なので明らかに二等辺三角形でもありません。どちらかというと、直角三角形に近いといえるかも知れませんが、あとはその人の感じ方の問題です。

Q10「二等星はいくつあるのですか?」(女性/小学生)

A10:67個あります。三等星は190個、四等星は710個と増えていきます。街明かりのある場所では、晴れていてもせいぜい三等星ぐらまでしか見えないのではないでしょうか?

Q11「秋の大三角というのはあるのですか?」(女性/20歳台)

A11:ありません。冬・春・夏にはそれぞれ大三角と呼ばれる明るく目立つ3つの星がありますが、秋にはありません。その代わり、秋の大四辺形と呼ばれる4つの星が見られます。秋の大四辺形は、羽の生えたウマの姿をしたペガスス座の胴体を作る星たちです(お腹の部分の星は実はアンドロメダ座に属します)。

Q12「自分の誕生星座はいつ頃見えやすいのですか?」(女性/20歳台)

A12:大まかな目安としては、誕生日の3か月ぐらい前です。誕生日が秋なら星座が見えるのは夏、誕生日が冬なら星座が見えるのは秋というように、「1つ前の季節」と覚えておいてもよいでしょう。元々、誕生星座の○○座というのは「生まれた日に太陽がどの星座のところにあったか」(もう少し正確にいえば、星座ではなく春分点からスタートして黄道[こうどう:太陽の通り道]を12等分した12宮のどこに太陽が位置していたのか)という話です。つまり、その星座は昼間の空に太陽と一緒にあったわけですから、当然その日の夜には地平線の下に沈んでしまって見えません。例えば、誕生星座の「さそり座」は10月24日から11月22日とされていますが、20時頃にさそり座の全体が地平線の上に見えるのは7月初めから9月末ぐらいまでです。南の空で山やビルに隠されたり街の明かりに邪魔されずに見やすい時期となると、8月上旬から中旬でしょう。他の誕生星座の方も同様に「誕生日の3か月ぐらい前」とお考えください。

Q13「『カシオペア座』と『カシオペヤ座』、どっちの書き方が正しいのですか?」(男性/10歳台)

A13:教科書では「カシオペヤ座」とされているようです。学校のテストで答えるなら、「カシオペヤ座」としておいた方が安全でしょう(「カシオペア座」と書いて×になったという話も聞きますので)。”Cassiopeia”を日本語でどう書き表すかというだけの問題です(英語の発音を無理やりカタカナで表せば「キャシアピーァ」でしょうか? アクセントは「ピー」のところにあります)。ペガスス座、ヘルクレス座なども、天馬としてはペガサス、英雄としてはヘラクレスと書くのが一般的ですが、星座の名前としてはそれぞれ「ペガスス座」「ヘルクレス座」となります。

Q14「一番大きい星はおおいぬ座の何とかという星ですか? 望遠鏡で見たら大きく見えますか?」(女性/40歳台)

A14:直径が一番大きいといわれているのは、はくちょう座のV1489という星です。太陽の直径の1650倍あります。おおいぬ座のVYという星は少し前まで一番大きいといわれていましたが、最近の推計では1420倍で6番目に大きい星とされるようになりました。なお、おおいぬ座のVYにせよ、はくちょう座のV1489にせよ、地球から5000光年以上離れているので望遠鏡で見ても残念ながらただの点にしか見えません。

Q15「星座早見盤の使い方がよくわかりません。日付と時刻を合わせて頭の上にかざして見ればいいのはわかりましたが、経度の補正とかいうのが??? 小4の娘に質問されてお手上げです。ネットで調べてみましたが、どれもさらっと書いてあるだけです。こういうのは常識なんでしょうか? 一体どういう理屈なのか詳しく教えてください」(女性/30歳台)

A15:星座の見え方・見える時刻は見る場所によって違ってきます。地球が丸く、自転もしているからです。市販されている星座早見盤のほとんどは、日本の標準時子午線(東経135度)と重なる兵庫県明石市を基準として作られているので、明石市から離れた場所ほど、星座の見え方は変わってしまいます。星座は北極星の近くにある天の北極を中心として時計と反対方向に回転しています。明石市よりも東の街(例えば、東京)では星座は早く昇ってきますし、明石市よりも西の街(例えば、沖縄)では星座は遅く昇ってきます。
例えば、8月8日19時の星座の見え方を考えましょう。このとき、明石市ではほぼ真南にさそり座のアンタレスが見えているはずです。では、東京の空で同じように真南にアンタレスが見えているのはいつでしょうか? 東京は東経139度ぐらいですから、明石市との経度の差は4度です。星座は1年=365日で天球を一周する(360度回転する)ので、4/360の365倍で4.1日となり、東京では明石市よりも4日ほど前(つまり、8月4日)に同じ空を見ていたことになります。沖縄の那覇市は東経128度ほどで明石市との差は7度ですから、同じように計算すると、7/360の365倍で7.1日となり、那覇市では明石市よりも7日ほど後(つまり、8月15日)に同じ空が見えるわけです。
大雑把にいえば、明石市との経度の差にほぼ等しい日にちだけ見える夜空が違ってきます。八代市でしたら、東経130度ほどですから、明石市との経度の差は約5度、ということは、明石市で8月8日に見えている夜空とほぼ同じ夜空は八代市では5日後の8月13日に見えることになります。同じように考えると、八代市で8月8日に見えている夜空は明石市では5日前の8月3日に見えていたことになります。星座早見盤で8月3日の19時のところに目盛を合わせれば、それが8月8日の19時頃に八代市で見える夜空となるわけです。
別の考え方もできます。星は1時間=60分に15度回転していますから、1度は60/15で4分に当りますから、5度の差は4×5で20分の違いとなります。八代市では明石市で20分前に見えた夜空を見ているわけです。つまり、八代市の8月8日19時の空の様子を見たければ、星座早見盤の時刻の目盛を20分戻して8月8日の18時40分のところに合わせてやればよいのです。実際に星座早見盤を操作してみればわかりますが、日付を5日戻しても、時間を20分戻しても、ほぼ同じ夜空が再現されます。
理屈は以上です。多少面倒ですが、明石市との経度の差をこのように補正してやることでより実際に近い夜空を星座早見盤で再現することができます。なお、全国各地の公開天文台の売店で扱っている星座早見盤の中には天文台がある街の経度に最初から合わせて作ってあるものもあります。そういった「ご当地」版の早見盤をその土地で使うのであれば、明石市との経度の差を考えて補正してやる必要はありません。そのまま使えます。

Q16「地球から見たときの星の明るさは何で決まるのですか?」(男性/10歳台)

A16:目で見たの明るさを実視等級といいます。実視等級は2つの要因で決まります。1つはその星の元々の明るさ(約32.6光年離れたところから見たときの明るさ=絶対等級)、もう1つは地球からの距離です。元々の明るさが同じなら、距離が近い方が明るく遠い方が暗く見えます。例えば、おおいぬ座のシリウスは地球から見れば-1.47等級と最も明るい一等星ですが、シリウスが明るいのは地球から8.6光年と非常に近いところにあるからです。1等星のシリウスの絶対等級は1.45等級で、2等星の北極星の絶対等級は-3.64等級なので、同じ距離にあったとしたら、シリウスよりも北極星の方がはるかに明るいのです。また、夏の大三角でいえば、同じ1等星でもはくちょう座のデネブ(1.25等級)はこと座のベガ(0.03等級)よりも暗く見えます。しかし、ベガが地球から25光年のところにあるのに対してデネブは1400光年と桁違いに遠くにあります。それだけ遠くにあるにもかかわらず、あれだけ明るく見えるということは地球から同じ距離にあったとしたら、デネブはベガよりもずっと明るいということです。実際、デネブは太陽の6万5000倍という強烈な明るさです。

Q17「学校では『星座は北極星を中心にして1時間に15度時計の針と反対向きに回る』と教えますが、おかしくないですか!? 1時間に15度回転するのなら、24時間では24×15=360度で元に戻るから、星座の見え方は1年中いつでも同じはずです」(男性/10歳台)

A17:星(恒星)を基準として考えるか、太陽を基準として考えるかの違いです。ご存じのように、星座が北極星(のすぐ近くにある天の北極)を中心として時計の針と反対方向へ回転して見えるのは、実際には地球が自転しているからです。1日は24時間ですが、24時間というのは太陽が真南に見えてから次に真南に見えるまでにかかる時間です。(平均)太陽日といいます。一方、地球が1回自転するのにかかる時間は24時間ではなく、約23時間56分です。つまり、地球が1回転しただけでは太陽は真南に来ておらず、あと4分分余分に回転しなければなりません。どうして4分分ずれてしまうかというと、地球が太陽の周りを回っている(公転している)からです。毎日4分分ずつとずれていくため、星座の見え方は同じ時刻でも毎日同じではなく、少しずつ変わっていきます。ちなみに、毎日4分のずれは1年では、365×4=1460(分)ほどになりますが、1460分は24時間20分、つまり、およそ1日分のずれになります。いい換えると、1年365日で地球は1回公転しますが、その間に366回自転しているのです。

Q18「北極星はどこにありますか? 頭の真上ですか?」(男性/20歳台)

A18:北極星は北の空にあります。天の北極と呼ばれる地球の自転軸(地軸)の延長線上の点の近くに見えます。磁石の指す真北は天の北極とはズレています。このズレを偏角といい、日本国内でしたら大雑把には7度ぐらい東に戻してやれば天の北極を示します。なお、北極星は地平線からその土地の緯度(日本だったら北緯)の分だけ上に見えます。例えば、熊本県八代市でしたら、北緯32度30分ぐらいなので、地平線から32.5度の北の空に見えるはずです。もし、東京だったら35.4度ぐらい、北海道の札幌市だったら43度ぐらい、沖縄の那覇市だったら26度ぐらいのところに見えます。ちなみに、北極点ではほぼ頭の真上に見えますし、赤道付近では地平線ぎりぎりの低い空に見えます。

Q19「北極星を見てみたいのですが、いつ頃みえますか? よく見える季節とかあったら教えてください」(男性/30歳台)

A19:日本国内であれば、どこで観察されるかによって地平線からの高さは変わりますが、天の北極のすぐ近くにある北極星は1年中見えます。北極星は北に行くほど高く、南に行くほど低くなります。2等星ですが、周りに明るい星がないので多少街明かりがあっても割と目立ちます。春や夏でしたら北斗七星から、秋や冬でしたらカシオペヤ座からたどって見つけることができるでしょう。

Q20「七夕(7月7日)の何時頃に織姫と彦星は近づくのですか?」(女性/30歳台)

A20:地球から25光年の距離にある織姫(こと座のベガ)と地球から17光年の距離にある彦星(わし座のアルタイル)はおよそ15光年離れており、七夕だからといって2つの星が実際に近づくということはありません。ちなみに、昔の日本では、梶(かじ)の葉を浮かべた桶(おけ)に汲んだ水に2つの星を映して、水面を揺らすことで2つの星が近づいたように見える様子を眺めたそうです。伝統的七夕(太陰太陽暦に基づく7月7日)の頃には織姫や彦星は南北に流れる天の川を挟んで天頂付近に見えますから、試してみられてはいかがでしょうか?

Q21「北極星は北極で見えるのですか?」(女性/30歳台)

A21:北極でも見えますが、北半球ならどこでも見えるはずです。北極では頭の真上付近に見えるでしょうし、赤道に近いところでは地平線ぎりぎりのところに見えます。

Q22「南極星というのはありますか? カノープスという星が南極星ですか?」(女性/40歳台)

A22:南極星はありません。天の北極のすぐ近くに見える星を北極星といい、いまはこぐま座のポラリスが北極星ですが、天の南極の近くには目印になりそうな星が見当たらないのです。カノープスは「南極老人星」と呼ばれますが、この「南極」は南の方という程度の意味で地軸の延長線上にある天の北極や天の南極とは関係ありません。南極老人はカノープスを神格化した道教の神様で、日本では七福神の寿老人のことです。カノープスは「見ると長生きできる」といわれています。

Q23「理科の問題です。『オリオン座のベテルギウスは12月中旬に真夜中に南中します。ベテルギウスが午後8時に南中するのはいつ頃ですか?』という問題で、正解は2月中旬なのですが、どういう風に考えればいいんですか?」(男性/10歳台)

A23:夜空の星が時間とともに位置を変えていくのは実際には地球が自転しているからだというのはご存じの通りです。1日は24時間ですが、地球の自転はおよそ23時間56分なので、星座は1日に約4分ずつ同じ位置に見える時刻がずれて早まっていきます。1日に4分ずつずれていくと、1年(=12か月、365日)後には365×4=1460(分)、およそ24時間ずれて同じ時間に同じ位置に見える計算です。1年で24時間ですから半年(=6か月)では12時間、3か月では6時間、1か月では2時間となります。午後8時(20時)は真夜中(24時)の4時間前ですから、4÷2=2(か月)に当るので、12月中旬の2か月後で2月中旬が正解とわかります。

Q24「緑色の星はないといわれますが、どうして『緑色の星はない』といい切れるのですか? 宇宙は広いから、地球人が見つけていないだけで結構あるんじゃないですか? Wikipediaによるとてんびん座のベータ星が緑色だそうですけど、それはどうなんですか?」(男性/30歳台)

A24:太陽と同じように自ら光輝いている星(恒星)の色は赤やオレンジ、青や白や黄色です。金属を熱していくと色が変わっていきます。恒星の色も同じで、恒星の表面温度が色を決めるのです。温度が高い星ほど青っぽくなり、温度の低い星ほど赤っぽくなります。わたしたちの太陽は温度が中ぐらいで黄色っぽい星です。どの温度でも虹のように赤から紫まで光が出ている(連続スペクトル)のですが、温度が低いと赤色が多く出て、温度が上がっていくと他の色も増えてきて、温度が高くなると青い色が多く出ます。さて、星の色を温度の高い方から低い方へと並べてみると、青-白-黄色-オレンジ-赤となります。黄色と赤との間がオレンジ色というのは感覚的にもわかりやすいでしょうが、青と黄色の間が白になるのはちょっと不思議な感じがするかも知れません。「青と黄色を混ぜたら緑になるんじゃないか?」と思う人もいるでしょう。絵の具であれば確かに青と黄色で緑になります。しかし、光は絵の具とは違います。光の場合、三原色(赤と緑と青)を混ぜると白になります。青と黄色の間では緑がピークになっているのですが、赤や青も混ざるので白く見えるのです(「黒体放射」「プランクの法則」などをキーワードにして調べてみるともっと詳しい情報が得られるでしょう)。てんびん座のベータ星はひらがなの「く」の字を裏返したようなてんびん座の3つの目立つ星の一番上にあります。てんびん座はかつてさそり座の一部だったのでその名残でてんびん座のベータ星には「ズベン・エス・カマリ(北の爪)」という名前がついています。緑色の星として紹介されることがありますが、肉眼では白にしか見えません。表面温度は1万2000Kほどなので青白い星なのですが、双眼鏡や望遠鏡で観察すると緑がかって見えるといわれることもあります。その一方で「緑色だといわれるけど、全然そうは見えない」という天文写真家もいます。実際にご自分の目でご覧になって緑色に見えるかどうか確認されてはいかがでしょうか?

Q25「星座は誰が考えたのですか?」(男性/小学生)

A25:いまから5000年ぐらい前にメソポタミア地方(現在のイラクやクウェートの辺り)に住んでいた人々(ウルサンギガ[いわゆるシュメール人]やアッカド人など)が星座を考えたといわれています。といっても、いまわたしたちが知っている88の星座は20世紀になってから整理されたものなので、メソポタミアの人たちと関係のないものなどが含まれています。「メソポタミアの人たちはいまの星座の元になる星座(星座の原型)を考えた」というのがより正確ないい方でしょう。なお、星座といえば、ギリシア神話が思い浮かぶかも知れませんが、ギリシアに伝わった星座にギリシアの人々が自分たちの神々や西アジアから伝わった神々の伝説を結び付けて作られたのがギリシア神話です。

Q26「古代文明って高度な数学や天文学が発達していたといわれますよね? 世界史の授業ではエジプト文明のところで『ナイル川の氾濫で天文学が発達した』と教わりましたが、天文って星のことでしょう? 空の上の話と洪水がどう関係するんですか?」(男性/10歳台)

A26:ギリシアの歴史家ヘロドトスは「エジプトはナイルの賜物」と述べています。ナイル川の1000kmほど上流にはエチオピア高原があり、そこに降ったモンスーンの雨によってナイル川が増水・氾濫します。ナイル川が氾濫すると、上流から肥沃な黒い土(ケムト)が運ばれてくるので作物の種を撒くのに適した時期となります。エジプトでは夏至の頃の日の出の直前にナイル川の上におおいぬ座のシリウス(エジプトではソティスと呼びました)が初めて現れる日の数日後がちょうどナイル川の氾濫する時期と重なっていたので、シリウスの動きを観察することで種まきの時期を知ったそうです。古代にはいまと違ってカレンダーも天気予報もありませんから、規則正しく巡る星の動きを詳しく観察することで種まきの時期などを知ったのです。そうした実用的な目的でエジプトの神官たちは天体観測を行い、紀元前3000年頃には1年が約365日であることを知っていました。

Q27「星は昼間でも見えるんですか? 夜しか見えないんじゃないんですか?」(女性/20歳台)

A27:晴れていれば昼間でも星は見えます。望遠鏡を使えば、シリウスなどの明るい星や金星、木星などの惑星を見ることができます。もっとも、雲が多いと、雲に太陽の光が反射してまぶしすぎて目によくありません。そういった場合には天文台では昼間の星のご案内はしません。なお、不用意に昼間望遠鏡を覗くと、間違って太陽を見てしまう恐れがありますから、ご自宅などで望遠鏡を使って昼間の星を探すのはオススメできかねます。

Q28「北斗七星は毎年3cmずつ地球から遠ざかっているのですか?」(男性/20歳台)

A28:月の間違いではないでしょうか? 月は毎年3.8cmずつ地球から遠ざかっています。北斗七星を形づくっている個々の恒星はそれぞれ固有運動をしていますから、北斗七星全体として「地球から3cm」という話はおかしいと思います。

Q29「天の川は七夕のときしか見えないのですか?」(女性/30歳台)

A29:いいえ、天の川はいつでも見えます。現在の日本では街の灯りが明るすぎるので街中で天の川を見ることはまず不可能となっていますが、晴れた日の夜に周囲に灯りのない十分暗い場所に行けば、天の川を見ることができます。ぼんやりした雲の帯のように見える天の川は無数の星々(太陽と同じように自ら光を放っている恒星)が集まったものです。わたしたちの太陽系は銀河系(天の川銀河)に属していますが、天の川銀河の中心は夏の星座であるいて座の方向にあるので、天の川は夏には濃くはっきりして見やすく冬には淡く見えにくくなります。そういった季節による見え方の違いはありますが、特定の季節や特定の日(例えば、七夕)にしか天の川が見えないわけではありません。

Q30「1等星は6等星の100倍明るいそうですね。で、等級が1つ違うと明るさは2.5倍違うと。これって矛盾してませんか? 2.5の6倍なら15倍でしょう? 天文学者ってこんな小学生でもわかる計算もできないんですか!?」(男性/20歳台)

A30:矛盾はしていません。星の明るさは、こと座のベガを0等級とし、等級の差が5つのとき明るさが100倍違うと定義されています。100の5乗根は2.5118864151ほどです。これを「等級が1つ違うと明るさがおよそ2.5倍違う」といっているのです。当たり前ですが、2.512を5回掛ける(2.512の5乗)と約100倍になります。ご興味があれば、北極系列(NPS)について調べられてもよいでしょう。

Q31「固有運動ってありますよね? うしかい座のアルクトゥールスが6万年経ったらおとめ座のスピカのすぐ近くにやってくるとか。あれって、どういう力が働いているんですか? 引力とかですか?」(男性/30歳台)

A31:天の川銀河そのものの動きによるものです。わたしたちの天の川銀河(銀河系)は大雑把にいえば巨大な渦巻のような形をしています。天の川銀河に属する恒星はわたしたちの太陽系の太陽も含めていて座の方角にある天の川銀河の中心の周りを非常に長い年月かけて回っています。そのため、星座を形作っている恒星たちは数千年とか数万年単位で観察するとバラバラな方向へ動いて見えます。これを恒星の固有運動と呼んでます。固有運動は、18世紀の天文学者エドモンド・ハレー(ハレー彗星の発見者)が発見しました。ハレーは、シリウス・アルクトゥールス・アルデバランの位置が古代の天文学者ヒッパルコスの観測記録と比べて0.5度以上変わっていることに気づき、それまで不動であると考えられてきた天の星々も動くことを明らかにしました。

Q32「織姫と彦星は七夕の夜にしか近づかないのですか?」(女性/20歳台)

A32:地球から25光年の距離にある織姫(こと座のベガ)と地球から17光年の距離にある彦星(わし座のアルタイル)とは約15光年離れています。七夕の夜だからといって2つの星が物理的に近づくわけではありません。ここのA20も参考にしてください。

Q33「シリウスはいつ超新星爆発を起こしますか?」(男性/20歳台)

A33:シリウスは超新星爆発を起こしません。質量が足りないからです。シリウスの質量は太陽の約2倍ほどで、この程度の質量では超新星爆発は起こしません。超新星爆発を起こすのは、太陽の8倍以上質量がある星(恒星)です。シリウスの超新星爆発というのは、シリウスが地球から8.6光年という非常に近い距離にあって、「仮に超新星爆発を起こしたら地球への影響は避けられないだろう」という仮定の話として語られるものです。実際にシリウスが超新星爆発を起こす可能性はありません。

Q34「七夕のときって、何か特別な天文現象が起こるんですか? 織姫と彦星が近づいたりしないのはさすがに知ってますけど」(男性/30歳台)

A34:あるかないかと尋ねられれば「ない」というのが答えになります。ただ、伝統的七夕(旧暦の七夕)には必ず半月(上弦の月[月齢7ぐらい])の少し前の月です。これは旧暦の月の始りが新月(月齢0)からなので、7日目には月齢6ぐらいになり上弦の月の少し前の月となるからです。「織姫が月の舟に乗って彦星に会いに行く」といういい伝えもあります。確かに、上弦の月(の少し前の月)は沈むとき、上半分が欠けて舟のようにも見えますね。天の川は南の空のさそり座の尻尾の辺りから伸びていて、織姫(こと座のベガ)は天の川の西岸に、彦星(わし座のアルタイル)は東岸に見えますから、月の舟に乗って織姫が彦星に会いに行くとなると、月が西から東へ移動してくれないと困ります。1日のうちでは月は東から西へと動きますが、毎日同じ時間に観察していると、月は西から東へ移動します。昔の人たちはこのことを知っていて、月の舟の話に結び付けたようです。もっとも、夏の月というのは空の低いところを通りますから、天頂に近いところに輝く織姫や彦星の近くに月が見えることはありません。天文シミュレーション・ソフトを使って調べたところ、旧暦の七夕に月の舟が天の川の西岸に見えるのは、2015年~2025年の期間では2020年の8月25日だけのようです。8月25日に西岸に見えた月は8月29日には東岸に着きます。29日には、月のすぐ近くに木星と土星も見えて、織姫の乗った月の舟をまるで出迎えているかのようです。「月についてのご質問」のA2も参考にしてください。

Q35「ニュースでキトラ古墳の天文図が話題になっていました。星座の並びを調べて古代中国の空を描いたものだとわかったそうですけど、星座って数百年とか数千年とかで形が変わるんですか? もっと時間が経たないと変わらないと思っていたんですけど?」(男性/40歳台)

A35:キトラ古墳の天文図に関しては、星座の形が変わったわけではなく、地軸の延長線上にある天の北極の周辺に見える星座の見え方などから観測された年代や観測地点の緯度が推定されました。地平線から天の北極までの高さはその土地の緯度ですからね。地軸は倒れる直前のコマがふらふらするのと同じように首振りをしています。これを歳差運動といって周期は約2万6000年です。例えば、現在、天の北極のすぐ近くに見える北極星はこぐま座のポラリスですが、歳差運動によってこれがりゅう座のツバーンになったり、こと座のベガになったりするのです。キトラ古墳そのものは、7世紀末から8世紀初めの飛鳥時代に造られたと推定されていますが、天文図については飛鳥地方の夜空を描いたものではなく、中国か朝鮮半島で作成した星図を参考にしたもので、時期ももっと古いと考えられていました。実際、元の図を天井に描く際に左右を逆に写したり、意味や仕組みがわからないまま写したので作図を間違えたと思われる箇所などもあります。いずれにせよ、他国でずっと昔の時代に作られた星図を参考にしたということは、恐らく当時の飛鳥地方では独自に星図を作れなかったということでしょう。今回(2015年7月)、推定期間には幅があるものの、従来からあったそうした見方が改めて裏付けられたことになります。

Q36「空の星って、太陽の光を反射して光ってるんですよね?」(男性/60歳台)

A36:火星や木星といった惑星は太陽の光を反射して光っていますが、星座を形づくっているような星々(恒星)は太陽と同じように自ら燃えて光っています。天の川に望遠鏡を向けると数えきれないほど多くの星が見えますが、それらすべてが自分で光を放っているのです。なお、恒星が燃える仕組みは核融合反応なので燃えるのに酸素はいりません。

Q37「東京に住んでいます。緯度によって北極星の見え方が違うのは知ってます。だったら、他の星座の見え方はどうなるんですか? 実は先日沖縄に旅行にいった友人から『さそり座がすげー上の方にあった!』と聞いたのですが、そうなるのですか?」(男性/20歳台)

A37:はい、沖縄で見るさそり座は東京で見るよりも高い位置になります。北半球では北に行けば行くほど北極星は地平線から高いところに見えます。仮に、北極点に立ったら頭の真上に北極星が輝いているはずです。逆に、どんどん南に行って赤道に行ったら北極星は地平線(水平線)ぎりぎりのところに見えるはずです。他の星座の見え方を考えてみましょう。北極点に立ったとき、北極星の周辺の星座は空の高いところに見えているでしょうが、北極星から離れるほど地平線からの高さはだんだんと低くなります。北極星から90度離れると赤道ですから、見える星座はその範囲(北半球の星座のみ)となります。90度より離れた星座は赤道より南にあって北極点では見えません。一方、赤道ではどうでしょうか? 赤道では北極星から180度の範囲の星が見えるのはおわかりでしょうか? 赤道では北半球の星座も南半球の星座もどちらも見えます。沖縄は東京よりも赤道に近いので、東京では地平線の下に隠れている南半球の星座が見えます。ということは、東京でも見えるさそり座は沖縄では東京と比べて地平線から高いところに見えるということです。

Q38「表面温度が1万度の恒星と3000度の恒星があって、絶対光度が同じだとしたら、どっちの方が大きいんですか?」(女性/10歳台)

A38:答えを先にいえば、3000度の恒星の方が大きいはずです。大きさ(直径)が同じで地球から同じ距離にあるとすれば、表面温度の高い恒星の方が明るいのはご存じだと思います。絶対等級がわかれば、その恒星が全体としてどれだけのエネルギーを出しているかわかります。また、恒星の表面温度からは単位面積当たりの放射エネルギー量がわかります。つまり、全エネルギー量を単位面積当たりのエネルギー量で割ってやれば、恒星の表面積がわかります。恒星は球体ですから、球の表面積をS、球の半径をr、円周率をπで表せば、S=4×π×r^2という関係が成り立っていますから、これをrについて解けばよいわけです。求めたrを2倍すれば、直径がわかります。適当な数値を当てはめてみれば、表面温度が違って絶対等級が同じなら、表面温度の低い星の方が大きいとわかります。

Q39「黄道12星座っていいますけど、本当はへびつかい座も黄道にかかっているから13星座じゃないんですか? どうして12なんですか?」(女性/10歳台)

A39:12星座というのは、大昔に360度を30度ずつ12等分したときに、目印になる近くにある星座を当てはめただけです。実際の星座がそこにあるかどうかとは関係ありません。ですから、現在、実際に黄道上に星座が13あろうが14あろうがそれは黄道12宮とは何の関係もないのです。

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Q1 「彗星と流れ星とは同じですか?違うのなら、どう違うのですか?」(男性/30代)

A1 :彗星と流れ星は違います。まず見え方についてですが、流れ星はその名前の通り空を流れて一瞬で消えてしまいます。一方、彗星は夜空に長い時間留まっています。『ほうき星』ともいわれる彗星は『汚れた雪玉』のようなもので、それが太陽に近づくと溶けて太陽風や放射圧の影響でイオンの尾とチリやガスの尾(ダストの尾)を引きます。したがって、彗星の尾は彗星の進む方向と反対側ではなく、彗星から見て太陽と反対の側にできます(太陽が彗星の進む方向の左側にあれば、右側に尾ができます)。彗星がまき散らしたチリは彗星の軌道(通り道)に沿って帯のように残ります。このチリの帯の中を地球が通過すると、地球の大気との断熱圧縮によってチリが燃えて光を放ちます(よく「摩擦熱で燃える」といわれますが、摩擦熱とは仕組みが違います)。これが流れ星です。ほとんどの流れ星は大きさが数ミリからせいぜい角砂糖程度で、一瞬で燃え尽きます。

Q2 「彗星はずっと尻尾を出しているのですか?」(男性/40代)

A2 :彗星は太陽に近づくと尾を引きます。太陽から遠ざかると尾は消えます。彗星の尾は進行方向と反対側ではなく、太陽と反対側にできます。彗星の尾の正体については上のQ1への回答を参考にしてください。


~図1(彗星) 彗星の尾のでき方~

Q3 「彗星はどこからやってくるのですか?」(男性/20代)

A3 :オールトの雲やエッジワース・カイパーベルトからやってくると考えられています。放物線や双曲線の軌道を描く2度とやってこない彗星や長周期の彗星は太陽系を覆うように球状に広がるオールトの雲と呼ばれるところからやってくると考えられています。太陽からおよそ1光年の距離になります。1950年にオランダの天文学者ヤン・オールトが提唱しました。楕円軌道を描く周期の短い彗星は冥王星軌道の外側に円盤状に広がるエッジワース・カイパーベルトと呼ばれるところからやってくると考えられています。提唱者のケネス・エッジワースはアイルランドの天文学者、ジェラルド・カイパーはアメリカの天文学者です。

Q4 「○○座流星群というのは何千、何万光年も離れたその星座から流れ星が飛んでくるのですか?」(女性/20代)

A4 :違います。流星の正体はQ1への回答でも述べたように彗星がまき散らしたチリです。流星は彗星の軌道上に残るそのチリの帯の中を地球が通過する際にチリが地球の大気との断熱圧縮で燃えて光る現象であり、地球の大気中で起きています。流星は地上から見れば放射点を中心として四方八方に飛びますが、たまたまその放射点が○○座の方角にあって○○座の方から飛んでくるように見えるというだけの話です。

Q5 「××座流星群が出現するというので頑張って夜遅くまで起きて見ていたのですが、結局10個程しか流れ星は見えませんでした。あんなものなのですか?」(男性/20代)

A5 :流星群は流星雨とは違います。それこそ雨が降るように流星が流れる流星雨はそうそう起こるものではありません。どれぐらい沢山流れれば流星雨という明確な基準はありませんが、概ね1時間に1,000個以上の流星が見られれば『流星雨』とされるようです(それ未満だと、『大出現』と呼ばれます)。流星が安定して比較的沢山流れる流星群としては、しぶんぎ座流星群、ペルセウス座流星群、ふたご座流星群が挙げられます。3大流星群とも呼ばれます。しぶんぎ座流星群は1月初めに見られ、1時間に20個~50個くらいの流星が見られます(ちなみに『しぶんぎ座』という星座はいまはありません)。ペルセウス座流星群は8月中旬頃に見ごろとなります。1時間に60個以上の流星が期待できます。夏休み期間中ということもあり、理科の自由研究のテーマとしても取り上げられることの多い流星群です。ふたご座流星群は12月の中旬頃が見ごろです。1時間に100個以上の流星を数えたという報告もあります。

Q6 「ハレー彗星は次はいつ来るのですか?」(男性/50代)

A6 :2061年の夏に地球に近づくと予測されています。約76年周期で地球に接近するハレー彗星が前回地球に近づいたのは1986年のことでした。そのときは、地球からの距離も遠く、南半球のオーストラリアなどではそこそこに見えたものの、日本ではあまり話題にもなりませんでした。その前の1910年に地球に接近した際は尾が120度にもなり非常に大きく明るく見えたことや、尾の成分に猛毒のシアン化合物が含まれていると伝えられたことで「地球上の生物が窒息死する」というデマが流れました。穴を掘って隠れたりする者やタイヤのチューブを買い占める者や洗面器に水を張って息を止める練習をする者なども一部に現れたといいますが、当時の新聞記事などを踏まえると大きな騒ぎにはならなかったようです。彗星の尾は非常に希薄なので仮に有毒成分が含まれていたとしても地球の分厚い大気に阻まれて実際には何の影響もありませんでした。

Q7 「彗星が現れると、戦争とか地震とか火山の噴火とかが起きますか?」(男性/20代)

A7 :関係はありません。人類の歴史はほとんど戦争の歴史ですし、地震や火山の噴火なども規模はともかく地球上のどこかで毎年のように起きています。彗星が現れたときに戦争などが起きたとしても、偶然の一致以上ではないでしょう。

Q8 「彗星はビッグバンで吹き飛んだ星が太陽の引力に引かれてグーッと戻ってきてるんですか?」(女性/50代)

A8 :関係ありません。太陽でビッグバンが起きたわけでもありません。彗星は太陽系ができたとき同時にできた凍り付いた微惑星が元になっています。オールトの雲と呼ばれる太陽系の果て(太陽と地球との距離の数万倍、10兆km位離れたところ)にあるのですが、近くを別の天体が通過するなどして軌道が乱されると太陽に近づいてきます。近付くと太陽風などの影響で尾を引くようになります。オールトの雲はボールのような形で太陽系がその中にすっぽり入っています。海王星より外側にはエッジワース・カイパー・ベルトというところがあり、ここも彗星の巣になっています。なお、彗星というと何年かするとまた戻ってくるという印象があるかも知れませんが、彗星の中には一度だけ太陽に近づいて宇宙のかなたに飛び去ってしまうものもあります。

Q9 「ネットの質問掲示板で『なだれ星』について質問している人を見かけました。『なだれ星』ってどんな星ですか?『見ると幸せになる』って書いてありました」(男性/20代)

A9 :「なだれ星」というのは聞いたことがありません。流れ星の間違いではないでしょうか? 流れ星なら「消えるまでの3回願い事をいえば叶う」という言い伝えはありますね。

Q10 「○○星雲とか××銀河とか、きれいな写真が沢山ありますが、天文台の大きな望遠鏡で見ると本当にあんな風に見えるのですか?」(男性/20代)

A10 :残念ながら肉眼ではなかなかああいう風にはっきりくっきりとは見えません。綺麗な写真は長時間露光して撮影し、コンピュータを使って画像処理などもしています。なぜ写真のように見えないかというと、人間の目の細胞が暗いところで色がわかるように元々出来ていないからです。人間の目の細胞には、色はわかるが暗いと見えない細胞(錐体[すいたい]細胞)と暗くても見えるが色は分からない細胞(桿体[かんたい]細胞)とがあり、暗い場所では色がわからず白黒写真のようにしか見えないのです(ちなみに、色の分かる細胞は目の中心付近に沢山あり、暗くても見える細胞はその周辺に多くあるので、目を少しそらすようにするとさっきまで見えなかった星が見えたりします)。口径が数十cm以上の望遠鏡だと、何となく色が付いているような気がしないでもありませんが、やはり写真のようには見えません。星雲や銀河は白っぽくぼやっとした雲のようにしか見えないと思っておいた方が良いでしょう。とはいえ、望遠鏡を覗いて自分の目で何千年、何万年も前の光を見つめるのは写真を眺めるのとはまた違った感動があります。

Q11 「M78星雲というのは本当にあるのですか?あるのならどこにあるのですか?」(男性/50代)

A11 :M78はオリオン座にあります。もう少し詳しく言えば、オリオンの三ツ星の近くで、リゲルの側ではなく、ベテルギウスの側にあります。オリオン座は冬の代表的な星座ですね。M78は地球から約1600光年離れています。暗黒星雲の一部が高温のガスに照らされて光っている散光星雲(反射星雲)というのがM78の正体です。オリオン座には、他に有名なオリオン大星雲(M42)や馬頭星雲もあります。


~図1(星雲) M78の場所~

Q12 「天文関係でM(エム)何とかという数字(?)がよく出てきますが、あれって何なのですか?」(男性/40代)

A12 :18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエという人が彗星を探すときに彗星と間違いやすい星雲・星団・銀河を載せたカタログを作りました。このカタログをメシエ・カタログといいます。M(エム)というのはメシエのエムで、M20とかいうのはメシエ・カタログの20番目に載っている天体だということです。

Q13 「地球は太陽の周りを公転していて太陽系の中心には太陽があります。太陽系が銀河系(天の川銀河)の中心を回っているのなら、銀河系の中心には何があるのですか?」(男性/10代)

A13 :非常に質量の大きい巨大なブラックホールがあると考えられています。天の川銀河の中心はいて座の方角ですが、地球からおよそ2万6,000光年離れているいて座A*(エー・スター)は銀河の中心のすぐ近くにあって太陽の370万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールだと考えられています。

Q14「おうし座のプレアデス星団は銀河(天の川銀河)の中心方向にあるのですか?」(女性/20代)

A14 :ありません。銀河の中心は天の川が見えるいて座の方向です。夏を代表する星座であるさそり座のさそりを弓をつがえて背後から狙っているのがいて座です。天の川銀河系の直径は10万光年ほどですが、地球を含む太陽系は銀河系の中心から2万5000~2万8000光年の位置にあり、冬の星座であるおうし座のプレアデス星団(和名は「すばる」)は地球よりさらに400光年ほど銀河系の外側にあります。ちなみにプレアデス星団は太陽系から遠ざかりつつあります。

Q15「地球を含む太陽系は、プレアデス星団のアルシオーネという星を中心として周回していますか?」(女性/20代)

A15 :いいえ。太陽系は、銀河系の中心を軸にして銀河系全体を周回しますが、プレアデス星団のアルキオネ(アル「シ」オーネではありません)を中心に周回してはいません。そのような事実はありません。そもそも、地球を含む太陽系が誕生したのは45億年前ですが、プレアデス星団の星々が誕生したのはせいぜい6000万~1億年前であり、存在してもいなかったアルキオネを周回する軌道を太陽系が通るというのは奇妙な話です。

Q16 「Wikipediaによると宇宙には銀河が推定で少なくとも1,700億個あるそうですが、そんなに沢山あったらいくら広い宇宙でも銀河と銀河がぶつかったりはしないのですか?」(男性/20代)

A16 :銀河と銀河は衝突しています。銀河の衝突は別に珍しい現象ではありません。例えば、わたしたちの太陽系が属する天の川銀河もお隣のアンドロメダ大銀河と40億年後には衝突し、60億年後には1つの巨大な銀河になると予想されています(NASAによると、この衝突によって太陽や地球が他の星とぶつかることはないそうです)。ハッブル宇宙望遠鏡によって衝突銀河の写真は沢山撮影されています。下の写真は1995年の5月に撮影されたケンタウルス座の極リング銀河NGC4650Aです(STScI[宇宙望遠鏡科学機構]提供)。渦巻き銀河に楕円(だえん)銀河が衝突して、まるで十字架のように見えますね。

NGC4560A
~写真1(星雲) 極リング銀河NGC4650A~

Q17 「天の川を見ると、真ん中に黒い帯のようなものがあります。調べてみたら、あれは暗黒帯といって天の川銀河の円盤の合わせ目のところが暗く見えているそうですが、なぜ暗く見えるのですか? 星がないからですか?」(女性/20代)

A17 :星が「ない」わけではなく、「見えない」だけです。暗黒帯の正体はガスや塵が高密度に集まってできた暗黒星雲です。暗黒星雲が光を吸収散乱してしまうので暗く見えるのです。

Q18 「『星雲』という呼び方はもうなくなったのではありませんか?」(男性/50代)

A18 :いいえ、星雲という呼び名は今でもあります。暗黒星雲や散光星雲はそれ以外の呼び方はされていません。ただ、例えばアンドロメダ星雲がアンドロメダ銀河と呼ばれたり、大マゼラン星雲が大マゼラン銀河と呼ばれたりするように、かつて「星雲」と呼ばれていたものがわたしたちの銀河系(天の川銀河)の外にある銀河(系外銀河)だと分かって、「銀河」と呼び直されるようになりました。お尋ねの「星雲という呼び名がなくなった」というのは、恐らくその話なのではないでしょうか?

Q19 「銀河と銀河系はどう違うんですか?」(男性/30代)

A19 :私達の太陽系が所属する天の川銀河のことを「銀河系」と呼んでいます。天の川銀河は宇宙にたくさんある銀河の中の1つです。銀河は10の11乗(1,000億)個あると考えられていますが、銀河系(天の川銀河)は1つだけです。

Q20 「サッカイ星団って何ですか?」(女性/50代)

A20 :「サッカイ星団」という言葉はいままで聞いたことがありませんが、散開星団(さんかいせいだん)ならわかります。星がごちゃごちゃ集まって見えるものを星団と呼んでいます。英語だとスター・クラスター(Star Cluster)といいます。クラスターというのはブドウなどの「房(ふさ)」や「集団」「群れ」という意味です。ほぼ同時に生まれた星たちがお互いの重力で集まっているのです。星団は球状星団と散開星団とに大きく分けられます。ボールのように集まって見えるのが球状星団で、疎らに散って見えるのが散開星団です。球状星団で有名なのはヘルクレス座のM13で、散開星団で有名なのはおうし座のM45プレアデス星団(和名:すばる)ですね。画像検索でヒットしますから、見比べてみてください。

Q21 「M78はサッコウ星雲だそうですが、星雲という呼び方はなくなったんじゃないですか?」(女性/50代)

A21 :Q9でも述べていますが、星雲という呼び名は今でもあります。かつて星雲と呼ばれていたものの中によく調べたら銀河が含まれていて、星雲から銀河へと呼び名が変わったというだけです。なお、「サッコウ星雲」という言葉は聞いたことがありません。散光星雲(さんこうせいうん)ではないでしょうか? 星雲は大きくわけて2種類あります。暗黒星雲と散光星雲です。暗黒星雲は大量のガスやチリが集まっていてこれから星が生まれてくるところです。背後にある星の光を遮って黒く見えるので暗黒星雲といいます。SFアニメに登場する悪役のような名前ですが、別に悪いものではありません。暗黒星雲で有名なのはオリオン座の三ツ星の近くに見える馬頭(ばとう)星雲です。散光星雲は光っている星雲です。散光星雲はさらに反射星雲と輝線(きせん)星雲とにわけられます。反射星雲は近くにある星の光を反射して光って見える星雲です。一方、輝線星雲は高温のガスやチリが光っています。M78星雲は反射星雲の一つで、反射星雲としてはかなり明るいものです。

Q22 「馬頭星雲は5,000円くらいの双眼鏡で見えますか?」(男性/20代)

A22 :5万円の双眼鏡でも無理です。馬頭星雲は写真に撮れますが、大型の望遠鏡を使っても肉眼で見るのはまず無理とお考えください。一般的に、星雲・星団・銀河は天文雑誌に載っている写真のようには絶対に見えません。

Q23 「八代市に住んでいます。自宅の庭で天の川を見たいんですがどっちの方角にあるんですか?肉眼でも見えるんですか?やっぱり望遠鏡じゃないと分からないものですか?星座何とかっていう丸いのは一応持ってますけど、使い方わかりません。あと写真を撮りたいんですけど撮れますか?」(女性/40代)

A23 :天の川は望遠鏡を使わなくても肉眼で見えます。ご自宅のお庭の周辺がどの程度暗いのか分かりませんが、天の川は十分暗い場所であれば夜空を見上げれば見えるので探すまでもありません。雲で隠されていなければ、空を見渡せば満月は誰にでも見つけられますね。それと同じです。ただ、天の川は満月のように明るく輝いているわけではないので、見えていても気づかないかも知れません。天の川を探すときの分かりやすい目安は、さそり座です。大きなS字型のカーブを描くさそり座のサソリの尻尾辺りから白い帯のようなものが伸びていて頭の上を通って夜空をぐるっと巡っていますが、それが天の川です。5月下旬であれば、さそり座は真夜中に南の空に見えていますから月明かりのない日を選んで探してみてください(図2を参照)。あるいは、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブで形づくられる夏の大三角が見えれば、天の川はその三角の中を流れています。

~図2(星雲) 天の川の見え方(5月下旬の真夜中)~

それでも何も見えない、見つけられないようだと、残念ながらご自宅のお庭では天の川を見るのは難しいでしょう。郊外の暗い場所に移動して探してみてください。「星座何とかという丸いの」は星座早見盤のことだと思いますが、使い方については恐らく解説書が同封されているはずですから、それをお読みになってください。日付と時刻を合わせて、見たい方向(南の空の星々が見たければ南)を向いて頭の上にかざすというのが基本です。天の川は星座早見盤では白い帯状に描かれています。星座早見盤の詳しい使い方については、このページの「星座と恒星についてのご質問」のA15でも解説しております。ご参照ください。天の川を撮影する場合、デジタルカメラやスマートフォンを手で持ってというのは無理があるので、必ず三脚に固定してください。シャッターを開放して、ISOを目一杯上げて20秒ぐらいで撮れるはずです。月明かりがあると、真っ白になってしまうのでご注意ください。ネットで公開されている目を見張るような美しい天の川の写真をいきなり撮るのは少々ハードルが高いかも知れませんが、暗い場所で天の川がきれいに見えてさえいれば大きな失敗をしない限り、初めてでもそこそこの写真は撮れるはずです。

Q24 「すばるは今は星が6つしか見えませんが、昔は7つ見えたという話があります。セブン・シスターズとか。1つ見えなくなったという事ですか?」(男性/70代)

A24 :平均的な視力の人が見た場合、肉眼だとすばる(プレアデス星団)の6つ前後の星が分かるようですが、ギリシア神話ではご存じの通りセブン・シスターズ(7姉妹)とされています。日本ではプレアデス星団は六連星(むつらぼし)とも呼ばれていたので、「7つの星のうち1つが見えなくなった」わけではなく、当時から6個の星の集まりとして認識されていたようです。7姉妹なのに6つしか星が目立たない理由としては、「メロペーが人間と結婚したことを恥じて隠れているからだ」とか「エレクトラがトロイの陥落を悲しんで姿を消したからだ」とかいった理由づけもされています。

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Q1 「宇宙はどんどん大きくなっているそうですが、宇宙の果てはどうなっているのですか?」(男性/小学生)

A1 :現在のところ、宇宙が誕生してから138億年ほどだと言われていますから、地球から見える宇宙は138億年の距離までです。したがって、わたしたちにわかるのはその距離までの宇宙のことです。

Q2 「宇宙が誕生したのは138億年前だそうですが、それより前はどうなっていたのですか?」(男性/小学生)

A2 :138億年前に宇宙が誕生し、そこから時間も空間も始まったのなら、それより『前』というのはそもそもありません。

Q3 「ビッグバンというのは何ですか?」(男性/小学生)

A3 :宇宙を観測すると、遠くにある星々程速いスピードで遠ざかっていることが分かります。宇宙はどんどん膨張しているのです。ということは、逆に昔の宇宙は今よりもずっと小さかった事になります。小さく集まっていた宇宙が急激にどんどん大きくなって今の宇宙になったと考えられています。この急膨張をビッグバン(大爆発)と呼んでいるわけです。ちなみに実際に何かが爆発したわけではなく、「爆発的に膨張した」という話ですからお間違えなく。

Q4 「ブラックホールは見えますか? 見えないのならどうして存在すると分かるのですか?」(男性/30代)

A4 :ブラックホールはそれ自体が目に見えることはありません。ものすごい重力のために光さえ脱出不可能だからです。ただし、周辺の天体がブラックホールに吸い込まれる途中にできる渦巻(降着円盤)は猛烈な摩擦でエックス線やガンマー線などを放出するので、それを観測することで『あの辺りにブラックホールが存在しているようだ』とわかります。最初に見つかったブラックホールの候補天体ははくちょう座のX-1ですが、現在では数十個の候補が上がっています。

Q5 「ヨーロッパでは加速器を使って小さなブラックホールを作り出す実験をしているそうですが、何かの間違いでそのブラックホールに地球がのみ込まれて人類滅亡といった危険はないのですか?」(男性/20代)

A5 :スイスにあるCERN(セルン:欧州原子核研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突加速器)を用いて行っている高エネルギー物理実験についてのお話だと思いますが、マイクロ・ブラックホールができても瞬時に蒸発してしまうと予想されています。加速器のエネルギーは小さいので、これで蒸発せずに残るようなブラックホールができるのなら、毎日地球に降り注いでいる高エネルギーの宇宙線によってブラックホールができて、とっくの昔に地球は消滅していそうなものですが、そういうことは起きていません。

Q6 「オリオン座のベテルギウスがもうすぐ大爆発して、その影響で地球が滅亡するという話を聞きました。本当ですか?」(男性/20代)

A6 :ベテルギウスが爆発しても地球が滅亡することはありません。ベテルギウスに超新星爆発の兆候が見られ、いつ爆発してもおかしくない状態なのは確かですが、それが今日明日のことなのか、何百年、何千年も先のことなのかはわかりません。ベテルギウスと地球とは640光年離れていますから、仮にいまこの瞬間にベテルギウスが爆発しても、それがわかるのは640年先のことです。なお、超新星爆発によって発生する強烈な放射線(ガンマー線)にたとえば数光年程度の至近距離から直撃されれば、オゾン層が消滅し地球上の生物はほぼ死に絶えるでしょうが、ガンマー線は極軸の向きに放出され、その範囲はせいぜい2°ほどといわれます。地球はベテルギウスの極軸から20°外れていますから、影響が出ることはないでしょう。

Q7 「ダークマターやダークエネルギーと時々聞きますが何なのですか?」(男性/20代)

A7 :まず、ダークマター(暗黒物質)とダークエネルギー(暗黒エネルギー)は別のものです。ダークマターは光も電波もX線も出さない天体のことです。光も電波もX線も出さないので望遠鏡では全く見えませんが、銀河の動きを詳しく見ていくと、見えている物質だけでは説明できない動きが見られ、目には見えない何かの引力が働いていると考えられます。その『目には見えない何か』をダークマターと呼んでいるわけです。ダークエネルギーの方は、宇宙の膨張を加速する力のことです。宇宙には多数の天体があって引力が作用しているのに、観察結果によると宇宙の膨張はどんどん加速しています。引力に打ち勝って膨張を加速させている力のことをダークエネルギーと呼んでいるのです。ダークマターにしても、ダークエネルギーにしても、正体についてはさまざまな仮説があります。

Q8 「ブラックホールって要するに何なのですか?光も外に出られないというのが良く分かりません。難しい数式なしで説明してください!」(男性/20代)

A8 :ブラックホールというのは、非常に重力が大きな天体です。「ホール(穴)」と言いますが、宇宙に穴が開いているわけではなく、重力が大きすぎて秒速30万kmという光の速さでも脱出できない星のことを言います。太陽よりも遥かに大きな質量を持つ天体の最後の姿と言われています。この世に生まれてきた私達がいつか死んでいくように、星(恒星)にも寿命があります。太陽よりも質量が8倍以上ある星はやがて超新星爆発を起こします。爆発して残った残骸(中性子星)の質量が太陽の3倍より大きいと、ブラックホールになります。ブラックホールは超新星爆発によって残った星が自分自身の重力によって中心に向かってどんどん潰れていき(重力崩壊)、超高密度になった状態です。おっしゃるように、ブラックホールからは光さえも外に出られません。光も出られないということは、ブラックホールは目には見えないということです。

光だとちょっとイメージしにくいと思うので、ロケットで宇宙に飛び出す場合を考えてみましょう。地球の周りを回っている月の引力は地球の6分の1程です。引力が小さいので、月から宇宙に飛び出すのは地球から宇宙に飛び出すよりずっと簡単です。アポロで地球から月に向かうときには巨大なロケットが生み出す大きな推進力(アポロ13号のスピードはマッハ33でした)が必要でしたが、月から地球へ帰ってくるときには着陸船の小さなロケットの燃焼でも月面から飛び立つには十分でした(地球を脱出するのに必要は速度は秒速11.18kmで、月を脱出するのに必要な速度は秒速2.3km)。では、月とは逆に地球よりも引力が大きな星だったらどうでしょうか? 地球から月へ向かったときよりもずっと大きな推進力がないとダメですね? 重力はその星の質量によって決まりますから、この考え方をどんどん推し進めていくと、ものすごく質量が大きい星は重力も非常に大きくなり、宇宙に飛び出すのがとても難しいだろうと想像できます。

さて、ロケットと違って光(光子)には質量はないのでロケットの場合と同じには考えられません。光がブラックホールを脱出できないのは、ものすごい重力によって空間が歪(ゆが)んでいるからです。わたしたちは「光は真っ直ぐに進む」と思っていますが、実際には川が流れるように、光は空間に沿って進んでいるに過ぎません。ボールの上に真っ直ぐに線を引いていっても、ぐるっと回って元のところに戻ってきますね。もし、空間そのものが曲がっていたら、光も当然曲がることになります。

「3次元の空間が曲がる」というのはイメージしにくいでしょうから、布の上にものを載せて持ち上げる場合を考えてみましょう。ビー玉を載せるとビー玉の周りの布がたわみ(へこみ)ますね? もっと重い物を載せればもっと大きくたわみ(へこみ)ます。空間も同じように質量の大きな星の周りで曲がるのです(太陽の周りの空間も曲がっています)。非常に重力が大きい星だと、空間が曲がった結果として光でもその星から外に出ることは出来なくなります。ブラックホールではそういうことが起きているのです。

Q9 「クエーサーって何ですか?ブラックホールの事ですか?」(男性/20代)

A9 :クエーサーは非常に遠くにあって膨大な量の電波やX線を出している天体のことを言います。見た目は恒星のようなので、準星だとか準恒星状電波源(quasi-stellar radio source)だとか呼ばれます。クエーサーは宇宙が形成される初期の段階でたくさん存在していた原始銀河であり、一般的な銀河の百倍とも言われるエネルギーの出所はブラックホールだと考えられています。ブラックホールに周囲の物質が流れ込む際に電波やX線が放射されるのです。クエーサーはブラックホールの周辺の活動的な領域のことですが、「クエーサー=ブラックホール」ではありません。

Q10 「パルサーは中性子星とどこが違うのですか? ネットで調べてみましたがよく分かりませんでした」(男性/20代)

A10 :「宇宙の灯台」とも呼ばれるパルサーの正体は中性子星ですが、中性子星の全てがパルサーというわけではありません。パルサーというのは「パルス」を発している天体ということです。パルスというのは「ピッ、ピッ、ピッ」といった規則的な信号のことです。1967年に発見されたときあまりにも規則的だったので「これは人工的なものだ。異星人からのメッセージではないか?」と考える人たちもいました。しかし研究の結果、その信号は中性子星から出ていることがわかったのです。赤色巨星のうち質量が足りずにブラックホールになれなかったものが中性子星となります。中性子星はブラックホールほどではありませんが、密度が非常に高い星で角砂糖ほどの大きさで質量が数億トンにもなります。その中性子星が非常に高速に回転すると磁場が発生してジェット(放射状のビーム)を吹き出すのですが、このジェットが中性子星の自転軸からズレてたまたま地球の方を向くように発生していると地球ではパルス信号が観測されます。これがパルサーです。ジェットの吹き出す向きが中性子星の自転軸と合っていると「ピーッ」といった感じで常に信号が出たままの状態になるので、ONとOFFを規則正しく繰り返すパルス信号にはなりません。なお、パルサーの発見者は英国ケンブリッジ大学の大学院生だったスーザン・ジョスリン・ベルです。1974年には彼女の指導教授だったアントニー・ヒューイッシュがパルサーを発見した功績でノーベル物理学賞を受賞しています。

Q11 「明るさが変わる星があるそうですが、どういう仕組みでそうなるのですか?」(女性/20代)

A11 :明るさが変わる恒星のことを「変光星」といいます。仕組みはいくつかあります。(1)その星が他の星と互いに回り合っている連星になっていて、地球から見て暗い星の方が手前に来る場合(食変光星)、(2)大きな惑星が地球から見てその星の前を横切る場合(食変光星)、(3)その星の全体や一部が膨張したり収縮したりする場合(脈動変光星)などです。食変光星としては、ペルセウス座のβ星「アルゴル」(「悪魔」という意味)がよく知られています。ちなみに、アルゴルはペルセウスによって首をはねられた怪物メドウサの額に輝く星です。(3)のタイプの変光星の代表はくじら座のミラです。恒星は核融合反応で光輝いているわけですが、年老いてくると水素を使い果たしてヘリウムで核融合を始めます。ヘリウムの核融合だと、水素で核融合を行っていたときよりも発熱量が増えて星は膨張します(この状態の星を赤色巨星といいます)。膨張したことでガスの密度が低くなり温度が下がります。温度が下がるとガスは収縮しますが、収縮すると温度が上がって再び膨張、ということを繰り返すので明るくなったり暗くなったりするわけです。他にも、はくちょう座のデネブのように星全体ではなく、その一部だけが膨張・収縮を繰り返すものもあります。

Q12 「星はどうして丸いのですか? 四角い星とかあってもいいはずなのになぜ?」(男性/10代)

A12 :丸い形が最も安定するからです。水滴が丸くなるのは表面張力が働くからです。表面積を最も小さくする最も安定した形が球なので、丸くなります。映像をご覧になったことがあるかも知れませんが、無重力状態の宇宙船の中では水は球になります。ガスでできた星(恒星)の場合も考え方は同じです。小惑星などでは形がいびつなものが多く見られますが、ある程度以上の質量の星は球体になります。もちろん、すべての星がきれいな球形というわけではありません。例えば、自転速度の速い土星は赤道方向にやや扁平な形をしているのが写真で見てもはっきりわかります。4日程の周期で2つの星が猛烈な速度で互いに回りあっているおとめ座のスピカも、赤道方向に伸びた楕円形、平べったいお餅のような形をしているようですが、基本は球体です。

Q13 「空はずーっと繋がってますけど、宇宙ってどれぐらい上の空から始まるんですか?」(女性/30代)

A13 :宇宙というのは地上から大体100kmぐらい上空から始まります。100kmより下の空での出来事は地球の大気中で起きたという事になります。

Q14 「超姿勢爆発って何ですか?」(男性/10代)

A14 :「超姿勢爆発」というのは存じ上げませんが、超新星爆発(正確には超新星[スーパー・ノヴァ])のことでしょうか? 超新星は質量が大きな恒星がその生涯の最後に起こす大規模な爆発現象のことをいいます。大雑把には、爆発の仕組みでⅠ型とⅡ型に分かれます。Ⅰ型は、白色矮星の近くに赤色巨星があるときに起きるものです。白色矮星が強力な重力で赤色巨星の表面のガスをものすごい勢いで吸い込み始めます。白色矮星はどんどん大きく重たくなっていきますが、自分自身の重力で収縮していき中心部では非常な高温高圧となって炭素の核融合反応が活発化します。計算では白色矮星の質量が太陽の質量の1.4倍となったとき、臨界を迎え白色矮星は大爆発を起こします。これがⅠ型の超新星です。太陽より8倍以上質量がある恒星が起こす大爆発がⅡ型の超新星と呼ばれます。恒星は水素を燃料として核融合反応で熱と光を出していますが、やがて水素を使い果たすと核融合反応で生成されたヘリウムを燃料として核融合反応が起きます。恒星は膨らもうとする力と縮もうとする力とが釣り合っているのですが、ヘリウムによる核融合反応では放出されるエネルギーが水素による核融合のときより多い(炭素の原子核の質量はヘリウムの原子核3個よりわずかに少ないので、その差がエネルギーに変換されます)ので、星は膨張していきます。この状態の恒星を赤色巨星といいます。ヘリウムも使い果たすと、生成物である炭素や酸素を使った核融合が始まり、最終的には中心部で鉄ができます。鉄の原子核では核融合反応が起こらないので、膨らもうとする力が失われて星の中心部で重力に負けて一気に崩壊(重力崩壊)が起きます。それにともなって大量の熱が発生して外層が衝撃波によって吹き飛ばされて大爆発を起こします。この爆発のエネルギーは非常に大きいので、恒星の内部の核融合反応では生成されない鉄より重い元素が作られます。爆発の後、質量が大きければブラックホールになりますが、質量が足りないと中性子星になります。中性子星は角砂糖1個の大きさで10億トンもの質量を持つ星ですが、それでもブラックホールと比べれば質量が小さいといえます。

Q15 「ブラックホールからは光の速さでも脱出できないというのは分かっています。でしたら、どれぐらい速ければ脱出できますか?」(女性/50代)

A15 :熱力学では温度は絶対零度(摂氏マイナス273.15度)よりも低くなりません。例えば、摂氏マイナス1万度といった温度は空想できたとしても実際にはあり得ません。温度には下限(最低温度)があるのです。同じように、速さにも上限(最高速度)があります。秒速約30万kmの光が一番速く、それを超える速さ(例えば、秒速100万kmなど)は「絶対零度よりも低い温度」と同じように空想することは出来ますが、実際には出せません。一番速い光でもブラックホールから脱出できず、光の速さを超える速さがない以上、「ブラックホールから脱出できる速さ」はあり得ません。

Q16 「光が宇宙で一番速いって言いますが、光の速さで飛んでいるロケットから光を出したら光の速さの2倍になるんじゃないですか?」(女性/50代)

A16 :いいえ、なりません。時速50kmで走っているトラックの荷台から進行方向へ向けて時速100kmでボールを投げたら、確かにボールの速さは50+100=150(km/h)となります。しかし、光の場合にはそうなりません。光の速さに限りなく近い速度で飛んでいるロケットから進行方向へレーザー光線を発射しても光の速さはやはり秒速約30万kmのままです。これを光速度不変の原理といいます。1887年にアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーが干渉計を用いてある実験を行いました。当時、「光は波の性質を持っている。波であれば波を伝える媒質(音波であれば空気が音を伝える媒質)があるはずだ」と考えて、その媒質をエーテルと呼んでいました。宇宙空間には目には見えないけれどもエーテルという物質が満ち溢れていてそこを光が伝わってくると考えたのです。しかし、いろいろ実験をしてもエーテルの存在を証明することができませんでした。そんな中、マイケルソンは「地球は1年かけて太陽の周りを公転しているので、東西(水平)方向に進む光の速度と南北(垂直)方向へ進む光の速度には違いが出るはずだ。それを測定すればエーテルの存在を証明できるに違いない」と考えました。地球の公転速度は秒速30kmほどで光の速さの1万分の1でしたから精度の高い干渉計を使えば、光の速さが東西方向と南北方向で異なった場合、干渉縞の移動が観測されるはずでした。しかし、東西方向でも南北方向でも干渉縞の移動は観測されませんでした。マイケルソンとモーリーの論文を読んで、「いや、そんなはずはない。きっと彼らの実験装置か実験のやり方に何か問題があったのだろう」と世界中の他の研究者も同様の実験を試みましたが、やはり光の速さに違いは見つけられませんでした。マイケルソン本人もどうしても納得できず、やり方を変えて大規模な実験を繰り返しましたが、誤差の範囲程度の違いしか観測できませんでした。光速度不変(一定)というのは、「誰かがそういった」とか「あれこれの理屈でそう考えられる」とかいうのではなく、実験の結果そうだったという話(しかも、実験を行った本人の予想に反してそうだったという話)ですので「光速度不変はおかしい」とか「間違いだ」といってもどうしようもありません。実際にそうなっているのです。光速度不変を認めて、それを大前提とした上で矛盾しないように理論を組み立てる必要があります。

Q17 「宇宙が誕生してから138億年だそうですけど、だったら地球から137億光年離れた場所に住んでいる人が地球と反対側を見たら、138-137=1だから、宇宙の果てまで1億光年しかないんですか?」(男性/10代)

A17 :いいえ、そうはなりません。地球から137億光年離れた人が地球と反対側を見ても宇宙はやはり138億光年の距離まで見えます。まず地球は宇宙の中心でも何でもないので、地球から138億光年離れたら宇宙の果てとなるわけではありません。光の速さより速く情報が伝わることはないので、この宇宙のどこに住んでいても、今見えるのは138億光年の距離までです。

Q18 「宇宙は膨張していて遠くにある銀河ほど速い速度で離れているそうですが、どんどん速くなったら光の速さを超えてしまうのではないですか? それって『この宇宙で一番速いのは光』という話と矛盾するように思います」(男性/10代)

A18 :矛盾はしません。「光より速いものはない」というのは、より正確にいえば、光より速く情報は伝わらないということです。確かに銀河が距離に比例してどんどん加速していけばやがて光の速さを超えてしまうでしょう。しかし、光の速さを超えて情報は伝わらないので、いまの時点でわたしたちがわかるのは宇宙が誕生した138億年前に出た光が届く距離、つまり、138億光年離れたところまでです。そこから先というのは、私達には知ることができず、私達には何の関係もありません。

Q19 「宇宙って寒いみたいですね?太陽の近くだとずっと昼間なのにどうして寒いんですか?」(男性/20代)

A19 :簡単に言えば、空気が無いからです。熱の伝わり方には伝導、対流、放射(輻射)の3通りあります。ほぼ真空の宇宙空間では伝導や対流は起きませんから、熱が伝わるのは放射(輻射)によるものです。地球で晴れた日の昼間暖かいのは、地面が光によって温められ、その熱が空気に伝わるからです。一般化していえば、光が物質に当って物質の分子が振動することで熱が発生します。宇宙空間には地面や空気に当るものは何もないので、光によって振動を起こす分子がありません。したがって、何かが温まるということがないわけです。宇宙船の場合、太陽の光が当たったところは非常に高温になりますが、光が当たっていない陰の部分は低温のままです。大気がない水星や月でも同じで、日なたと日陰の温度差が極端です。

Q20 「宇宙って真空なのにどうしてペシャンコにならないんですか?」(男性/10代)

A20 :地球のように大気がある星では袋に入れた空気を抜いていけば外からの圧力で袋はペシャンコに潰れます。しかし宇宙空間には外というものはありませんから、外から圧力が掛かることはありません。したがって、潰れてしまうことも無いわけです。

Q21 「宇宙って夜しか見えないんですか?」(男性/20代)

A21 :いいえ、宇宙は24時間いつでも見えています。昼間、晴れていれば太陽が見えますね。太陽は宇宙空間にありますから、太陽が見えているという事は私達が見ている空はそのまま宇宙に繋がっているという事です。昼間、肉眼では星が見えない(見えにくい)のは太陽の光が強すぎて星の弱い光がかき消されてしまうからです。望遠鏡を使えば昼間でも星を見ることができます。なお、地球で晴れた日の空が青く見えるのは大気中の分子に上方向から太陽光線があたって青い波長の光が散乱されるからです(横方向から太陽光線が当たれば、朝焼けや夕焼けのように空は赤く染まって見えます)。

Q22 「SFが好きなのですがホワイトホールとかワームホールってあるじゃないですか。ブラックホールは本当にあるみたいですけど、ホワイトホールは実在するんですか?」(男性/30代)

A22 :ブラックホールについては候補天体がいくつも見つかっています。一方、ホワイトホールは数式の上だけの存在です。実在しないかも知れません。ご存じのように、ブラックホールが「何でも吸い込んでしまう黒い穴」といったイメージ(実際には「穴」ではなく光さえ出られないほどものすごく重力が強力な星)で語られることが多いの同様に、ホワイトホールは「何でも吐き出してしまう白い穴」と捉えられています(「ホワイト」というのは恐らく「ブラック」との対比でそう呼んでいるので、実際に色が白いという話ではないでしょうが)。ワームホールは虫食い穴のことです。SF作品などでは「ブラックホールに飛び込んだ宇宙船がワームホールを通ってホワイトホールから飛び出すことで時空を超越して宇宙を縦横無尽に駆けまわる」みたいな設定がされますね。いわゆるワープ航法をそうした仕組みで理屈づけて説明するわけです。SFはサイエンス・フィクション(科学的な虚構)ですから、やはりそれなりに科学っぽい装いをしないと読者に示しがつかないので、使えそうなネタに飛びつくのかも知れません。いずれにせよ、いまのところは頭の体操というか数式のお遊びの話です。

Q23 「宇宙は膨張しているそうですが、アンドロメダ銀河が銀河系に衝突するんですよね? それって矛盾してませんか? 膨張してるんだったらどんどん離れていくはずじゃないですか?」(男性/20代)

A23 :宇宙が膨張しているというのは、地球から観察した銀河のほとんどが地球から遠ざかっているという観測事実を説明する上での仮説です。そう考えると、観測事実をうまく説明できるということです。音と同じように光にもドップラー効果があって、遠ざかっていく光源の光は赤い方へずれて見えます(赤方偏移)。アンドロメダ銀河の場合はわたしたちの銀河系(天の川銀河)に近いのでお互いの引力で近づいています。これはアンドロメダ銀河からの光が青方偏移していることでわかります。宇宙にも銀河がたくさん集まっているところとスカスカなところがあるので、銀河が集まっているところで銀河同士が衝突しても、宇宙全体が膨張しているということとは矛盾しません。

Q24 「1光年は何kmですか?」(男性/小学生)

A24:およそ9兆4,600億kmです。光の速さを秒速30万kmとすると、1分は60秒で1時間は60分ですから1時間は3,600秒で、1日は24時間、1年は365日ですから、30(万km)×3,600×24×365で求められます。計算するとおよそ9兆4,600億kmとなります。

Q25 「パーセクというのは何ですか?」(男性/20代)

A25 :天文学で使われる距離を表す単位です。一般には光年がよく知られていますが、『光の速さで1年かかる距離』といっても1年にはうるう年もあり、いろいろと不都合なので年周視差が1秒(1度の3,600分の1)となる距離を1パーセクと定義しています。1パーセクは約3.26光年となります。直角三角形ABCをイメージし、直角のBのところに太陽があり、Cの地球までの距離が1天文単位、このとき角CABの作る角が1秒のとき、太陽からその恒星までの距離ABは1パーセクになっています。


~図1(用語) 1パーセク~

Q26 「シリウスまで8.6光年と言いますが、遠くの星までの距離はどうやって測るのですか?」(男性/30代)

A26:レーダー・レーザー法、分光視差法、セファイド変光星を利用する方法、赤方偏移を利用する方法などがあります。火星や金星といった太陽系の惑星の場合、レーダー・レーザー法といってレーザー光を当ててはね返ってくるまでの時間を測ることでわかります。誤差は数mです。太陽系の外の恒星については視差を利用します。鉛筆を手に持って片目で見たときに左右の目で見え方が違うと思いますが、原理はあれと同じです。地球が太陽の周りを回っているのでそれを利用して遠くの星の見え方の違いを測って距離を計算で求めます。ただ、距離が遠くなると見え方の差(角度)も非常に小さくなるので、この方法で測定できるのは数千光年程度です。それより遠い天体については、別の方法を使います。例えば、HR図(ヘルツスプルング・ラッセル図)を用いてスペクトル型(色)から絶対等級(本当の明るさ)を求め見かけの等級(地球から見たときの明るさ)と比較することでその恒星までの距離を測る分光視差法などがあります。ある星が本当は明るいはずなのに暗く見えるなら、遠くにあると判断するわけです。他に、セファイド変光星の変光の周期から絶対等級を求めて距離を求める方法や赤方偏移の度合いを調べて銀河の速度を求め、それにハッブルの法則を当てはめて距離を計算する方法などもあります。ただし、分光視差法などは経験則や一定の仮定を置いた上での推定なので、将来より正しい値に改められる可能性もあります。

Q27 「1天文単位は何kmですか?」(男性/小学生)

A27:およそ1億5,000万kmです。太陽と地球との平均距離を1天文単位と定めています。光の速さで約8分20秒(500秒)の距離です。参考までに述べると、太陽から木星までの距離は5天文単位、土星までは10天文単位、海王星までは20天文単位です。

Q28 「ケフェイド変光星って何ですか?」(男性/10代)

A28:セファイド変光星と同じです。ケフェウス座のδ(デルタ)星が典型なので、この名前がついています。変光星は明るさが変わる恒星のことですが、その中でも脈動によって明るさが変化するものを脈動変光星と呼んでいます(「変光星」の種類や変光の仕組みについては「宇宙についてのご質問」のA11をご参照ください)。セファイド変光星は脈動変光星の一種であり、絶対等級が比較的大きな黄色超巨星で規則正しく変光するのが特徴です。セファイド変光星が注目されるのは、「宇宙の灯台」として役立つからです。米国の女性天文学者のヘンリエッタ・スワン・リービット(1868-1921)はハーバード大学の天文台でマゼラン雲の中にある変光星の写真乾板を調べていてあることに気付きました。地球からマゼラン雲の中にある変光星までの距離はどれもほぼ同じと考えて良いとすると、光は同じ明るさならば遠くにあるほど暗く見えますから、絶対等級で明るい星ほど見た目の等級でも明るいはずです。ここまでは当たり前の話です。ここからがリービットの発見なのですが、見た目の等級を調べると、変光周期が長いほど見た目で明るいという関係があったのです(周期光度関係と呼びます)。地球からの距離が同じなのですから、これは変光周期が長いほど絶対等級でも明るいということを意味します。明るい星ほど質量が大きく、大きな星ほど脈動に時間がかかると思えば分かり易いかも知れません。この関係を使えば変光周期が同じ、つまり、絶対等級が同じなのにAという変光星がBという変光星より明るく見えた場合、Aの方が地球から近くにありBの方が遠くにあると分かります。もう少しきちんと言えば、光の明るさは距離の2乗に反比例するという関係が成り立っているので、距離が2倍になれば明るさは4分の1、距離が3倍になれば明るさは9分の1、距離が4倍になれば明るさは16分の1、距離が5倍になれば明るさは25分の1となります。この相関関係を利用する事で宇宙の遥か彼方にある銀河までの距離を求めることが出来るのです。リービッドは1912年に小マゼラン雲にあるセファイド変光星の周期と明るさについての研究を発表しました。リービッドの発見によって「アンドロメダ大星雲やマゼラン雲はわたしたちの銀河系の中にあるのか?それとも、外にあるのか?」という長年の大論争に終止符が打たれ、アンドロメダ大星雲やマゼラン雲は私達の銀河系(天の川銀河)の外にある別の銀河、アンドロメダ銀河やマゼラン銀河であることが分かったのです。

Q29「赤方偏移(せきほうへんい)って何ですか?」(男性/20代)

A29:ドップラー効果をご存じでしょうか? サイレンを鳴らしながら近づいてきた救急車が目の前を通り過ぎると、サイレンの音が急に低く間延びしたように聞こえますよね。あれが音のドップラー効果と呼ばれるもので、音が波の性質を持っている事から起こります。波長の短い音は高く、波長の長い音は低く聞こえます。音源が私達(観測者)に近づいて来るときには音が高い方にズレて、遠ざかるときには低い方にズレて聞こえます。光も波の性質を持っており、救急車のサイレンと同じような現象が起こるのです。音であれば音が高い低いでしたが、光の場合は色の違いとなります。波長が短い光は青く、波長が長い光は赤く見えます(可視光線に限りませんが)。具体的には、わたしたち(観測者)に光源が近づいてくる場合には青い方向にずれて、遠ざかる場合には赤い方向にずれて見えます(光のドップラー効果)。この赤い方向にずれて見える現象を赤方偏移と呼んでいるのです。ある光源について赤方偏移が観察されたということは、その光源は私達から遠ざかっているという事です。米国の天文学者ヴェスト・スライファーは1912年に赤方偏移が見られる銀河を発見しました。1929年に米国の天文学者のエドウィン・ハッブルと助手のミルトン・ヒューメイソンはセファイド変光星を利用して様々な銀河を観察し、それらほとんど全てに赤方偏移が見られ、しかも遠くにある銀河程その度合いが強い事を発見しました。これらの発見は宇宙が風船のように膨張している証拠とされました。

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Q1 「星に興味が湧きました。天体望遠鏡を買おうと思うのですが、数千円ぐらいの望遠鏡でも十分ですか?やはり高倍率のがいいですよね?」(男性/20代)

A1 :望遠鏡については架台がしっかりした物が良いと言われます。少し風が吹いた位でグラグラするようではまともには使えません。望遠鏡の倍率は接眼レンズを交換すれば変更出来るので購入の際の目安としてはほぼ無意味です。『高倍率=高性能』ではありません。大切なのはむしろ口径です。口径が大きいと像が明るく見えます(口径が2倍になれば、面積は4倍になるので集められる光の量も4倍になります)。小さな口径の望遠鏡で無理をして倍率だけを高くしても、暗くなるだけですし、そもそも高倍率だと視野に見たい天体を入れる(導入する)ことすら非常に困難です。何をしたい(どんな天体を見たい)かにもよりますが、まともな天体望遠鏡を購入されるのなら予算は最低でも5万円以上は見ておくべきでしょう。天体写真など撮影されるおつもりならもっと掛かります。無論安くても良い望遠鏡もありますから、口コミなども十分調べた上で検討されるべきでしょう。それから街明かりがある場所ではいくら立派な望遠鏡でも星はほとんど見えません。高価な機材を揃える前にその辺りもしっかり確認された方が良いと思います。

Q2 「流星群を見るには、倍率何倍ぐらいの望遠鏡が必要ですか?」(男性/30代)

A2 :流星群は放射点から四方八方に流星がとぶので、空全体を眺めた方がよいでしょう。視野が狭い望遠鏡は流星群を観察するのには向いていません。街明かりに邪魔されない開けた安全な場所にシートなどを敷いて、そこに寝転がって夜空を眺めるのが一番よい方法です。くれぐれも安全な場所・安全な方法で楽しんでください。

Q3 「月は大きいので見ればわかりますが、星座早見盤を使っても惑星が空のどこに見えているのか分かりません。子どもに尋ねられても『赤いから火星かな?』ぐらいしかいえないのですが、惑星の位置はどうやればわかるのですか?」(女性/30歳台)

A3 :惑星の位置は『天文年鑑』に詳しく載っています。手軽なのは、パソコンで天体シミュレーション・ソフトを使うことです。有料の物も、無料の物もあります。最近はスマートフォン向けのアプリも出ていますから、そういうのを使うとどこにどんな惑星が見えているのか簡単に分かります。そういった便利なツールを使ってあらかじめ知識を仕入れておきます。例えば2014年の5月でしたら、西の空にはふたご座のところに木星、南の空にはおとめ座のところに火星、東の空にはてんびん座のところに土星が見えていますから、そういった知識が頭に入っているとお子さんから南の空に見える赤い星について質問されたときに『あれは火星だよ』と自信を持って即答出来るでしょう。

Q4 「流星群を観察するときに注意すべきことやこれは必要だというものはありますか?」(男性/40代)

A4 :注意することは『とにかく安全に』ということですね。街中では暗くて周囲が開けた場所というのがなかなかありませんが、暗い場所だと足場が悪かったりして転んでケガをしたりすることもありますし、駐車場などだとクルマに轢(ひ)かれたりすることもあります。昼間のうちに方角や近くにトイレなどどんな施設があるのかも含めて十分に下見をしておきましょう。特に、小さな子どもさんの場合は保護者の方と必ず一緒に観察してください。なお、私有地や学校のグラウンドなどに勝手に立ち入るとトラブルになるので注意しましょう。最低限必要なものは、星座早見盤、赤いセロファンで覆ったライトぐらいでしょうか?(そのままのライトの光だと目に刺激が強すぎて、せっかく暗闇に慣れて星がよく見えるようになった目が元に戻ってしまいます)立ったまま夜空を見上げていると5分もせずに首が痛くなりますから、流星群の観察は寝転がって空を眺めるのが一番です。寝転がるためのシートや枕の代わりになるもの(毛布など)が必要です。あとは夏場だと虫に刺されたりするので虫よけスプレーや虫刺されの薬もあるとよいでしょう。冬場は寒いのでしっかり対策してください。

Q5 「望遠鏡について教えてください。倍率は高いほど大きく見えるんだろうなとわかりますが、カタログとかに載っているF値だとか集光力だとか分解能だとか最微光星だとかになるとさっぱりわかりません。ああいう数字って何か計算すると出てくるのですか?」(男性/30代)

A5 :はい、計算すると出てきます。屈折式の望遠鏡を例にとって説明します。望遠鏡には、対物レンズと接眼レンズ(アイピースともいいます)という2種類のレンズがあり、月や星に向ける側にあるのが対物レンズで、目を近づけて覗き込むのが接眼レンズです。対物レンズは交換できませんが、接眼レンズは取り外して交換できます。接眼レンズを交換すれば、望遠鏡の倍率は変わります。
望遠鏡の倍率は、対物レンズの焦点距離/接眼レンズの焦点距離という式で求められます。例えば、対物レンズの焦点距離が600mmで接眼レンズの焦点距離が15mmなら、600/15で倍率は40倍とわかります。同様に、対物レンズの焦点距離が600mmで接眼レンズの焦点距離が8mmだと、600/8で倍率75倍となります。要するに、倍率を上げようと思えば、焦点距離の短い接眼レンズと組み合わせればよいわけです。
とはいえ、倍率は高ければ高いほどよいわけではありません。適切な倍率というのがあります。望遠鏡の口径をmmで表したものの、2倍くらいが限界でそれより倍率を上げてもただ暗く見えるだけで何も良い事がありません。例えば、口径が5cm=50mmの望遠鏡だったら、適切な倍率の上限は50×2=100(倍)となります。口径50mmの望遠鏡で225倍だとか750倍などという倍率が出せると謳っても数字のお遊びでしかありません。また、倍率が高いと見たい天体を導入する(望遠鏡の視野に入れる)のが難しくなります。極端にいえば、肉眼でそこに見えている月を望遠鏡で見ることができなかったりします。
F値は、対物レンズの焦点距離/口径で求められます。例えば、対物レンズの焦点距離が800mmで口径が50mmだったら、800/50=16でF値は16となります。
集光力は肉眼の何倍光を集められるかを示すものです。(口径/瞳孔の直径)を2乗して求められます。瞳孔の直径は7mmとされるので、口径が50mmの望遠鏡だと、(50/7)の2乗で51倍とわかります。口径が100mmだと、(100/7)の2乗で204倍となります。口径が2倍になると、集光力は4倍になっています。式からわかるように、集光力は望遠鏡の口径によってのみ決まるということです。
分解能は分解能力のことで、星と星とが並んで光っているとき、それがどの程度離れていればきちんと2つの星としてわかるか(分離できるか)を示すものです。分解能の数字は小さいほどよいといえます。分解能は「ドーズの限界」という経験則や回折理論値で求めた数字が使われ、大雑把には、120/口径で求められます。口径50mmなら、120/50=2.4(秒)です。
最微光星は限界等級ともいわれますが、要するに、どれぐらいの明るさ(暗さ)の星まで見えるかを示すものです。カタログに載っている数字は、空気のきれいな暗い場所でどこまで見えるかという理論上の値なので、スモッグだったり街明かりがじゃまする場所だと当然そんなには見えなくなります。理屈の上で見える限界の等級だとお考えください。計算式には対数を使いますのでここでは省略しますが、口径50mmなら10.3等級の星まで、口径100mmなら11.8等までは見えるはずです(ちなみに、十分暗い場所でも肉眼で見えるのは6等星ぐらいまで)。

Q6 「自動導入の望遠鏡ってありますよね? アレだと、見たい星を指定するだけで望遠鏡がガーッと動いて見えるようにしてくれるんですか?」(女性/50代)

A6 :それほど簡単ではないと思います。自動導入を謳っている望遠鏡もいろいろ発売されているようですが、一般的には最初に基準星(3つ)を手動で導入してやらないと見たい星をきちんと導入してくれません。操作に慣れた人でも設定に10分ぐらいはかかります。また、初期設定ができても、自動導入でピタリと真ん中に導入できるかというと、どうもそうでもないようです。見たい星が視野の中心からずれていたり、視野から完全に外れていることもあり得ます。その場合は手導で微調整してやらなければなりませんが、望遠鏡の視野は非常に狭いので慣れないと月のような大きな天体の導入ですら四苦八苦します。自動導入付きの望遠鏡は機材も重くなりますし、駆動するのにバッテリも必要ですから手軽に楽しめるかというとどうかなと思います。費用の面でもバカになりません(十数万円やそこらは最低でもかかります)。いずれにせよ、基準星を見つけて手動で導入できる程度の知識と技量は必要でしょう。北極星ぐらいは最低限見つけられないとお話にもなりません。GPSを搭載して基準星の導入など一連の初期設定が不要と謳う高性能な望遠鏡も発売されているようですが、現状では星座も何も知らない状態でも自動導入付きの望遠鏡さえ買ってくれば星空を自由自在に楽しめるわけではありません。星空を望遠鏡で眺めたいのであれば、天文知識のある人にお願いして見せてもらったり、それこそお近くの天文台に出かけて見るのが手軽でしょう。

Q7 「望遠鏡で景色を見たら上下が逆でした。不良品でしょうか?」(女性/30代)

A7 :不良品ではなく、それで正常だと思われます。一般的な(凸レンズ2枚を使うケプラー式の)天体望遠鏡で地上を見た場合、像は倒立します(上下も左右も逆に見えます)。宇宙には上下も左右もないので、逆になっても観察するときには困らないので望遠鏡はそういう作りになっています。正立プリズムを使えば望遠鏡で風景を見ても上下左右が逆になりませんが、余計なレンズやプリズムを組み込むと像がよく見えなくなるなどいろいろと問題が出てくるので一般的な望遠鏡では倒立した像がそのまま見える構造になっています。風景を見るのなら望遠鏡よりもコンパクトで簡単に扱える双眼鏡やフィールドスコープがあります。なお、高いところにある天体を屈折式の望遠鏡で観察すると姿勢が苦しくなるので天頂プリズムを使いますが、天頂プリズムを通すと鏡に映したときのように上下は正立しますが、左右が逆になります。

Q8 「ガリレオの作った望遠鏡では上下左右が正しく見えたそうですが、いまの望遠鏡では上下左右が逆になっています。ガリレオの望遠鏡の方が優秀だと思います」(男性/10代)

A8 :正立像が得られるかどうかを判断基準にすればそうなるかも知れませんが、ガリレオ式の望遠鏡が廃れてしまい、今日ではオペラグラスぐらいにしか使われていないのにはそれなりの理由があります。ガリレオ・ガリレイが作った望遠鏡は、凸レンズと凹レンズを組み合わせたものです。ガリレオ式の望遠鏡では、おっしゃるように像は正立しますが、視野が狭く高い倍率にすると見たい天体を導入する(視野の中心に入れる)ことが非常に難しくなるという欠点がありました。現在、一般的な屈折式の望遠鏡はヨハネス・ケプラーが考案したケプラー式と呼ばれる凸レンズを2枚使うものです。ケプラー式の望遠鏡は像は倒立します(上下左右が逆になります)が、視野が広く高い倍率にしても天体の導入がしやすいので広まりました。ケプラー式の望遠鏡でも正立プリズムというものを組み合わせれば、正立した像を得られます。もっとも、地上とは違って宇宙には上下も左右もないので、倒立像で天体を眺めても違和感はなく、正立像にこだわる理由は特にありません。

Q9 「室内から月を望遠鏡で眺めましたがぼやけてよく見えませんでした。安物だからでしょうか?」(女性/30代)

A9 :明るい室内から窓ガラス越しに外を見たとすれば、部屋の照明が窓ガラスに映り込んでいるでしょう。その状態では月がよく見えないのは当然だと思われます。部屋の明かりを消せば多少は改善されるでしょうが、性能のよい望遠鏡でも窓ガラス越しだとぼやけて見えるでしょう。はっきりした像で月や星を観察されたいのなら、望遠鏡を部屋の外に持ち出して覗かれる方がよいと思います。私有地以外の暗くて開けた安全な場所で観察しましょう。屋外だと夏場は蚊がいますし、冬場は冷え込みます。十分対策をとってお楽しみください。

Q10 「望遠鏡で星を見ることができません。月はものすごく時間をかけてあちこち動かして何とか見えましたが、星はダメです。説明書を読んでファインダーを覗いて星を視野に入れていますが、望遠鏡の本体では全然見えないのです。ちゃんと接眼レンズもつけています。何がマズいのでしょうか? 私が買ったのはハズレの望遠鏡なのですか?」(男性/30代)

A10 :ファインダーの調整はされたのでしょうか? 購入したままのファインダーは調整されていません。きちんと光軸を合わせてやる必要があります。説明書にどの程度書いてあるのかわかりませんが、やり方を簡単に説明しておきます。まず、昼間のうちに望遠鏡本体の接眼レンズを覗いて遠くの鉄塔の先端などを視野の真ん中に入れておきます(太陽を見ると失明します[目が見えなくなります]から、太陽のある方に望遠鏡を絶対に向けないでください)。倍率が高いと地上物でも導入に四苦八苦しますので、焦点距離の長い接眼レンズを選んでなるべく低い倍率で導入します。この状態で望遠鏡が動かないようにしっかり固定します(繰り返しますが、うっかり太陽を見ないように十分注意してください。一瞬で目が焼けて失明します)。次にファインダーを覗いて視野の中心に同じ鉄塔の先端などが入るようにします。具体的には、ファイダーを固定している3本ないし6本のネジを緩めたり締めたりしていきます。このとき気を付けたいのは、ファインダーを真っ直ぐに覗くことです。ファインダーを上や下から覗いてしまうと、視野の真ん中に入っているつもりでも実際にはズレていることがあります。とりあえずうまくいったら、遠くにある何か別のものをファインダーで導入して、望遠鏡の本体でちゃんと導入できているか確認しましょう。ズレているようなら先ほどの手順でやり直します。きちんと合ったと思ったら、焦点距離の短い接眼レンズに交換して高い倍率でも視野の真ん中に来るかどうかチェックします。面倒に思うでしょうが、この調整を十分にやらないとファインダーを使って見たい天体を導入するのは難しくなります。見たい天体が見えない場合、ファインダの光軸が合っていない以外に考えられるのは、ピントが合っていないことぐらいでしょうか? ピントが合っていないと、文字通り月や星がピンぼけで見えるのでぼやっとした光にしか見えません。望遠鏡の取扱説明書にピントの合わせ方は載っているはずですので、ご確認ください。なお、どこでピントが合うかは接眼レンズを覗く人の視力によるので、覗いた本人がピント合わせをするのがよいでしょう。

Q11 「望遠鏡で星を見ていると、最初は視野の真ん中に入っていたのにいつの間にか視野から外れてしまいます。望遠鏡に触ったりしていないのにどうしてズレるのですか?」(男性/20代)

A11 :地球が自転しているので、それにともなって星は動いていきます。もう少し詳しくいえば、星は北極星の近くの天の北極を中心に時計の針と反対方向へ1時間に15度回転していくのです。導入した天体を自動で追尾してくれるコンピュータ制御の望遠鏡以外は、時間が経って視野から外れそうになったら自分で望遠鏡を動かして視野に入れ直してやる必要があります。

Q12 「天文台の望遠鏡だと、どれぐらい遠くの星まで見えますか?」(男性/50代)

A12 :望遠鏡で星が見えるか見えないかは、距離よりも明るさの問題です。すぐ近くでも非常に暗ければ見えないかも知れませんし、遠くても明るければ見えます。明るさでいえば、14等級位までの星は見える計算です(実際には、大気の状態などによって変わってきます)。

Q13 「色収差って何ですか? あと、コマ収差とか球面収差とかも何ですか?」(男性/20代)

A13 :まず、色収差の説明をします。光は波の一種です。赤い光は波長が長く、青い光は波長が短いのですが、短い波長の光ほど結像位置が短くなります。波長によって焦点の位置が異なるため色が滲んでみえる現象を色収差(いろしゅうさ)と呼びます。例えば、月の周囲が青く光って見えたりするのは色収差が出ているのです。対物レンズにシングルレンズを使った場合、色収差が非常に目立ちますが、焦点距離が長く口径の小さいレンズだと色収差を抑えることができます。対物レンズの焦点距離が長いということは鏡筒(望遠鏡の筒)が長くなるということですが、長すぎると扱いにくいので屈折率の異なる凸レンズと凹レンズ(クラウンガラスとフリントガラス)とを組み合わせて色収差を抑える工夫がなされました。そのようなレンズをアクロマートレンズ(色消しレンズ)といい、市販されている安い望遠鏡のほとんどはアクロマートレンズを使っています(現在、シングルレンズを使っているのはおもちゃの望遠鏡ぐらいです)。色消しレンズといっても、色がなくなる(白黒に見える)わけではなく、赤と青の色収差を抑えるという意味です。残念ながら、2枚のレンズの組み合わせでは色収差を完全に失くすことは無理なので、焦点距離の短いものほど色収差は目立ちます。紫色の光についても補正して色収差を極限まで抑えたレンズをアポクロマートレンズといい、EDレンズやフローライト(蛍石)レンズなどがありますが、値段が高くなります。昔の望遠鏡は色収差を抑えるために鏡筒の長いものが多かったのですが、自宅のベランダなど狭いところで扱いにくいため、最近は鏡筒の短いものが主流です。そのため、設計が大雑把な望遠鏡だと、色収差が派手に出ることがあります。色収差は主に屈折式望遠鏡で問題となります。次に、コマ収差の説明をします。レンズに斜めから光が入ると彗星の尾のように光が伸びて見えます。これがコマ収差です。コマ収差は単色光(1つの色の光)でも発生します。コマ収差がひどいと星を見ても点に見えずに、彗星のように尾を引いて三角に見えたりします。光を集めるのに凹面鏡(主に放物面鏡)を使う反射式望遠鏡では視野の周辺でコマ収差が発生し、星の像が引き伸ばされて楕円に見えます。コマ収差を抑えるには口径を絞ってやればいいのですが、そうすると光が減って像が暗くなってしまいます。最後に、球面収差ですが、これも単色光でも発生するもので、レンズを通った光が1点に集まらない現象です。球面収差があると、いくらピントを調整しても像がシャープに見えずにぼやけて見えます。球面収差は倍率が高いほど目立ちます。

Q14 「望遠鏡を発明したのは誰ですか? ガリレオですか?」(男性/小学生)

A14 :ガリレオ・ガリレイではありません。一般的には、ハンス・リッペルスハイ(ハンス・リッペシーとも)というオランダの眼鏡職人だとされています。もっとも、リッペルスハイが望遠鏡の特許をオランダ政府に申請したところ「そんなものはもう皆知っているし、そんな単純な構造のものに特許は認められない」という理由で却下されているので、望遠鏡そのものはリッペルスハイより前にあったと思われます。リッペルスハイとほぼ同時期にオランダのメチウスというレンズ職人も特許申請をしていますが、やはり却下されました。実際、イギリスのロジャー・ベーコンは1267年の著書『大著作』の中で2枚のレンズを使うと遠くの景色が大きく見えると述べていますし、1580年代にイタリアの学者が望遠鏡を作ったという記録もあります。リッペルスハイと同じオランダのヤンセン親子も望遠鏡を作ったといわれます。ただ、リッペルスハイの望遠鏡はよくできていたようでオランダ政府から報奨金を受け取っています。リッペルスハイの望遠鏡については、失敗作のレンズで遊んでいた子どもたちが偶然2枚のレンズを両手に持って遠くを見たところ、教会の塔が近くに見えて驚いてリッペルスハイに教え、半信半疑のリッペルスハイが覗いて見たところ本当に遠くの景色が近くに見えたので「これは大発見だ!」と望遠鏡を作ったという逸話があります。もっとも、「ニュートンがリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見した」という話もそうですが、この手の話は後から作られたものが多いので本当にこういう出来事があったかどうかはわかりません。ちなみに、ガリレオはリッペルスハイの発明の1年後の1609年にフランスに住んでいた教え子からの手紙で望遠鏡について話を聞き、「それは多分レンズを組み合わせているに違いない」と考え、眼鏡職人にレンズの磨き方などを教わりながらさまざまな種類のレンズを組み合わせて試行錯誤を繰り返して望遠鏡を自作しました。ガリレオの業績はそれまで地上の景色を眺めることにしか使われていなかった望遠鏡で月や太陽や星の観測をしたことです。

Q15 「雑誌の広告に口径40cmのドブソニアンが半額で出てました。ああいうので土星とか見たら写真みたいに大きく見えますよね? 思い切って買ってしまおうかと思うんですけど、どうですか? 自動導入だったら、天文の知識がなくても大丈夫ですよね?」(男性/60代)

A15 :まず口径40cmのドブソニアンを使っても土星は写真のように大きくは見えません。写真のような土星が見えると思って望遠鏡を覗くとがっかりすることでしょう。望遠鏡は買う前に実物でご覧になることをおススメします。近くに天文台があれば実際に望遠鏡で土星がどの程度の大きさに見えるかご自身の目で確認された方が良いでしょう。それから口径が40cmにもなるとかなりの重さになります。天文ファンには腰を痛めた方が大勢いますが、無理な姿勢で重い望遠鏡を持ったのが原因です。しっかりした架台・がっしりした三脚だと、それだけで100kg超えるようなものもざらです。自宅に観測室を作ってそこに設置して動かさないというのならともかく、クルマに積んでどこか空のきれいなところに出かけて観察するといった使い方を考えておられるのなら、重さにご注意ください。あとは普段の置き場所も考えましょう。口径5cmくらいの屈折望遠鏡でも普段は結構邪魔になるものですよ。なお、今年(2015年)でしたら、天文台が開館している20時頃に土星が見えるのは6月頃からです。土星はさそり座とてんびん座の間に見えます。もっと早くご覧になりたいのでしたら、明け方の東の空で探してください。明るいのですぐ見つけられるでしょう。それから自動導入ですが、性能に関して過剰な期待は禁物です。操作についても、最初に基準星の設定をしなければなりません。一般的には3個ぐらいの星を手動で導入して、望遠鏡の極軸をきちんと合わせる必要があります。その程度の天文の知識は最低限必要です。コントローラーの小さな液晶画面に表示された「カペラヲドウニュウシテクダサイ」というメッセージを見て、「カペラってどれだよ!?」と慌てふためくようでは使うのは無理でしょう。ボタンをポンと押せば、見たい天体を視野のど真ん中にピタリと入れてくれるというような自動導入装置は将来的にはどうかわかりませんが少なくともいまのところありません。まだまだ発展途上の技術です。

※ドブソニアンというのはドブソニアン望遠鏡のことで、経緯台式の反射望遠鏡をベースとして米国のアマチュア天文家ジョン・ロウリー・ドブソンさんが考案したタイプの望遠鏡です。大口径で低コストという点で天文ファンの間では人気があります。

Q16 「大きな望遠鏡がハワイとかの高い山の上に作られるのはどうしてですか? 宇宙に近いからですか?」(男性/小学生)

A16 :山の上だと、街の灯りにじゃまをされずに星空をくっきりはっきり見ることができるからです。山の高さは世界で最も高いエベレストでも9,000m(9km)以下ですが、地球に最も近い月でも地球との距離は平均で38万kmです。

Q17 「初心者です。望遠鏡を買おうと思ってネットでいろいろ調べたのですが、どれがいいのかさっぱりわかりません。赤道儀という言葉があちこちで出てきましたが、それは買った方がいいのでしょうか? 無知で済みません」(男性/20代)

A17 :望遠鏡の基本的な構造は、鏡筒、架台、三脚の3つです。鏡筒というのは望遠鏡の筒の部分ですね。三脚は説明しなくてもいいでしょう。架台は三脚と鏡筒とを結びつけている台です。赤道儀というのはこの架台の形式の1つです(もう1つの形式は経緯台といいます)。望遠鏡で何をされたいかにもよりますが、初めて購入されるのであれば、赤道儀はおススメしません。赤道儀は、高い、重い、仕組みがわかりにくい、操作が難しいなどの点で初心者向けとはいえないからです。もっとも、天体写真を撮るのなら赤道儀は必須です。とはいえ、写真が撮れるようなまともな赤道儀はかなり高価です(安い赤道儀は形がそれっぽいだけで使い物にならない「なんちゃって赤道儀」だと思ってください)。月や星を目で見て楽しむのであれば、経緯台を強くおススメします。経緯台は水平方向と垂直方向に鏡筒を向けることができるので、初めて望遠鏡を使う方でも直感的に操作できます。一方、赤道儀は最初に極軸合わせという準備作業が必要です。これがきちんとできないと赤道儀の意味がなくなります。極軸合わせというのは、望遠鏡の極軸を天の北極(北極星のすぐ近く)に正確に向けることをいいます。ご存じのように、地球は自転していますから夜空を眺めていると天の北極を中心として時計の針と反対方向に回って見えます。ということは、望遠鏡である星を視野の真ん中に入れたとしても、時間が経てば視野からどんどん外れていってしまうということです。倍率が高いと見ているうちにどんどん外れます。このような場合、赤道儀では動いていく星を簡単に追いかける(追尾する)ことができます。特に、写真を撮る場合、星の光は非常に弱いのでシャッターを長い時間開放しておかないと写りませんが、そのままだと星が動いて像が流れてしまうので動きに合わせて望遠鏡を動かさなければなりません。これが写真撮影には赤道儀が必須という意味です。眺めるだけなら、視野から外れてもまた望遠鏡を動かして視野に入れ直せばいいだけなので、赤道儀はいりません。せいぜい微動装置があれば十分です。

Q18 「この宇宙には光よりも速いものはないのに、なぜ望遠鏡では100光年とか1000光年とか先が見えるのですか?」(男性/20代)

A18 :ものが見えるということは、目に光が届いているということです。望遠鏡で見える100光年離れた場所の星の姿はその星の100年前の姿です。望遠鏡は100光年離れた場所の星のいまの姿を見せているのではありません。光が届くのに100年かかるからいま見えているその星の姿は実際には100年前の姿なのです。音で考えてみましょう。音の伝わる速さを秒速340mとすると、いま花火を打ち上げた音が2km(2,000m)離れた場所にいる人に聞こえるのは2,000÷340でおよそ6秒後です。その人が聞いた花火の音は実際には6秒前に出た音であり、「今」出た音ではありません。光でもこれと同じ事が起こっているとお考えください。

Q19 「望遠鏡の導入についてお尋ねします。最近子どもにせがまれて望遠鏡を買いました。月や目に見える星はファインダーで探せば導入できますが、目に見えない星雲とか星団の場合はどうするのですか? 星空の図鑑などを頼りにして『あの辺りにあるはず』と望遠鏡を向けても全然導入できません」(男性/30代)

A19 :赤道儀であれば、きちんと極軸を合わせてあれば肉眼ではわからない星雲・星団も星図を頼りにして赤経・赤緯から導入できます。経緯台の場合も、天文シミュレーション・ソフト(無料のものもあります)を使うことで方位と高度がわかれば導入できるはずです。とはいえ、実際には赤道儀にせよ、経緯台にせよ、作りが怪しくてぐらぐらだったりするものもあるので(特に、低価格の「入門機」とされる望遠鏡)、なかなか導入が困難なのが事実です。最終的には「慣れ」の問題となります。ファインダーの視野にどれくらいの範囲まで見えるのかが分かるようになれば導入は楽になります。それから、ご存じとは思いますが星雲・星団はほとんどの場合写真のようにカラフルには見えません。白くぼやっとした雲のようにしか見えないのです。その為、視野のど真ん中に導入できていても気付かないないことがあります。実際、天文台の大型望遠鏡を使って星雲・星団を導入しても「見えない」「どこにあるのか分からない」と仰るお客様が時々いらっしゃいます。人間の目というのは、視野の中心付近の細胞は色の違いは分かっても弱い光だと分からないので、目を逸らし気味にして覗かないと淡い星雲・星団は見えない事があります。中心を凝視しないようにしつつ、中心に神経を向けるというのは意外と難しいのですが、コツを掴めばなんとかなります。星雲・星団としては「M○○」と呼ばれるメシエ天体は(一部例外はありますが)比較的探しやすく口径の小さな望遠鏡でも見えますから、まずはその辺りで練習されてはどうでしょうか?

Q20 「望遠鏡の自作について。ネットで調べたら、百均の虫眼鏡2個で望遠鏡ができるみたいです。さっそく適当なのを買ってきて、サランラップの芯にくっつけてみましたが、まったく何も見えません。やっぱり百均の安物ではダメなんでしょうか? 子どもの夏休みの自由研究に使えるかもと思ったんですけど…」(男性/30代)

A20 :百均の虫眼鏡だからダメというよりも、虫眼鏡の焦点距離は調べられたのでしょうか? 望遠鏡は筒の両端にレンズをつければ見えるというものではなく、対物レンズの焦点距離に合わせた長さの筒を使って、そこに接眼レンズを持ってこなければピンボケで何もわかりません。虫眼鏡の焦点距離は昼間太陽の光を集めてみれば分かります(光が集まったところは非常に高温になって発火の危険がありますのでご注意ください)。焦点を結んだときの距離をメジャーなどで測っておいて、それに合わせた長さの筒を用意してやればピントが合います。焦点距離が長すぎると、紙製の筒だと剛性が足りませんから、少々重くなりますが、塩ビのパイプなどを使った方がよいでしょう。なお、望遠鏡の倍率は「対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離」なので対物レンズにする虫眼鏡と接眼レンズにする虫眼鏡が同じだと、倍率1倍となってちっとも大きく見えません。ご注意ください。接眼レンズに虫眼鏡を使い、対物レンズに老眼鏡を使う場合は、老眼鏡の度数が高いほど焦点距離は短くなります。例えば、度数が3.0だと焦点距離は約33cmですが、度数が2.0だと50cmとなります。対物レンズの焦点距離が長く、口径を絞るほど像はシャープに見えます(口径が小さいとその分暗くなりますが、月のような明るい天体なら大丈夫でしょう)。また、レンズを取り付ける筒の内部は艶消し塗料で黒く塗るか植毛紙を貼るなどすればコントラストがよくなります。欲張って倍率を高くすると、望遠鏡を手で持って観察するのが難しくなるので、カメラ三脚などを使わないのなら倍率は10倍ぐらいに抑えておいた方がよいでしょう。それから、完成した望遠鏡をお子さんに使わせるときには、「太陽を絶対見ないように!」と注意してください。失明の危険があります。

Q21 「天体写真って、望遠鏡とデジカメがあれば簡単に撮れますよね? 馬頭星雲とか撮りたいんですけど」(女性/50代)

A21 :それほど簡単ではありません。まず、入門用として販売されている初心者向けの望遠鏡の大半はデジタルカメラの取り付けができません。架台が弱くて、カメラのような重いものをぶら下げるときちんと固定できないのです。したがって、それなりにしっかりした架台(自動追尾機能のある赤道儀)の望遠鏡を用意しなければ撮影は無理です。撮影に入る前に、望遠鏡の極軸合わせをきちんとやるのは大前提です。次に、デジカメを望遠鏡にただ取り付けてシャッターを押せば撮れるわけではありません。風景や人物であれば、特に何もしなくてもオートフォーカスでピントが合ってちゃんと撮影できますが、星空はそうはいきません。何もしないで夜空に向けてシャッターを切っても、ストロボが光って真っ暗な空が写るだけです(はるかかなたにある天体までストロボの光が届くことはあり得ませんし、周囲に他に天体写真を撮影している方がいらっしゃった場合、ストロボ発光は非常に迷惑となります)。基本的にオートフォーカスは星空を撮影するような暗い場所では機能しません。手ぶれ防止も誤動作の原因となります。記録画像の保存形式もJPEGではなく、RAWモードにしシャッター速度もバルブに合わせ、絞りは開放にします。その他にホワイトバランスやISO感度の設定、色空間、ピクチャースタイル(ピクチャーコントロール)、ノイズリダクション機能や高感度ノイズ低減機能の設定などやるべきことはたくさんあります。これらの設定がきちんとできないと、まともな天体写真は撮れません。月はスマートフォンでもとりあえず撮れますが、一般に、天体写真はデジカメと望遠鏡さえあればすぐ撮れるほど簡単なものではないのです。特に、天文雑誌に載るような美しい天体写真は高価な機材を使いありとあらゆるテクニックを駆使して撮影されたものです。ああいった写真が簡単に撮れると思ってはいけません。新車1台分ぐらいの出費は覚悟しましょう。なお、いくらすばらしい機材を用意しても、肝心の星空が街明かりの影響などで残念なものであれば、残念な写真しか撮れません。馬頭星雲は眼視ではまず見えませんし簡単に撮れる対象ともいい難いので、そのことは頭に入れておいてください。

Q22 「SFの世界では光の速さを超えるワープ航法は当たり前ですが、実際にワープって可能なのですか?」(男性/30代)

A22 :数式の上では相対性理論と矛盾しない形でワープは可能とする研究もあるようですが、頭の体操というかお遊びの話であり、ワープ航法なるものを専門として取り組んでいる研究者はいないのではないでしょうか?

Q23 「宇宙船から地球を撮影した写真を見ても、地球の周りは真っ暗で星は全く見えません。空気が邪魔をしないから地上より星がくっきり写りそうに思うのですが、どうしてですか?」(男性/20代)

A23 :地球を撮影するときには、地球のような明るい被写体がよく写るようにシャッター速度を短めに設定しているからです。地上でもそうですが、星の光は弱いのでシャッターを開放し長時間露出しないと写りません。昼間の街なのに、誰もいない写真をご覧になったことがあるでしょうか? あの写真もシャッターを遅くして長時間露光して撮っています。動いている人やクルマは写らず、建物など動いていないものだけが写るのでああいう不思議な写真が撮れます(長時間露光すると、そのままでは写真が明るくなり過ぎて真っ白になってしまうので、NDフィルタという光の量を抑える特殊なフィルタを使います)。ハッブル宇宙望遠鏡のように、星を撮影するために設定されたカメラを使えば、当然星は地上よりくっきり写ります。なお、地上で見える星は空気の影響でぼやけているのでその分実際より大きく見えます。宇宙船からだと星は完全な点光源になります。

【追記】下の写真は2015年6月29日(月)にシャッター速度も何も考えずに一眼レフカメラのオートフォーカスで月(月齢13くらい)を撮影したものです。肉眼では周囲に土星やさそり座の星々が見えていますが、周りには全く何も写っていません。月の模様(海)すら写っていませんから、月の模様が鮮明に映るようにするにはもっとシャッター速度を短めに設定しなければならないのは明らかです。そうなれば、いまですら写っていない周囲の星は当然写りません。


~写真1(ロケット) 周囲の星は写らない~

Q24 「ロケットは空気を押して飛ぶのに真空の宇宙をどうして飛ぶことができるのですか?」(男性/20代)

A24 :ロケットが飛ぶ原理は作用反作用の法則です。空気があるとかないとかは関係ありません。ロケットは真空中でも飛べます。ロケットのエンジンがガスを後方へ噴射すると、その反作用でロケットは前方へ押されていく、つまり飛ぶわけです。イカが泳ぐ仕組みもロケットと同じです。作用反作用は池で小石を積んだボートに乗って岸に向かって小石を投げたらボートがどうなるかを考えるとわかるでしょう。ボートは岸とは反対の向きに動き出しますね。後方へ石を投げたことの反作用で投げた人が反対方向へ押されて乗っているボートも動くのです。ヘリコプターの事故を記録した映像で、テールローターを失ったヘリコプターの機体がメインローターのブレードと逆方向に回転しながら墜落していくというのがありますが、あれも作用反作用の法則が働いている一例です。

Q25 「宇宙ステーションのような無重力状態で紙飛行機を飛ばしたらどうなりますか? 真っ直ぐに飛びますか?」(男性/10代)

A25 :円を描くように飛びます。真っ直ぐには飛びません。飛行機は翼が生み出す揚力(ようりょく)と飛行機の機体に働く重力とのバランスをとって飛んでいます。重力が働くところでは、風の影響などを無視すると、真っ直ぐ水平方向に飛ばした紙飛行機は重力に引かれてやがて下(地面)に落ちてしまいますが、無重量状態では上も下もないので翼に働く揚力だけで飛ぶことになってぐるぐると宙返りしてしまうわけです(揚力は空気が無いと発生しません)。実際に、宇宙飛行士の毛利衛(もうり・まもる)さんが1992年にスペースシャトル「エンデバー」に搭載された宇宙実験室の中で紙飛行機を飛ばす様子が動画撮影されています。

Q26 「アポロはどうして月にたった1回しか行かなかったのですか?」(男性/20代)

A26 :アポロが月に行ったのは1回だけではありません。アポロは、事故で引き返した13号を除いて、11号から17号まで計6回月に着陸しています。アポロは計画では20号まで月に送られる予定でしたが、国の威信を賭けた宇宙開発競争でライバルであったソ連(現在のロシア)に対して十分に優位に立てたこと、財政面で負担が大きくなっていたところに第一次石油ショックなどの経済状況の悪化が追い打ちをかけたことなどから17号を以て打ち切りとされました。

Q27 「宇宙ステーションの中で無重力状態になるのは、地球から離れて地球の重力が届かなくなったからですか?」(男性/10代)

A27 :いいえ、違います。地球を回る軌道にある宇宙ステーションも地球の重力を受けています。水を入れたバケツを振り回しても、中の水がこぼれないのと同じで、宇宙ステーションにはいわゆる遠心力が働いており、それが地球の重力とちょうど釣り合うので無重力状態(無重量あるいは微小重力の状態)になるのです。

Q28 「『アポロが月に行くには燃料が足りないから月着陸とかウソ。月の手前でUターンしただけ』という話をネットで見ました。どう足りないのか数字も計算も全くなかったので多分デタラメだと思うのですが、本当のところどうなのですか?」(男性/20代)

A28 :燃料が足りないという根拠がよくわかりませんが、その方はロケットが飛んでいる間ずっと燃料を使って噴射していると思っているのではないでしょうか? ボールは燃料を燃やしていませんが、手から離れても飛びますね? それと同じで、ロケットが地球から飛び出すまでは確かに燃料を使って噴射しますが、そこから先は姿勢や軌道を変えたりするときに噴射するだけです。月までずっと燃料を使うわけではありません。なお、月の手前でUターンすれば、逆噴射して止まった上で今度は地球に向けて噴射するのですから、月にそのまま向かったときよりもずっとたくさん燃料を必要とするはずです。

Q29 「人工衛星は見えますか?」(女性/30代)

A29 :はい、見えます。かなり高速で移動します。飛行機の場合は赤と白の航空灯が点滅していますが、人工衛星の場合は点滅しないので見分けがつきます。

Q30 「地球の周りには放射能が超強力なところがあるのに、アポロで月に行った宇宙飛行士は当然そこを通ったはずなのになぜ平気だったのでしょうか? 放射能を防ぐには厚さ2mの分厚い鉛の壁が必要なはずですが、アポロにはそんなものは用意されていませんでしたよね?おかしくないですか!?」(男性/20代)

A30 :確かに、地球の周りには地球の磁場によって捕えられた電子や陽子からなる放射線帯があり、ヴァン・アレン帯と呼ばれています。地球はすっぽりとヴァン・アレン帯に囲まれています。ご指摘のように、ヴァン・アレン帯の放射線は強力ですが、ロケットで通過する場合、ごく短時間であることに加えて、ロケットの外壁で守られていることや宇宙服を着ていることから乗り込んでいる宇宙飛行士の健康状態にはほぼ影響ありません。放射線にもいろいろ種類があって、α線やβ線は薄い紙や木の板ぐらいで十分遮蔽できます。分厚い鉛の壁がなければ放射線を遮蔽できないというわけでもありません。なお、放射能というのは「放射線を出す能力」のことですから、能力が漏れることはあり得ません。

Q31 「アポロが月面で撮った写真を見ると、太陽を背にして陰になっているはずなのに宇宙飛行士が真っ暗にならずに明るく写っています。スタジオで撮影したみたいに不自然でウソっぽく思います」(男性/20代)

A31 :別に不自然とは思えませんが? 月は自分で光を放っているわけではなく、太陽の光が月面に反射して光って見えます。太陽を背にした宇宙飛行士にも月面に反射した光が当たりますから、明るく見えるのは当然です。また、カメラを構えて撮影した宇宙飛行士の宇宙服に当った光も反射して被写体となった宇宙飛行士の陰の部分を照らします。

Q32 「アポロは月に行くときは大きなロケットを使いましたが、月から帰って来るときには使っていません。本当に月に行ったというのなら帰って来るときにも大きなロケットが必要なはずです。ロケットなしで月から飛び立って地球に帰って来られるはずがありません」(男性/20代)

A32 :月の重力が小さいということをお忘れではありませんか? 月の重力は地球の6分の1程ですから、地球から宇宙に飛び出すときのような大きな推進力は必要ありません。アポロの月着陸船は月面に降下する際に使った下降段と月面から離陸する際に使った上昇段という2つの部分から構成されています。総重量は約14トンで、下降段の重量が10トン、上昇段の重量が4トンです。月面では4トンは6分の1の670kg程になります。人類史上初めて月面に降り立ったアポロ11号の場合、アームストロングとオルドリンの両飛行士が乗り込みましたから、2人の地球上での体重を各々70kgとすれば、月面では6分の1の12kgの2人分で24kg。670+24=694kg、これに月で採取した岩石(月の石)が300kg(月面では6分の1の50kg)ありますから、ざっと750kgが月面を離陸する際の上昇段の重量ということになります。参考までに申し上げれば、地球からの打ち上げに使ったサターンVロケットは3,000トン近くあります。3,000トンのロケットを打ち上げるのと、750kgの月着陸船の上昇段を打ち上げるのに同じだけの推進力が必要なのでしょうか?

Q33 「アポロで着陸した宇宙船が月から飛び立つシーンがありますけど、あのビデオは誰が撮影したんですか?月には誰もいないはずなのに。あと炎が出てませんよね?宇宙船が飛ぶときは炎が見えるはずですよね?」(男性/10代)

A33 :着陸船の上段(上昇段)が月面を離陸する様子を撮影したのは月面車(ルナ・ローバー)に取り付けられたカメラです。もちろん無人で月軌道上の司令船から無線を使って遠隔操縦しています。操作に失敗して飛び立った上昇段を見失ってしまい、あらぬ方向を撮影したこともあります。上昇段から炎が見えていないというご指摘ですが、例えば、ジェット機が飛ぶときに真っ赤な炎を吹き出しているでしょうか?どんな色の炎になるか、そもそも炎が見えるかは燃料の種類によります。上昇段に使われたエアロジン50という燃料だと炎は見えません。

Q34 「アポロが本当に月面に着陸したのなら月面から見た地球の写真があるはずです。でも、そんな写真はありません。どうしてですか!?(男性/10代)」

A34 :NASAのイメージ・アーカイブには写真があります。例えば、これはアポロ11号のときに撮影されたものです。こちらはアポロ17号のときに撮影されました。月面から地球を撮った写真が少ないのは月面からだと地球がほぼ頭の真上に見えるからです。月面での写真は月面の様子や作業の状況を記録するために撮影されたので、カメラを真上に向ける機会がほとんどありません。

Q35 「月には酸素が無いのだからアポロがジェットエンジンを噴射して月から脱出出来るはずが無い」(男性/20代)

A35 :確かにジェットエンジンでしたら酸素がなければ噴射できませんが、アポロの場合はロケットエンジンです。燃料に酸化剤を含んでいるので周囲に酸素がない環境でも噴射できます。アポロ11号の着陸船だと、エアロジン50という燃料を使っていました。酸化剤は四酸化二窒素です。

Q36 「大気圏突入について。宇宙船が地球に帰って来るとき、進入角度が深すぎると摩擦熱で燃えてしまうというのは何となく分かります。でも、進入角度が浅すぎると宇宙に弾き飛ばされるというのがよく分かりません。地球の大気って宇宙と接してる辺りだと随分薄いんじゃないですか?そんな薄い大気なのに何故弾き飛ばされるんですか?」(男性/30代)

A36 :結論から申し上げれば、「大気圏再突入の際に角度が浅いと宇宙に弾き飛ばされてしまう」という事実はありません。「水切り」のイメージで語られることが多いのですが、全く理屈は異なります。地球は丸いので、地球の極率(丸み)より大きく軌道を曲げないと地球に戻れません。角度が浅すぎると高高度の薄い大気中を通るので空気抵抗による減速が十分働かず、楕円軌道を描いて再び宇宙に飛び出してしまうということです。楕円軌道ですから、ぐるっと回れば再突入のチャンスが訪れるはずですし最初より高度も下がっているのですが、大気圏に再突入する帰還カプセルは乗員が長時間滞在できるように作られていないので失敗すると二度目は厳しいと思います。また、角度が深すぎるときに燃えてしまうのは摩擦熱ではなく、断熱圧縮という仕組みによるものです。断熱圧縮された空気の温度は1万度を超えることもあり、分子の状態ではいられずに原子やイオン、プラズマの状態になります。仮に、逆噴射を何度か繰り返して十分に速度を落とせば帰還カプセルは発熱することなく地球に帰還できるでしょうが、実際には逆噴射を繰り返す(実質的にはずっと逆噴射し続ける)には燃料が足りないので空気抵抗を利用して減速します。火星のように大気の薄い惑星に着陸する場合、空気抵抗による減速はあまり期待できませんから別の方法を考えなければなりません。

Q37 「宇宙飛行士って、宇宙に行ってるとき以外は何をしてるんですか?」(女性/50代)

A37 :「野球選手は試合に出ているとき以外は何をしているんですか?」というのと同じような質問ですね。野球選手の場合、コマーシャルの撮影の仕事とかもあるでしょうが、練習(トレーニング)がほとんどでしょう。宇宙飛行士の場合も、次のミッションに備えた訓練が主です。宇宙ステーションなどに滞在中はさまざまな実験や作業などぎっしり詰まったスケジュールを効率よくこなさなければなりません。死と隣り合わせの宇宙空間で「あ、しまった間違えちゃった。まっ、いいか。しーらねっと、へへっ」では済まないのです。地上にいるときに繰り返し繰り返し徹底的に訓練しているからこそスムーズにできるのです。訓練の他には、講演会などに呼ばれて宇宙について話す機会もありますし本を書いたりもします。

Q38 「人工衛星って何のために打ち上げるんですか? なぜ同じ軌道をぐるぐる回っているんですか?」(男性/10代)

A38 :打ち上げの目的は様々です。気象観測のためには気象衛星、通信を中継するためには通信衛星、放送のためには放送衛星、地球の観測には地球観測衛星(ランドサットなど)、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)でお馴染みの航行衛星、宇宙空間を観測するための科学衛星(ハッブル宇宙望遠鏡など)、他に軍事目的で情報収集や攻撃を行う軍事衛星(スパイ衛星やキラー衛星)もありますね。同じ軌道を回っているのは目的に照らして同じ軌道を回ってくれないと都合が悪いからです。例えばBS放送を受信する際に、いちいちそのときの衛星の位置を確かめてアンテナの向きを調整しなければならないとしたら、とても不便ではないでしょうか。

Q39 「宇宙服を着ないで宇宙空間に放り出されたら人間の身体はどうなりますか?爆発しますか?」(男性/小学生)

A39 :身体が爆発するというイメージは深海魚を海面上に引き上げたとき、目玉や内臓が飛び出している様子から連想されたのかも知れません。あるいは、風船やお菓子の入った袋が気圧の低い山の上ではぱんぱんに膨らむ様子からそう考えられたのかも知れません。しかし、人間の身体は風船やお菓子の袋などよりずっと丈夫なようで爆発するところまではいきません(潜水病のような症状で気絶してしまうでしょうが)。もっとも肺に溜まっている空気は気圧0の宇宙空間では急激に膨張するはずですから、息を急いで吐き出した方が良いようです。なお、この話題については「血液が一瞬で沸騰する」という話もよく聞きますが、血液は血管の中では心臓によって圧力をかけられていますから、沸騰することもありません。また、「宇宙に放り出されたら凍死する」という話も聞きますが、空気がないので体温を外に逃がすことができませんから、体温はむしろどんどん上がります。いずれにしても、呼吸できないわけですから、そうした状態で長い時間生きているのは無理でしょう。

Q40 「地球から物体を第一宇宙速度で投げると地上に落ちずに地球の周りをぐるぐる回り続けるのはどうしてですか?」(男性/10代)

A40:地上に落ちずに地球の周りをぐるぐる回り続ける速度を「第一宇宙速度」と呼んでいます。大砲の弾を水平に発射した場合を考えればわかるでしょうが、打ち出す速度が速い程砲弾は遠くへ届くはずです。では、どんどん速くなったらどうなるかというと、地球は丸いので地球をぐるっと1周回って大砲のすぐ後ろに着弾するでしょう。もっともっと速くすれば、いつか遠心力と重力が釣り合って砲弾は楕円軌道を描いて飛ぶようになり地上へは落下しません。そうなる速度を第一宇宙速度といいます。地球で海抜ゼロ・メートルの場合だと、第一宇宙速度は秒速7.9km程です(時速だと28,400km)。おわかりだと思いますが、地球より重力の小さな星では砲弾はもっと遅くても地上には落下しませんし、地球より重力の大きな星ではもっと速く打ち出さなければ砲弾は地上へ落下してしまいます。

Q41 「今でもロケットの打ち上げに失敗するのに、50年も前にアポロが月に行ったなんて信じろという方が無理です」(男性/20代)

A41 :失敗する(事故が起きる)ということと実現不可能ということとは別の話ではありませんか? 例えば、1986年にスペースシャトルのチャレンジャー号が打ち上げ直後に爆発を起こして乗員7名が犠牲になった痛ましい事故がありましたが、だからといって、「スペースシャトルで宇宙に行くのは無理」というわけではありません。米国にせよ、旧ソ連(現在のロシア)にせよ、いきなり人間を乗せたロケットを打ち上げたわけではなく、最初は無人で、次には動物を載せて、と段階を踏んで技術を確立していったのです。宇宙ロケットに使われている技術は実績と信頼性が重視されるので最先端のものではなくむしろ「枯れた」ものです。確かにコンピュータの処理能力は飛躍的に向上してアポロの頃と比べると非常に少ない人員と低いコストで打ち上げができるようになってはいますが、ロケットそのものに使われている技術はアポロの時代も今も基本的には何も変わっていません。

Q42 「虫歯があると宇宙飛行士になれないそうですが、どうしてですか?」(男性/小学生)

A42 :虫歯で歯の中に空洞があったりすると気圧の変化によって耐えられない程痛む事があります。地球上であれば、すぐに歯医者さんに行けば大丈夫ですが、宇宙ステーションだと無理です。歯の痛みを我慢しながら仕事をすることは出来ないので、虫歯があるとミッションから外されます。虫歯になってもきちんと治療をしてあれば大丈夫です。

Q43 「私が子供の頃に読んだ本に載っていた想像図だと、宇宙ステーションはドーナツのようなコマのような形をしていました。ドーナツ部分がぐるぐる回って遠心力で人工重力を発生させるという風な説明があった気がしますが、今の宇宙ステーションはなぜドーナツ型にしないんですか?」(男性/50代)

A43 :こんな感じの宇宙ステーションですね


~図1(ロケット) 昔の宇宙ステーションの想像図~

宇宙コロニーのようにそこに永住するのなら人工重力も必要でしょうが、短期の滞在だと必ずしも人工重力は必要ありません。また、宇宙ステーションでの様々な実験は無重力(微小重力)状態で行うものなので、人工重力を発生させない方が都合がよいのです。技術的な問題をいえば、仮にドーナツ型の宇宙ステーションを作ったとして、それなりの大きさの人工重力を発生させるにはそれなりの速度で回転させなければなりません。宇宙ステーションが小さいと、例えば、足下と頭の辺りでは働く遠心力の大きさが違ってきますし、高速回転させるとなると、材質や強度も問題となります。下手をしたら、バラバラに分解してしまうかも知れません。そういった事情があるので、現状では宇宙ステーションで人工重力を発生させようとしておらず、形もドーナツ型ではないのです。

Q44 「宇宙ステーションって壁1枚外は宇宙なんですよね?隕石などが衝突したら大変でしょうし万一に備えて迎撃ミサイルみたいなのを用意してあるんでしょうか?」(男性/20代)

A44 :隕石やスペースデブリ(宇宙のゴミ)が宇宙ステーションに衝突する確率は確かにゼロではないでしょう。しかし、万が一に備えてあれもこれも準備していたら予算がいくらあっても足りません。これまでのところ、隕石などが宇宙ステーションに衝突したことはないので、確率は低いとみなされているようです。また、迎撃ミサイルのようなもので隕石などを破壊したら、砕けた破片が宇宙ステーションに飛んできます。地球上であれば、何かを爆破してもその破片が飛び散る範囲は限られていますが、宇宙空間だと四方八方にどこまでも飛んでいきます。下手に破壊するとかえって危険なので、軌道を変えて逃げたり、乗員が宇宙ステーションから脱出するなど他の方法で対応します。実際のところ、隕石よりもスペースデブリの方が数も多く危険です。スペースデブリは相対速度が秒速10km以上と高速で、1g程度の小さな破片でも衝突すれば致命的なダメージを与えかねません。2007年に中国が中距離弾道ミサイルをベースとして開発した固体燃料ロケット「開拓者一号」で自国の老朽化した気象衛星(風雲一号C型)を破壊する実験を行い数千個を超える大量のスペースデブリを発生させて、「有人宇宙開発に深刻な影響を与えるものだ」として国際的な批判を浴びました。発生したデブリの9割以上は現在でも軌道上に残ったままであり、2011年にはその一部が国際宇宙ステーションの近くを通るということで乗員に一時避難を検討するよう指示が出されました(その後、解除)。

Q45 「冥王星に到着した探査機がデータを送ってくるのに何か月も掛かるというのをニュースで見ましたが、データって光の速さで送るんでしょう?冥王星ってそんなに遠いんですか?」(女性/20代)

A45 :地球から冥王星までは光の速さで片道4時間半ほどです。探査機ニューホライズンズからのデータは光の速さで届きますが、一度に送ってくるデータの量が少ないのです。転送レートは800bps(ビーピーエス)ですが、bはビットという情報量の単位で、pはパーで「~当り」という意味で、sはセカンド(秒)です。つまり、1秒当りに800ビットという転送レートなのです。といってもピンとこないでしょうが、1,000bpsで1Kbps(kはキロ)、1,000kbpsで1Mbps(Mはメガ)、1,000Mbpsで1Gbps(Gはギガ)となります。今インターネットの光回線だと1Gbps位を謳っていますから、それと比べると一度に送れるデータの量が圧倒的に少ないことがお判りいただけるでしょう。ニューホライズンズには8GB(ギガバイト)のフラッシュメモリーを搭載しているので、観測したデータはまずそこに記録されて順番に地球に送られてきます。転送レートが非常に低いので、全部送るのに数か月かかるというわけです。「なぜもっと転送レートを高くしなかったのか?」という疑問は当然あるでしょうが、ロケットにせよ、この手の探査機にせよ、使われている技術は実績のあるいわば枯れた技術です。アポロ打ち上げの頃と大差ありません。性能より信頼性が重視されます。どうしてかというと、最先端の技術を採用しても何かトラブルが発生して全く観測できないぐらいなら、転送レートが低くても確実に動作する方が好ましいという判断が働いているからです(それでも故障する場合はありますが)。トラブルが起きたとき、「ちょっと冥王星までいって修理してくる」というわけにはいきませんからね。また、距離が離れるほどノイズの問題が無視できなくなります。転送レートを抑えれば、ノイズは軽減されます。そういったもろもろのことを考えて、800bpsという転送レートが決められたのです。

Q46 「テラフォーミングって何ですか? 火星をテラフォーミングするとかどうとかいう話ですけど?」(男性/20代)

A46 :テラ(terra)はラテン語で「大地(地球)」という意味で、フォーミング(forming)はフォーム(form:形態)から派生した言葉で「編成する」とか「作り変える」とかいった意味です。日本語では「惑星地球化」などと訳されますが、惑星や衛星を地球の人類が住める環境に改造してしまうことをいいます。元々は、カール・セーガンが1960年代に金星について述べたものですが、今日ではテラフォーミングといえば火星が取り上げられることが多いようです。火星は1日が地球時間で24時間40分程であり、地軸が約25度傾いていて四季もあるので、地球から移住した場合に違和感が少ないだろうと言われています。もちろん火星の大気はほとんどが二酸化炭素であり、また地球の大気と比べて非常に希薄なので、そのままでは地球人類は呼吸できません。また極寒という程では無いにせよ、気温も随分低くなっています。そこで火星の極冠のドライアイスを溶かして大気を増やし、温室効果によって平均気温を引き上げるなどの方法で地球人類にとって住みやすくしようという話です。もっとも、火星の重力が地球よりずっと小さいのはテラフォーミングではどうしようもないので、地球の重力の下で進化してきた地球人類がそうした環境に適応できるかどうかはよくわかりません。なお、金星ではなく火星が注目されているのは金星の高温高圧の環境を地球に近づけるのは火星の地球化よりもずっと大変そうだからです。

Q47 「この間(2015年7月)、NASAの探査機が冥王星に行きましたけど、別にあんなことしなくても、地上の望遠鏡で倍率を1万倍とかものすごく上げれば見えるんじゃないですか?」(男性/20代)

A47 :無理です。計算上は倍率1万倍の望遠鏡は考えられます。望遠鏡の倍率は「対物レンズの焦点距離/接眼レンズの焦点距離」で求められるので、例えば対物レンズの焦点距離100m(100,000mm)の望遠鏡に焦点距離10mmの接眼レンズを付ければ1万倍になる計算です。しかし実際にそんな望遠鏡を作れるのか、また作ったとしてまともに見えるのかというのは全く別の問題です。1万倍もの倍率では視野は極端に狭く、像も暗くぼやけてしまって何も見えないでしょう。参考までに申し上げれば、米シカゴ大学のヤーキス天文台にある屈折式望遠鏡は口径102cm、対物レンズの焦点距離19.4mで世界最大と言われますが、用意されている接眼レンズの最高倍率は2,400倍です(実際には700倍で運用)。遠い地球から地球の大気越しに超望遠で撮影するより、すぐ近くから撮影した方が冥王星の細かいところまで鮮明に写るのは当然です。

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Q1 「週末の天気はどうなりますか?」(男性/年齢不詳)

A1:申し訳ありません。気象台にお尋ねください。39時間以内の雲の動きでしたら、GPV気象予報がおすすめです。

Q2 「空はどうして青いのですか? 夕焼けが赤いのはなぜ? 宇宙空間が真っ暗な理由は?」(女性/20代)

A2:散乱によるものです。太陽からの光が空気中の窒素分子や酸素分子などに当り、散乱されやすい青い光が見えるのです(これをレイリー散乱といいます)。太陽の光には長さの異なるさまざまな波長の光が含まれていますが、赤い光に比べて波長が半分の青い光は16倍強く散乱されやすいのです。日中は太陽が頭上にあるので、最も光の散乱が強くなり空が青く見えます。一方、夕方の空が赤っぽく見えるのは太陽が横方向にあって太陽の光が地球の大気中を長い距離進むことになるので散乱されにくい赤い光が届くからです。以上を踏まえると、空気中の分子が存在しない真空の宇宙空間では散乱が起きないので、太陽の光に照らされても真っ暗に見えることがわかります。例えば、空気のない月面では真っ暗な空に太陽が輝く光景が見えるわけです。

Q3 「先日、虹を見たら上下に二重になっていました。あとから写真で見ると、下の虹と上の虹とでは色の並び方が逆になっているのに気付きました。あれはどうしてなのですか?」(女性/40代)

A3:光が水滴の中で2回屈折しているからです。プリズムを通した太陽光線はさまざまな色にわかれて見えますが、青い色はよく曲がり赤い色はあまり曲がりません。虹は雨上がりの空や滝や噴水など水しぶきが上がっているところに見えますが、空中に漂っている水滴がプリズムの役目を果たして太陽の光がいろいろな色にわかれて見えるのです。二重の虹は、下の虹(主虹といいます)はいつも見ている色の順番(外側から内側に向かって赤から青、「赤橙黄緑青藍紫」の順)ですが、上の虹(副虹といいます)の色の順番は逆(外側から内側に向かって青から赤)です。

Q4 「地震の前には地震雲が現れるのですか?」(女性/30代)

A4:地震を専門とする研究者の間では地震雲と称する雲の存在には否定的な見解が一般的なようです(例えば、公益社団法人日本地震学会のWebサイトのここなど参照)。なぜ、否定的かというと、2つ理由があります。第一に地震雲というのはどういう雲のことをいうのかという定義がきちんとなされていません。見慣れない形や色の雲があったとしても、それはたまたま自分が見たことがないだけで実はごく普通の雲かも知れません。実際、ネット上に出回っている地震雲の写真とされるものを見ると、ごく普通の巻雲や飛行機雲だったりします。ごく普通の雲があって、それを目撃した数日後や数か月後にどこかで地震が起きたとしても、両者の間に何かの関係があるといえるのでしょうか? それはただの偶然というものでしょう。第二に、仮に普通の雲とは異なる地震雲なるものが明確に定義されたとして、地震雲がどのようにして作られるかというメカニズムについてのしっかりした説明がありません。地震が起きる前のこれこれが原因で地震雲が作られるという仕組みは明らかになっていないのです。ある仮説が科学的に正しいとされるのは、同じ条件だったらその現象が再現可能な場合です。例えば、「これこれの手順で○×細胞が作れる」という仮説は、他の人たちがその手順に従って同じようにやってみて本当に○×細胞が作れたときに「なるほど科学的に正しい」と認められるのです。仮説を唱えた人がいくら「○×細胞はあります。わたしは何百回も作った」と力説してみても第三者によって再現されなければ誤った説とされるのです。地震雲の話を当てはめてみると、「○×細胞」に当るのは地震雲ですが、どういう雲が地震雲なのかはっきりしていません。これでは再現云々以前にお話になりません。何だかはっきりしないものが作れた作れなかったと論ずるのは不毛というものです。将来研究が進めばどうなるかわかりませんが、現状ではそういった状態ですから、地震雲に対して専門家が否定的な態度をとるのは当然だと思われます。

Q5 「宇宙の写真だと、太陽があるのに真っ暗です。どうしてですか?」(男性/小学生)

A5:宇宙は真空で太陽の光を反射するものがないからです。地球上で晴れた日の昼間の空が青く見えるのは地球の大気中の窒素分子や酸素分子に太陽光線が当たって散乱されているからです。

Q6 「天文台の人は毎日星を眺めているんですか?羨ましいですね」(女性/50代)

A6:さかもと八竜天文台のような公開天文台の職員はお客様に月や惑星や星などをご案内するのが仕事ですので、自分の愉しみのために天文台の設備を使って星を眺めることはありません。仕事が終わって自宅に戻ってからや休みの日に自分で購入した望遠鏡や双眼鏡を使って観察します。仕事と趣味とをきちんと区別するというのは社会人として当然ですし、他のどんな仕事でも同じだと思います。例えば、酒屋さんに「お酒が好きなだけ飲めていいですね」というのはあり得ない話でしょう。さかもと八竜天文台の場合、職員はそれこそ何でもやります(やらざるを得ません)。天文台の周辺の草刈りや落ち葉の清掃、イノシシが掘り崩した土砂の除去、駐車場にあるトイレの掃除などもすべて職員の仕事です。

Q7 「天文学者って、どんな仕事をしているのですか? やっぱり毎日望遠鏡を覗いているのですか?」(女性/10代)

A7:国立天文台広報普及室室長の縣秀彦(あがた・ひでひこ)さんが監修した『天文学はこんなに楽しい』(誠文堂新光社、2005)のpp.214-215によると、「天文学者の日常は、というと、実は星を見ていない時間の方が多い。1年に数回の観測を、たいていは屋内の観測室からコンピューターの画面を通して行い、それ以外のほとんど全ての時間をコンピューターに向かってデータの解析や数値計算、論文の執筆などに費やす生活が一般的と言えるだろう」とのことです。一般に想像されるイメージと実際とはどんな職業でも大きく食い違うものですね。

Q8 「いま中学生です。将来、星にかかわる仕事がしたいのですが、どういう勉強をしたらいいでしょうか?」(女性/10代)

A8:具体的にどんな仕事・職業をイメージしておられるのでしょうか? 天文学者(研究者)になろうと思えば、理学系の大学に進学してさらに大学院で修士や博士の学位を取得するというのが一般的でしょう。死ぬほど勉強してください。もっとも、博士号の取得者でも天文台に就職して研究を続けられるとは限りません。非常に狭き門だと覚悟しておきましょう。とはいえ、星にかかわる仕事といってもいろいろあります。天文学者(研究者)になって国立天文台などで研究する以外にも、一般のお客様を対象とした公開天文台(さかもと八竜天文台もこれに含まれます)、博物館、科学館、プラネタリウムなどでも星にかかわる仕事はできます。ただ、注意してほしいのは「星にかかわる仕事=自分で星を見ること」ではないということです。例えば、公開天文台で事務の仕事をするなら望遠鏡に触れる機会が全くなくても当然ですが、仮に解説員として望遠鏡を操作して解説していてもお客様に星を見ていただくのが仕事です。視野の中心に目標の天体を導入するために望遠鏡を覗くことはあっても、自分の愉しみのために天文台の望遠鏡を使ってソンブレロ銀河や子持ち銀河などを見ることはありません。それは公私混同というものですし、そんな浮ついた姿勢では一緒に働いている他の人たちに迷惑がかかります。もし、あなたが自分で星を見たいのであれば、職業としてではなく趣味で望遠鏡なりカメラなりを買って天体観察をされる方がよいかも知れません。以上、厳しいことを申し上げましたが、がんばって勉強してください。

Q9 「天文台で働くには学芸員の資格を取らないとダメですか?」(女性/10代)

A9:ダメということはありません。天文台といっても種類がいろいろですが、国立天文台のような研究機関だと学芸員の資格よりむしろ博士号の方が必要でしょう。理学部のある大学に進学して大学院で物理学の博士号を取るというのが一般的だと思います。大学で4年間、大学院で5年間勉強しなくてはなりませんが、とりあえず研究者の仲間入りをしようとするなら博士号を持っていないとお話になりません。お客様に星空をご案内する公開天文台の場合だと、学芸員の資格(博物館法に規定された、文部科学省が所管する国家資格)を持っていれば就職試験では有利かも知れませんが、学芸員の資格さえ持っていれば必ず天文台で働けるわけではありません。実際、学芸員資格を持たずに天文台で働いている方も大勢います。学芸員に限らず資格というものは「持っていれば持っていないよりは有利(かも?)」という程度であり、採用不採用を決定する際にそれほど重視されるわけではありません(医師や自動車整備士のように、「資格を持っていなければその業務に従事できない」という性格の資格もありますが)。むしろ、「明るく元気」だとか「礼儀正しい」だとか「意欲がある」だとかいったことの方が大切です(多分、どんな職業の採用試験でもそうだと思いますが)。とはいえ、資格は持っておいて邪魔になることはありません。意欲の具体的な形として学芸員の資格を取っておくのも一つの選択です。なお、社会人になってから学芸員の資格を取ろうとすると費用の面でも時間の面でもなかなか大変です(スクーリングや実習でまとまった休みを取らないといけないので、資格取得に理解のある職場や上司に恵まれないと難しい)ので、学生時代に取れるのであれば取っておいた方がよいでしょう。

Q10 「大昔ならともかく、いまの世の中で天文学って何かの役に立つんですか?」(男性/60代)

A10:「役に立つ」というのが具体的にどういうイメージなのかわかりませんが、例えば、天文学者の研究に対してノーベル賞が過去何度も送られていることはご存じの通りです。ダイナマイトの発明で巨万の富をなしたアルフレッド・ノーベルは新聞の誤報で自分の死亡記事(「死の商人、死す」という見出し)を目にしたことをきっかけとして死後に自分が人々にどう記憶されるか気にするようになり、自分の遺産を原資として賞を創設するよう遺言を残しました。ノーベルは1896年に亡くなりましたが、その遺言の中で「わたしのすべての換金可能な財産は、次の方法で処理されなくてはならない。わたしの遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大の貢献をした人々に分配されるものとする」と記しています。ノーベルの遺言に基づけば、天文学者がノーベル賞を受賞したということは、「人類のために最大の貢献をした」と評価されたことになります。1936年のヴィクトール・フランツ・ヘス(宇宙線の発見)、1974年のアントニー・ヒューイッシュ(中性子星の発見)、1978年のアーノ・ペンジアスとロバート・ウッドロウ・ウィルソン(宇宙空間の宇宙マイクロ波背景放射の発見)、1983年のスブラマニアン・チャンドラセカール(天体の構造と進化の物理的過程に関する理論研究)、1983年のウィリアム・ファウラー(宇宙空間における元素の形成にとって重要な核反応の研究)、1993年のラッセル・ハルスとジョゼフ・テイラー(重力の研究に新しい可能性をもたらした新種パルサーの発見)、2002年のレイモンド・デイビスと小柴昌俊(宇宙ニュートリノ検出における先駆的貢献)、2002年のリカルド・ジャコーニ(宇宙におけるX線源の発見)、2006年のジョン・C・マザーとジョージ・スムート(宇宙マイクロ波背景放射の黒体性と異方性の発見)、2011年のソール・パールマッターとブライアン・P・シュミットとアダム・リース(遠方の超新星の観測による宇宙の加速的膨張の発見)、2013年のピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレール(素粒子の質量の起源に関する機構の理論的発見)など天文学の研究者が多数受賞しています。

Q11 「いまはスマホのグー何とかっていうアプリとかで空にかざせば解説してくれるのがあるみたいなので、そういうのがあれば天文台で解説する人はいらなくなって、望遠鏡だけ動かして『はい、これです。解説はスマホで聞いてください』ってなりますね」(女性/50代)

A11:おっしゃっているスマートフォンのアプリというのは、グーグルのスカイマップ(Google SkyMap)だと思いますが、空にかざせば見えている星や星座などを教えてくれるというもので、今のところ音声で解説する機能はないようです。将来的に、利用者の年齢(大人か子どもかなど)や知識(天文に詳しいか全くの初心者かなど)などの違いに応じて解説の内容や解説の仕方を柔軟に変えて音声で案内できるようになれば、天文台に解説者はいらなくなるかも知れません。もっとも、その頃にはいまは高価で設定が面倒な割には性能の低い自動導入の望遠鏡ももっと安く便利になって、天文台で望遠鏡を操作する人もいらなくなるでしょう。そうなれば、お客様に楽しんでいただくための公開天文台は不要となるかも知れません。暗い場所さえあれば、スマートフォンと自動導入望遠鏡で何の知識もなくても星空を楽しめるわけですからね。もし、その時代でも公開天文台が生き残るとしたら、個人では持つことが難しい大口径の(当然非常に高価な)望遠鏡を備えているというアドバンテージぐらいでしょうか。

Q12 「宇宙人はいますか? 宇宙人はひそかに地球を訪問していますか?」(男性/20代)

A12:地球人も宇宙人の一種ですから、その意味では宇宙人はいます。地球人以外の宇宙人(異星人)がいるという確実な証拠はいまのところありません。とはいえ、宇宙には地球人以外に知的生命体は絶対に存在しないという証拠もないので、宇宙人がいてもおかしくはないでしょう。もっとも、宇宙は広大なので仮に光速に近いスピードを出せる宇宙船に乗っても、他の恒星系に行くのは時間がかかりすぎて難しいのではないでしょうか?

Q13 「UFOはいますか?」(男性/小学生)

A13:UFOとは『未確認飛行物体』ということです。言い換えると、『正体がよく分からない空を飛んでいるもの』をUFOと呼んでいるわけです。つまり、何だかよくわからないものが飛んでいたら、それは言葉の正しい意味でUFOなわけです。もし、その正体がエイリアン・クラフト(異星人の乗り物)だとわかってしまえば(確認されれば)、それはもうUFO(「未確認」飛行物体)ではありません。正体不明の飛行物体としてのUFOは世界中で多数目撃されていますが、ほとんどは木星や金星、飛行機、人工衛星、観測用気球、サーチライトなどの見間違えです。

Q14 「オーパーツとかあるので、地球の文明は一度滅んだのだと思います」(女性/50代)

A14:申し訳ありませんが、専門外ですのでわかりかねます。

Q15 「UFOはタイムマシンで、UFOには未来人が乗っていると思います」(女性/50代)

A15:Q2への回答でも述べましたが、UFOというのは「正体不明の飛行物体」のことです。「未来人が作ったタイムマシン」だと正体がわかってしまえば、それはUFOの定義から外れます。

Q16「オオカミの髭剃りって何ですか? 何か科学の話らしいんですけど?」(男性/10代)

A16:「オオカミの髭剃り」というのは存じ上げませんが、「オッカムの剃刀(かみそり)」のことでしょうか? 14世紀の神学者・哲学者のオッカムのウィリアムが提唱したもので「同じ現象を説明するのならより簡潔な方を採用するべきだ」という考え方です。余分(余計)なものを剃り落すところから剃刀と呼ばれます。

Q17 「周りが明るいと星がよく見えないそうですが、どうしてそうなるのですか?」(男性/10代)

A17:星の光が周りの光より弱いからです。簡単にいえば、より強い光にかき消されてしまうからだといえます。騒音がひどい場所では隣の人の話す声が聞き取りにくいのと同じです。真っ暗なところで携帯電話やスマートフォンの画面を開くととても明るく感じますが、昼間の屋外で同じことをしても明るいとは思わないでしょう。もう少し説明すれば、ものが見えるのは物体からの光が目に届くからです(物体そのものが光っている場合も何かの光を反射している場合もあります)。明るい場所では目に届く光が多すぎるので、目に入ってくる光を減らすように瞳孔括約筋という筋肉が働いて瞳孔を収縮させています。一方、星が見えるような暗い場所では光が少ないので瞳孔を散大させています。明るい場所では瞳孔は収縮していますから、その状態で星がある場所を見ても星のような弱い光はほとんどわかりません。

Q18 「ネメシスという死の星があって地球に近づくと生物が全滅するそうです。本当ですか?」(男性/10代)

A18:ネメシスというのは太陽の伴星とされる仮想の天体です。まだ発見されていませんし、ひょっとしたら実在しないかも知れません。地球の過去の大量絶滅に2億6000万年ほどの周期性が見られるとして、その周期性を説明するために考えられたのがネメシスです。2億6000万年の周期でネメシスが太陽系に近づくと、オールトの雲と呼ばれる彗星の巣を刺激して地球に多数の隕石が落下するようになり、その結果、地球上の生物が絶滅するという話です。ネメシスがいわれているように褐色矮星で現在うみへび座の方角にあるとすれば、そう遠くない将来見つかるかも知れません。

Q19 「ギリシア神話について質問です。豪傑のヘラクレスは英雄ペルセウスの子孫ですよね?で、ペルセウスは大地を支えていた巨人アトラスに頼まれて、退治したメドゥーサの首を見せてアトラスを石に変えたということですが、ヘラクレスが黄金のリンゴを探していたときにアトラスに会って代わりにリンゴを取ってきてもらう話もあります。ペルセウスのときに石に変わったはずなのに、どうしてヘラクレスの時代に元に戻っているのですか!?」(男性/10代)

A19:よくご存じですね。確かにおっしゃる通りです。ペルセウスとアトラスの話はヘラクレスとアトラスの話と矛盾しています。ペルセウスの時代に石になったはずのアトラスが子孫のヘラクレスの時代には元に戻っているというのはおかしな話です。ただ、神話は誰か1人が作ったわけではなく、さまざまな人たちが長い年月の間に語り継いできたものですから、内容が全く正反対になったり前後矛盾したりするようなものもあります。そういった食い違いも含めて神話なのだと楽しまれてはいかがでしょうか?

Q20 「熊本地震のときに未確認飛行物体UFOを目撃しましたか?また、目撃したという報告はありましたか?」

A20:2016年4月14日の前震の際にも16日の本震の際にも、未確認飛行物体を目撃してはおりませんし、そういった報告もありませんでした。なお、日本火球ネットワークの掲示板への書き込みを確認しても、熊本地震の際に未確認飛行物体が目撃されたという投稿はありませんでした。

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